裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

木曜日

ルソー、信じらんなーい

『民約論』読んだけど全然わかんなーい。朝、7時半起床。朝食は能登・こうでんさんから到来の五郎島金時。さすがに味が格段の差で濃密、できるだけ小さめのものを選んで蒸かしたが、それでも一本は食べきれなかった。能登からの芋を長野旅行で求めた焼きミソで食う、これまた各地に旅をした者ならではの出会いの味。

 服薬、洗顔、歯磨如例。トイレは相変わらず午前中に集中して五、六回は行く。今日の便通は昨日がチャイナハウスだったせいか、常にも増して快通。トイレ読書はまだ『大地』、王虎の息子の話になってあまり面白くなくなり、読み進むスピードが落ちて来たのだが、また面白くなってきた。スピードが落ちたのはと学会本の原稿が忙しくなり、別の本をいろいろ読まなくてはならなくなったせいもある。

 K子から渡された年賀状三○○枚ほどにコメント書いたり、何度思い出しても“この人物には覚えがないなあ”と首をひねったり。年賀状住所録ソフトが人からもらったもので、その人が自分用に打ち込んだ名前と住所がかなり最初から入っており、混じっているのである。それがもう三年くらい前で、それからだいぶチェックして消去したはずなのだが、まだ時折、どうしても自分と関係あるとは思えない名前が入って いる。

 1時半、神保町へ出て、カスミ書房さんに行き、店主Yさんに挨拶。今年も冬コミ出ますんでよろしくと挨拶、印刷できた『トリビアの歪』『ぶらりオタク旅』を謹呈す。他に『人食いバラ』はじめカラサワ・コレクションも。いろいろコミケばなし、業界ばなし。知り合いが書いたという集英社のスーパーダッシュ文庫『よくわかる現代魔法』(桜坂洋)いただく。いろいろ営業にYさん自身も書店回ったり動いたらしい。ライトノベルの世界のシビアさを聞いたり、またこっちで知っている情報を伝え たり。

 一点雑用すませ、メシも食えずにすぐトンボ帰り。車中で『よくわかる現代魔法』に目を通す。ライトノベルは知識がほとんどないのできちんとした評価や感想が述べられないのだが、ドジっ子で幼児体型の女子高生に美形だけど漫才コンビみたいな会話をかわす魔法使い姉弟という、読者のニーズを最優先させて現実感を捨てきった人物設定、魔法だの異世界だのという単語が日常にまったく摩擦なく混じる世界描写、アニメの声優がしゃべっているような、日本の会話の伝統からまったく外れたところで“型”の成立している人工的科白。それでいて文章の表現スキルが、厳しい商業的現実の中で磨かれているせいで極端に高い(まったく、純文学畑の連中は少し見習っ た方がいい)。少し頭がクラクラしてくる。

 3時、渋谷時間割に戻ってミリオン出版Yさん打ち合わせ。私の編集さんとの打ち合わせというのは、大抵雑談に終始して、時折、思い出したように“ところで〆切の件ですが……”と間歇的に仕事の話が出るというのが定番なのだが、このYさんは、人当たりこそ中堅の噺家みたいにいいのに、きちんと“打ち合わせ”をする。第一に毎回、スケジュール表を持ってきて、それを前に置いて話を進める。今回もメモに書き出してきた打ち合わせ条項を、“えー、ではまず、こちらの本のツカ見本ですが”“あー、それからこっちがタイトル表記の案で、一応三つ作ってきましたが”と言う風に提示して、こっちがそれに意見を言ったり、これがいいですねと決定したりする度に、“ハイ了解しました、デハこれはOK、ト”と赤線を引いて消していく。それでいて、ビジネスライクな感じがない。話はサクサク進み、この本の次の本用の新連載(『実話ナックルズ』)の文字数や図版の数まで決まってしまう。ちょっと感心する。もっとも、私はゾロッペエだから、こういう打ち合わせ内容をメモすることもなく、ただ“凄いなあ”と感心するだけ。見事な軽業を、鼻をたらして見物している子 供みたいなありさまである。

 昼飯を食い損ねる。モスのアップルパイを齧って発酵茶(こないだ紀ノ国屋でも、ちゃんと復活して二段で並べられていた。何かうれしい。長崎飲料発酵茶、別に義理もないけどリスペクトである)飲みつつ、と学会本の原稿書く。勘定してみたら、年内にあと100枚(!)書かねばならぬ仕儀になっている。ワニマガジンのトリビア ネタとかも出さねばならんのに。

 あとは夜まで原稿だだだだと。だだだだとはやったのだが完成せず。8時半、大久保へタクシー飛ばす。トラックが、用の終わったクリスマスツリーを積んで走っていく。明日までに正月用の松飾りに取り替えるのだろう。グリーン食堂にて、井上デザイン事務所のみなさんと忘年会。今年も井上くんには大いにお世話になった。ミリオンのYくんは私との打ち合わせ終わった足でそのまま井上デザインに行って、私の決定とかを伝えたらしい。井上くんも、彼のメモ魔のところなど、少し感心していた。

 井上くんからクリスマスプレゼントをいただく。ドイツ製のオモチャで、バレリーナの小さな人形だが、磁石を近づけるとクルクルと回転して踊る。同極同士の反発を利用した単純な仕掛けだが大感心。日本の、ICだのなんだのを使った最先端のオモチャしか与えられていない子供たちが可哀想になる。オモチャはこれでなきゃ、子供の好奇心とか科学への興味をを刺激しない(あまりに高度な仕掛けのオモチャは、クラークの言葉ではないが、子供にとっては理解不能で魔法にしか見えず、その仕組を 知りたいという欲求を起こさせない)と思う。

 牛タン、カルビという、昨今のBSE騒動を無視したようなものから食べはじめ、豚骨付きカルビの美味さに堪能。さらに海鮮チヂミ、捕身ジョンゴル、生豆腐鍋。女性陣もこわごわ犬を食べていた。BSE騒ぎで、犬肉などの魅力が日本人に新に確認されないものだろうか。飲み物はずっと真露のキュウリ割り。それとマッコリを少しわけてもらって飲んだ。忘年会の客で店は大繁盛。『オズの魔法使い』のマーガレット・ハミルトンそっくりの若い女性がいた。美人なんである、これが。

 10時半過ぎ、お開き。あっさりしているが、今年はウチは仕事納めというものがない修羅場。とはいえ今年もあと一週間を切った。恒例の年末年始、“読んでます”メール募集を始める。住所を書いてきてくれた人には、中から一名様に、松明けにプレゼントを贈らせていただきます。“CXP02120@nifty.ne.jp”までよろしく!

Copyright 2006 Shunichi Karasawa