7日
日曜日
うなぎでごはん〜夜の飯を
夜食は残っていたうなぎで鰻丼を作って少し(日記風)。渋谷のうなぎ屋の前を歩いていてふと思いついた駄洒落、というより地口。……ところで平井堅のアルバムでこの曲を聴いたことで、実に40年ぶりにこの歌に“手をつなごう僕と/追いかけよう夢を/二人なら苦しくなんかないさ”という部分があることを知った。それまで、ずっと一番しか聞いていなかったのですね。ちなみに、一行知識。
「『見上げてごらん夜の星を』は定時制高校の生徒たちをテーマにした歌である」
寝床で内藤みか『あなたを買った夜』(KKベストセラーズ・ベストロマン文庫)読む。ホスト遊びをテーマにしたポルノ風短編集。イケメンホストのヌード写真(後藤さくら撮影)つき。短編というよりはスケッチという感じの掌品ばかりだが、社会の中での空虚感・自己喪失感を、ホストとの情交を通じてしか埋められない女性たちの悲しさがどの作品からも伝わってくる。ホストという職業はいまや有閑マダムのお遊び相手ではなく、現代社会における心理療法師として女性の必需品になりつつあることが読みとれる。そのうち健康保険で買えるようになるのではないか。現代の尖端を作者が掬い上げていることに感心しつつも、こういうことしてちゃダメだよ、とい う思いがやはり抜けきれない。
7時半、起床。風邪でノドの調子悪し。長野で買ったソバ粉を水に溶き、フライパンで焼いてクレープのちょっと厚いのを作り、それにやはり長野で買った焼きニンニクの味噌を塗って、生のネギのみじん切りを乗せて、くるむようにしてかじりつく。池波正太郎のエッセイで覚えた“ソバ粉のうす焼き”というやつである。今日は日曜で人と会う用事もないから、朝からネギとニンニクでもかまわない。風邪にも効く。
母から電話、札幌は雪の模様。知り合いで、“イラクで外交官が殺されたのはアメリカの陰謀で、小泉もブッシュからそれを知らされて前もってわかっていた”という陰謀論を信じ込んで主張する人がいて、困っているとのこと。陰謀論者の特徴に、片一方ではその陰謀の主を徹底して矮小化して罵倒するくせに、もう一方の面では過大にその能力をいいふらすというアンバランスさがある。フセインの居所ひとつ突き止められないアメ公に、世界をごまかしてそういう陰謀を謀れる能力があると思うのがおかしい、とは考えないらしい。第一、バレたら世界の信用を失う、そんな危険を冒してまで参戦させたいほど日本はアメリカにとり重要な国じゃないだろう。ユダヤの陰謀論がすたれないのも、その裏に“世界を支配するユダヤ人が次々に陰謀を仕掛けてくるほど、日本は世界の中で重要な国なのだ……”という裏返しの自大感があるか らである。
体休めを兼ねて、北海道新聞の批評用本を読みすすめる。昼は冷凍さぬきうどんを温めて。温める湯の中で最初に豚バラ薄切り肉を茹でておき、うどんに豚脂がとろりとからみついたところを汁につけて食べる。これも朝食と同じく、池波正太郎のエッ セイで覚えた食べ方である。
3時、六本木に久しぶりに出る。青山ブックセンターを冷やかし、アオイ書店にも回る。その後、明治屋で買い物。パスタ類、めんつゆなど、年末の昼飯用。帰宅して道新原稿。3枚書いて、チェックは後回しにしてまた家を出て、新宿でサウナ&マッサージ。ご贔屓の怪力美女の先生が担当についてくれたが、今日の凝りは仕事で凝っというよりは風邪の凝りで、揉んでも揉んでもほぐれない、という感じ。それでも、 だいぶ全身の細胞に酸素が行き渡ったとうな気分になる。
8時半、新宿伊勢丹会館内三笠会館でK子と夕食。12月特別メニューのブルゴーニュコースというやつを一人前頼んで、それを夫婦で分けて食べる。フォアグラのソテー、エスカルゴのクリームソース煮、マトウダイのポワレ、牛のほほ肉のシチューなど。ほほ肉のゼラチンたっぷりの風味、なかなか。それにK子お気に入りのニンニクと唐辛子のパスタ、食後にチーズ盛り合わせ。今朝、K子(東文研の社長兼経理部長)から、今年後半の私の収入と支出のデータを見せてもらった。さすがになかなか稼いではいるのだが、支出も多い。ことに食費は、発展途上国なみのエンゲル係数の高さである。ここのお値段も、一人前を分けたにしてはちと高めか。帰宅、道新原稿をチェックしてメール。来週からはと学会本原稿に追われる日々か。