裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

3日

水曜日

アクアク商会

 ヘイエルダールがアクの強い俳優ばかりを集めて作ったグループ。朝、布団の中でウツラウツラしている状態で、フイと思い浮かんだシャレ。朝、7時20分起床。朝食は五郎島金時、フジリンゴ半分。サツマイモを朝食にするのがどう健康やダイエットに有効なのかは定かではないが、少なくとも便通は毎朝極めてよろしい。あと、体重も68キロをキープ。能登旅行で70にまで上がったが、すぐに2キロ落ちた。これで昼もダイエット食にすれば62〜3にまでは落とせるだろうが、仕事のストレス解消の方が今は大事。そう言えば結婚して5年くらいの間はずっと58キロで不動であったが、仕事が増えてきて、そのイライラを食べる方に向けたとたん、10キロ増 加してしまった。

 談之助さんからそろそろ同人誌原稿を、と催促。この最中に今日も明日も出仕事が入っているのがうらめしい。なんとか今週中には岡田さんとこの原稿と共にアゲてしまわねば。とりあえずは、と『通販生活』のコメント原稿にかかる。150〜200字のもの数本だからチャカチャカと出来ると思ったが、これが案外時間がかかる。

 昼は外に出て、カキフライ定食(キッチンハチロー)。揚げ物はいかんなあ、と思いつつも季節の味は捨てがたい。ブックファーストに寄り『ヤングマガジンアッパーズ』、『バジリスク・甲賀忍法帖』読む。単行本も1月に出ることだし立ち読みで済まそうと思っていたのだが、今回はあれだけ原作に忠実に進行していたこの作品の、初めてのオリジナルエピソード。弦之介と朧の見合ばなしで、これまで登場してきた忍者たちの“私生活”の顔が描かれている。しかも、朧が見合の席でドジってお茶を弦之介にひっかけてしまうという忍びの里ホームドラマ仕立ての話で、同人誌で中学生のファンがやるようなことを商業誌で原作者本人がやってしまったわけである。原作リスペクト人間として、本来なら腹を立てねばならぬところなのだが“うん、せっかくマンガになって、登場忍者たちのキャラクター性が拡大された(山風の原作では登場してくる忍者たちはほとんどが使う忍法の技術に特化した、人間味を引き剥がされた将棋のコマとしての描かれ方であり、そのドライさが特徴であった)のだから、こういうのもあっていいよな”とか思って、つい購入してしまった。私も甘くなったものであるが、ここらは小説とマンガ(それも昨今のマンガ)の違いとして許容すべ き範囲の逸脱だろう。

 それにしても、改めて思うが原作における朧の、忍者として全くの無能(マンガでのあの描かれ方では忍者としてでなくても無能だろうが)故に、その瞳が人外の能力者である忍者たちの術を無効化する、という設定のなんと見事なことよ。昔、アニメ『宇宙少年ソラン』で、超能力者の一族というのが出てきたが、その一族の長の少女がやはり、自分は何の超能力も持たないが、その瞳が全ての超能力者の術を無効にするという設定だった。ソランと言えば手塚治虫の設定をパクって手塚を大怒りさせたことで有名な作品だが、パクったのは手塚治虫からばかりではなかったのである。

 帰宅、コメント原稿続き、4時半になってやっと完成、メール。本来は4時半入りということになっているOTC『日本オタク大賞2003』収録のロフトプラスワンにタクシー飛ばす。5時ちょっと前に入ったが、何のことはない、いまだ岡田さんも鶴岡くんも入っておらず。氷川竜介さん、フィギュア原型師でライターの東海村源八さん、アニメ評論家の藤津亮太さん、アニメファンサイト運営者本田透さん、塩崎太平さん、あと東芝でHDD/DVDレコーダーを開発した片岡さん、篠崎さんのお二 人。今年の司会はマンガ夜話の笹峯あいさん。

 やがて岡田さん来て、まず二人の司会で『ガンダムSEED』と『HDD/DVDレコーダー』を取り上げるコーナーを撮影。その後、全員が上がって例年の如き総評開始。これも例年の如くキャプテンの作ってくる一年のオタク出来事総まくりメモが濃くて、私など毎年これを見てやっと記憶が新たになるようなもの。楽屋でも種ガンのときのコメンテーターとしてもそうだが、無口であまりトーク番組にはむかないかと思われていた氷川竜介さんが、見違えたようにしゃべり技術を向上させて、笑いもきちんととることに感心。プロパーのライターになると、どうしてもそういう場に出ることを余儀なくされるせいだと思うが、やはり場慣れは恐ろしいもの。

 こちらも負けずに、というわけではないが、鶴岡と例によって漫才。ことにアブないネタになるともう、放送できないようなことがポンポンと飛び出て、笹峯さんがやや呆れ顔で、“私、どこで口を挟んだらいいかわかりません”と言うと、岡田さんが“な、『マンガ夜話』がどんなにウスい番組かわかったでしょ?”と。例により今年も本になるので、速記者の女性が二人、ついている。片方は若い人だが片方はいかにもこの道ウン十年というベテランぽいおばさんで、こちらのオタ話をどこまで理解し ているのか、ニコリともせずペンをノートに走らせているのがちと怖い。

 眠田直さんがいないのが非常に残念(少しカートゥーン系の話題も欲しかった)であったが、とにかくリラックスでき(しすぎた感もあるが)、他のゲストさんたちの専門的な話も非常に有益で(藤津さん大推薦の『ピチピチぴっち』はぜひ見てみようと思った)、大変に楽しい収録となった。これでギャラがもう少しよければなあ。

 休息時間にロフト斎藤さん(少し痩せたか)と、来年の企画のことを話す。『えろきゅん』の川上史津子さん、『念力家族』の笹公人さんなんかを招いて、歌会をやりたいねえと言ったら乗り気になってくれていた。出版企画としてどこかに売り込みた い感じもする。

 11時で収録完了。大賞は例のアノ作品。毀誉褒貶ただならないが、まあ、そこは話題賞という意味も含め。岡田さんが“受賞理由は「ナシ」でいいのでは”とひどいことを。個人賞としては私は天本英世に。それから、審査員特別賞を、ということであったので、『バジリスク 甲賀忍法帖』に差し上げることにした。オタク大賞なん て名目の賞でうれしくはないだろうが。

 打ち上げ行きたかったがパスさせてもらい、下北沢までタクシー飛ばして、すし好でK子と。この近くに引っ越した元・ナンビョーサイトの鈴木くんも来ていた。引越祝いでK子が招いたとか。久しぶりに寒いので、ふぐのヒレ酒など飲みながらいろいろ話す。『デビルマン』の撮影に、ガヤで開田さんたちと行った話などを聞く。エンガワ、トロつまみ、甘エビ、ワカメつまみ、生ウニなど。タコを串焼きにしたおつまみに、ワサビの変わりにワサビ漬けの細かく刻んだものがついた。これは新鮮な感覚で結構。12時半、ちとあっさりだったが明日があるので帰宅。寝る。

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