裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

木曜日

教えの庭にも はやエグゾセ

 思い出の校舎に早くもミサイルが飛んできたことであるなあ。朝7時45分起床。空は晴れているが寒気甚だし。やっと12月の気分か。朝食、五郎島金時にスープ。果物を切らした。小青竜湯、黄連解毒湯、百草胃腸薬等服用。日記に書き忘れていたが、元NHKのアナウンサー、相川浩氏が先月27日に死去、70歳、肝硬変。もともと肝臓を悪くしていて、一時一線から退いていた記憶がある。語り口に見事なまでに鋭角なところのない人で、NHK時代からファンだったが、NHKを離れてからの『御家人斬九郎』のナレーションなど、ひとつ間違えると必殺シリーズみたいな殺伐とした話になりかねないストーリィを、見事に家庭人情時代劇のワクに囲って〆ていた。

 午前中は村崎百郎さんとの対談のテープ起こしチェック。メールで、ネット配信関係の仕事、やっと契約が出来そうな案配。スケジュールの関係上、そろそろ日程が決まらないと他の仕事との関係上、まずい状況だったものなので、まずはホッとした。原稿書き上げて、青山の方まで出て、朝食用の素材など買い物。ついでに銀ダラの西 京焼きなどを買い、家に帰って根深汁と一緒にこれで飯を食う。

 2時、通販生活Sさん迎えに来て、カメラマンさんの運転するバンに乗り込み、浦和のヤクルトスワローズ二軍宿舎へ向かう。一昨日に続き、1月号の特集記事の写真撮影である。車中で、昨日送った原稿のチェック。オタク情報を入れた部分はわかりにくいとカットされていた。アニメマニアのデスク氏は大喜びだったそうだが。

 高速で一部混んだところはあったがスイスイと進み、予定より大幅に早く目的地に到着する。ちょっとここで迷って、てっきりここだと思ったところが陸上選手の寮であったり。“ヤクルトも陸上チーム持っていたんだねえ、知らなかった”と、車内で話題しきり。話題と言えば、スワローズ戸田寮の寮長は梶間健一氏だそう。Sさんは梶間のファンだったそうで、彼が自分の役でカメオ出演した斎藤由貴主演のフジのドラマ『野球狂の詩』(対ヤクルト戦という設定で、土橋監督と出演)のことなどを、熱を込めて話す。私も、80年代、巨人の大ヒーロー江川に対して、渋さ充満のヤクルト左腕エースとして存在感のあった梶間の姿はおぼろに覚えている。そうか、今は 寮長なのか、と、ちと時の流れを思ったことであった。

 寮は球団の選手寮というより会社の厚生施設みたいな感じ。これもヤクルトカラーなのだろう。梶間寮長と名刺交換したが、私より背が低いのにちょっと驚いた。小柄ではあったが、現役時代は少なくとも175くらいはあったろうと思っていたのが。建物内部は、時期的に今はガランとしている。Sさんによると、この時期は田舎に帰るものあり、一軍昇格が決まるものあり、悲喜こもごもなのだそうな。トレーニングルームに通してもらい、カメラの設置待ち。コンビの販売主任のFさんに説明してもらい、いくつかのトレーニング器具を試す。筋力は全然駄目だが、バランス感覚はい いと褒められた。

 撮影はエアロバイクにまたがって、いくつかのパターンで三十分ほどで終了。モデル仕事というのは、手間はかかっても基本的に“行けば何とかなる”仕事なので、大変に気が楽である。執筆仕事はいくらワープロを前にしても、一字も打てないことがあるのだ。先ほど来た道を逆にたどって、5時半には帰宅できた。車中で読んでいた『通販生活』の夏号に、イグノーベル賞の特集記事がある。1991年から創設されたこの賞に、なんと日本人は過去8回の受賞歴を誇っているとある。本家のノーベル 賞に比べて、この輝かしさ。
http://www.cv.its.hiroshima-cu.ac.jp/~kazutaka/recollection/ignobel.html
 日本人受賞歴は↑ここに詳しいが、チェックし忘れていたのはかの『実証・人類および全脊椎動物誕生の地──日本』の岡村長之助氏が1996年に受賞されていたことである。バウリンガルやハトのフンのつかない銅像などの開発が受賞したことで、この賞をユーモアあふれる発明に与えられる賞と好意的に紹介する記事が最近よく目につく(この記事もしかり)だが、やはりトンデモ賞なんではないのか。

 日刊ゲンダイから電話でインタビュー。光文社文庫『カラサワ堂怪書目録』発刊がらみもあるが、昨今の雑学ブーム、一行知識本ブームについてコメントを少し。写真が欲しいというので、K子の方からデータを送らせる。8時半、『華暦』で食事。またまた私のサイトからたどって来店してくれたグループがいる、と女将が喜んでくれた。今度は迷わなかったようである。何にせよ結構。そのお礼か、イカのトンビと肝を串焼きにしたものをサービスしてくれた。美味し美味し。

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