裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

日曜日

キムになって反論する

 拉致問題は既に解決済みニダ! 朝鮮半島の緊張は韓日米が悪いニダ! 朝、7時45分起床。朝食、ソバ粉焼き。ソバ粉にまぜる小麦粉の割合をいろいろ変えて試しているが、なかなかこれといった会心の焼き加減にならず。今日は100パーセントソバ粉でやってみたが、やはり少し粉っぽい。小麦粉を混ぜないとダメ。長野のリン ゴと岐阜の柿。

 昨日帰宅してからメールをチェックしたら、笹さんから、短歌の朗読に使いたので“へぇボタン”が欲しいのだがどこへ行っても売り切れで、カラサワさんの持っているのを一個お借りしたい、とのことだった。“残念ながら、私も昨日買おうと思って東急ハンズに行ったら品切れでした”と返事。向こうは“カラサワさんが「へぇボタン」を持っていない”、というのは自分にとっては68へぇくらいは行く”と笑って いた。そんなものである。

 なんだかんだ雑用あって、家を出るのが11時半になる。新宿へ出て総武線に乗り替え、両国へ。楽屋で太田もも子さん(浪曲)に挨拶、ちょうど私が到着した直後に宝珍の保原さん、笹さんも来る。楽屋で少し話す。今日のために忠臣蔵短歌をいくつ か作ってきてくれた。
「町人の討て討てコールを背に受けて九十四の瞳かがやく」
「吉良邸に討ち入る時の内蔵助がセコムのカメラにVサインせり」
「寝室の上野介の枕元にサンタの長靴下がありけり」
「炭小屋に息をひそめて隠れいる上野介を家政婦は見た!」
「四十七歳(しじゅうしち)の浅野ゆう子のグラビアで                         抜けると言い切る大石あわれ」
 私も何か作らないと、と、とりあえず駄洒落で
「内蔵助の特製ナプキンいただいてこれでお軽も大石(多い日)も安心」
 というアホらしいのを作る。

 開口一番はブラ汁、それから太田もも子さんの新作浪曲『安兵衛と辰五郎』。例の畳屋の話。作は本日のプロデューサーでもある稲田商店の稲田和浩さん。浪曲というのは講談や落語とはまた違った面白さがある。デロレン祭文も含めて、一度まとめて聞いてみたいと思うのだが。続いてが宝井琴調さんの講談『赤垣源蔵徳利の別れ』。これはさすがに堂に入り、映画的なキャラクターの性格付けも見事で、聞いていて実に気持ちがいい。仲入りをはさんで次に快楽亭と私、笹さんの三人のトーク。

 赤穂義士の名前を今日の前座ブラ汁とブラッCに何人書けるかという問題を快楽亭が出した。ブラ汁が大石内蔵助、堀部安兵衛、赤垣源蔵、大石主税と、もう一人なんだかわからん名前の五人、ブラッCに至っては“大石内蔵助、吉良上野介”などと書いてきた。噺家にしてしかり。トリビアどころの沙汰ではない。もっとも、では私は何人くらいソラで言えるかとなると、大石親子、堀部親子、赤埴(赤垣)源蔵、神崎与五郎、岡野金右衛門、片岡源五衛門、原惣右衛門、潮田又之丞、小野寺十内、奥田孫太夫、不破数右衛門、大高源五、武林唯七、岡島八十右衛門、矢頭右衛門七、それに寺坂吉右衛門くらいか。義士名簿などを見せてもらったが木村岡右衛門、千馬三郎 兵衛なんて、まるで覚えていない。

 用意してきた知識としては“浅野内匠頭、吉良上野介、大石主税の三人は男色好みであった”“平幹二郎は大石内蔵助と吉良上野介の両方を演じている”“武林唯七は孟子の子孫”“有栖川宮記念公園は浅野家の屋敷跡”“討入前に大石たちが食べたのはソバではなく、鴨肉入りの卵かけ飯”などだったが、時間がなくて話せなかったものもあり。快楽亭は“忠臣蔵映画と言えば松田定次監督が名匠と呼ばれるが、彼が理想の大石役と考えていたのは千恵蔵でも右太衛門でもなく、三島雅夫”という快楽亭らしいネタを。笹さんのセコムの短歌にからめ、当時のセコムは番犬だったが、当時は将軍綱吉による生類憐れみの令のせいで、犬などを飼って万一殺すことがあればお咎めをうけたため、犬がいなかった。もし犬が襲撃を察知して吠えていれば、上野介は早め襲撃に気付いて逃げられたかも知れない”と話したが、若い人たちがポカンとしていたのに比べ、客席の年配の人たちが感心したように“なるほど!”とうなづいていたのが面白い。若い客層は最初のホモばなしで、快楽亭と“内匠頭が以前に勅使接待役を務めたときは18歳の美少年ざかりの頃で、それで可愛がられた。次に勤めたときも、また可愛がられるとばかり思っていたが、すでに彼は35歳で、同じく供応役を命ぜられた伊達左京亮の方が今度は18歳、そっちばかり贔屓にされて、焼き餅を焼いてカッと切れたのでは”なんて話をしたら喜んでいたようだ。短歌はどれもウケ、私の“大石も安心”も拍手がとれてホッとした。も少し笹さんを引き立てれば よかったが。

 その後が快楽亭の『怪獣忠臣蔵』、終わって本の販売をする。私の著書も少し並べておいたが順調にハケ、持っていった分は完売。5、6人にはサインを求められる。笹さんのも二冊売れたようだ。今度のロフトではもっと売れるだろう。聞きにきてくれたQPさんから烏骨鶏の卵をいただく。S山さんも参加して、打ち上げ。横綱通りの刺身居酒屋で。いろいろ雑談、琴調さんの話をいろいろ聞けたのがよかった。講談師とエスパー清田の話をする場というのもまた。笹さんにお車代些少ながら進呈。

 その後、S山さん稲田さんなどと、快楽亭に引き連れられ“すし芳”へ。梅田先生のことなど少し話す。今日は9時にクリクリでK子と食事だが、なんとS山さんも誘われているとのこと。快楽亭は競馬が当たって大喜び、ここのすしはご馳走になる。途中で秀次郎が来て、ここでブラ汁を家庭教師がわりに宿題をやっていた。タクシー拾って参宮橋。I矢くん、ナンビョー鈴木くん、モモさん、名古屋から一時帰京のみなみさんなどと、羊とワインでまた12時まで楽しくダベる。飲んで話してばかりい た一日だった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa