裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

火曜日

くもとすとりっぷ

 てんとう虫は、歌いながらその羽根を一枚ずつ脱ぎ捨てて……。夜中に夫婦揃ってゴホゴホゴホと咳の連発で、惨憺たる状態になる。昨日、もう少しアルコールを入れておけばよかった。なまじ帰路に覚めてしまうくらいの量だったので、麻酔の用をなさなかったらしい。3時ころ、起きだして麻黄附子細辛湯とパブロンせき止めゼリーをのむ。30分くらい、それでも止まらないでいたが、やがて効いてくると、さっきまでのが嘘のようにピタリと。不思議なのは、なにものまなかったK子の咳までが止まってしまったことだ。だいたい3時半くらいのところでバイオリズムが変化するの だろうか?

 8時起床。朝食、またソバ粉のネギ味噌クレープ。政府の自衛隊派遣決定、もう少し扇情的な報道がなされると思っていたけれど、案外各マスコミおとなしい。様子見というところか。私も、今の日本が自衛隊を派遣したってどれだけのことが出来るかは疑問だし、アメリカの言いなりは胸くそ悪い。しかし、じゃあアメリカの助力なしに、今の日本に何が出来ると思っているのか。自前の情報衛星すら打ち上げられず、北朝鮮にあざ笑われている国が日本なのだ、今はただ、じっと我慢して強いやつの言いなりにならねばいかんのである。なぜ、それが出来ない。神崎与五郎の詫び証文とか、韓信の股くぐりとかを美談として伝えてきた国民だろう、日本は。もっときちんと自虐するべし。自虐史観というのは、日本が戦争を起こしたことに対して持つものではない。“戦争に勝つことすら出来なかった”ことに対して持つものなのである。昨日、二・二六碑の前で、太平洋戦争がいかに正しい戦争だったかを訴えているおじさんがいた。冗談ではない。一国にとって正しい戦争とは、勝った戦争の謂でしかな いはずだ。

 午前中は掃除のおばさんが入る。私も仕事場を大整理したいが、仕事もつまっているので、ひたすらパソコンの前。『AERA』コメント、どういう風にでも引用できるように、四つくらいのポイントに絞って『もえたん』を批評。それから、『通販生活』コメント直し。こっちは8行のみ。さらにすぐ、『大阪古書月報』から依頼の原 稿を書く。6枚。

 書き上げてすぐ、銀座方面へ出て、雑用少し。もっとも、果たせず。仕方なく、銀座四丁目のラーメンチェーン『なかよし』で銀座四丁目ラーメンというのを食う。地下鉄車中でずっと書評用の読書。帰宅して、メモつけなど。出した原稿の返信メールがそれぞれ来ている。『AERA』と古書月報からはお礼と、内容を褒めてくれているもの。『通販生活』は、書き足し部分の一行知識が通販業界の“景表法”(裏付けのある情報以外、記載してはいけないという取り決め。別に法律ではなく、業界の自主規制)に触れる可能性があるので載せられない、とのこと。まあ、裏付けをとればいいデータだったのだが、それではそもそも行数が圧倒的に不足であるし、一行知識 にならないし。

 あと、ワニマガジンからも仕事の件で連絡。こちらの仕事もそろそろ本格的にかからねばならない。頭が本当に混乱。夕方から夜にかけてはと学会のMLで、ちょっと今別口でやっている仕事に関連する情報が流れたので、それに対する質問など。風邪のせいか、肩の筋がピンピンに張って痛いが、咳は朝以降一度も出ていない。鼻が乾 燥してパリパリ。

 10時、タクシーで中目黒、すし好。K子はポーランド語帰り。ポーランド人の先生(女性)が、旦那さん(日本人)の母親の葬式に前橋まで行き、あまりの非合理性に驚いたという話に笑う。まあ、確かに田舎の葬式などというのは七面倒臭いものではあるが、しかしそれを言えば冠婚葬や四大節というもの自体、非合理なものとして否定しなくてはならなくなる。……ところでこの店、やはりエアカーテンつけてほしい。直の風は当たらない席に座ったが、どうしても客があらたに入るたびにスウスウと寒い空気が流れる。黒ビールと熱燗で、ソイ、甘エビ、カレイ、寒ブリ焼きなど。店員の女の子で、やたら背の高い子がいる。昔、札幌のアニメファンクラブにいた美坂杏(ペンネーム)という子にそっくり。また髪の毛を染めていることもあって、キルビルのユマ・サーマンにそっくり。と、いうことは美坂杏とユマ・サーマンが似ていなくてはならないが、この二人はどう考えても似ていない。相似という現象の不思議さ。帰宅、寝床で書評用の本を読了。どうもツツいて面白くならなさそうである。他のものに差し替えるべきか?

Copyright 2006 Shunichi Karasawa