裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

31日

日曜日

備えあればグレイなし

 地球防衛をきちんとしていれば宇宙人も侵入してこられないということ。朝6時に起床。朝食は昨日と同じピタパン、ポンカン。いよいよ20世紀も今日限りだが、有終の美なんてものはクスリにしたくもない模様。それがアタリマエ。

 裏モノ会議室をのぞいたら、あと三発言分を残すのみ。こないだから、鳥というほどではないが、ちょっと場の雰囲気がわからないヒトが迷い込んでいるのでその人への注意と、その他書き込みして、九九九発言、二○世紀の書き込みを終了させる。最近の書き込み数からいって今世紀中には埋まらないか、と思っていたが、さすが世紀末だけあって裏的ニュースが続出し、ちょうど年末に満杯となった。別に意味はないのだが、こういうキリのよさは小市民的に気持ちがいい。たぶん今日一日、なにをやるにしても“これが20世紀最後の昼飯”“これが20世紀最後のションベン”“これが20世紀最後のオナニー”などと感慨にふけりながら行う人々は多いだろう。書庫のコピー機の周辺に、こないだ片付けの際に本の山を作って、用紙が取り出せなくなってしまったので、それを片付ける。やはり整頓された仕事場は広いなあ、という感じ。使うときになるとまた不便なんだろうが。年賀状でもう返ってきたのがあり、ひょっとして他のはすでに配達されてしまったか? と不安であったが、押されたハンコをよく読むと、“事前調査の結果”とある。去年もそれで大量にハガキが返った住所はチェックされているのであろう。

 飛行機は1時半発だが、心配性のK子が11時には家を出るというので急いで日記をつける。二日分であるし、忘年会のコミケのといろいろ書くことの多い二日間だったので、書くのに時間がかかり、K子がイラつく。真珠湾攻撃の際の宣戦布告のタイプ係みたいな心境になった。

 やっと書き上げてシャワーのみ浴び、仕事机近辺をざっと整理して、なんとかこれも新世紀を迎えるに恥ずかしくないくらいにする。留守録も吹き込み、これでこの家での今世紀の仕事は終了。タクシーで羽田まで。さすがに大晦日でスイスイといき、三○分で到着。早すぎたので買い物を少しし、中華で昼飯。今世紀最後の(笑)ランチは鶏のピリカラ炒めとシューマイ。

 札幌は悪天候で、果たして飛行機が到着するかどうか、という前日までの情報だったが、ナニゴトもなくフライト終了。JASのスッチーのねえちゃんと機内でちょっと衝突未遂。手持ちのカバンを足元の席の下に押し込んでおいたのだが、おねえちゃんがそれをのぞきこんで、“すみません、上の棚にあげたいんですが”と言うので、“あげるんですか?”と聞きかえそうとして、つい“あげたいんですか?”と言ってしまった。これではケンカごしである。向こうも一瞬おいて、“ええ、あげたいんです”とやや、ケンカごしで返してくる。まあ、中に電子機器(モバイルのワープロ)が入っていると聞いて、向こうが引き下がった。悪天候どころかおだやかな年末という感じのところを札幌市内へ。今年は親父の看病第一に、という意味で実家には泊まらず、札幌グランドホテルに宿をとった。ここにチェックイン。部屋に年越蕎麦が用意されていたのがさすが老舗のサービスという感じ。もっとも、当然ながらのびていたが。

 タクシーで実家へ。親父はまあ、変わらず。なをき夫婦とおふくろと、まず、一家揃って無事でめでたしとお年越し(なをき夫婦も同じホテルだが、昨日到着のため年越しソバはなかったとか)。ワイン飲んで、イクラ、マグロの手巻き寿司。なをきと来年の連載の打ち合わせ。しかし、この男も家建てるためとはいえ、かなり体をいじめている。二人とも年末でクタクタになっているはずで、それでもお互いギャグ連発させるのがサガ。兄弟とはいえ、お互いプロとして自分の利益は譲らん、という部分でシッカリしているから、ハタ目に見ればケンカしているように見えるかもしれないが、そこはアウンの呼吸もわかる仲である。無事、条件等合意に至る。ホッとし、料理もうまく、酒も回り、暮れの疲れが一気に出て、二階に床を敷き、しばらく寝る。目が覚めたら11時。新世紀を寝過ごして迎えるとかいうことになれば、それはそれで味があったと思うが、階下でソバ食い、なをきと業界のウワサばなしなど。今世紀最後の(笑)メールは、Web現代から。編集長からの飲み会のおさそい。裏モノ会議室の新しい幕の巻頭言など書いているうち、アッケなく新世紀。ホテルに帰る。なをきの部屋から電話で、佳子さんから“ウチにもソバ来てましたあ!”。風呂入って缶ビールと、サーモンチップでイッパイやって寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa