裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

日曜日

みよおっ母さん空に降り見よおっ母さん空をゆく

 うちの母ちゃん、パラシュート部隊なんだ。朝7時半起き。朝食、エピパンにハムを乗っけたもの。徳光和夫の番組で、田中康夫に対する長野県議会のイジメ的質問が特集されていた。こういうことをやればやるほど田中康夫の株が上がるということを県議たち、誰もわかってない。いかにもマスコミ戦略を知らない田舎者の感覚という感じでいただけない。女性議員が『噂の真相』を、発禁処分になるような悪書と言っていたのにも大笑い。後がコワイぞ。ただ、田中県政が結局マスコミの人気取りだけに終ることも、また火を見るよりもあきらかであろう。コメンテーターの藤本義一が“作家というのは天動説の人間で、それが政治という地動説の仕事に関わってはいけない”と言っていた。なるほどと思ったが、あとでよく考えてみると、それほどの言葉でもない。

 日記つけ、それから週刊アスキーにかかる。テーマはいいのだが、どうも筆がノラず、午前中で片付けるつもりが2時までかかる。大阪ボケ、クジラボケか。しかも、この日記を入れていたフロッピーが急に読み取れなくなる。以前、『とても変なまんが』の単行本の原稿直しをしているときにもこうなった。日記はまだ、HPの中に残してあったから最悪の事態はまぬがれたが、いったいどうしてこういうことになるのだろうか。他の記録も、こんな形で一瞬にして消失することがあるのだろうか。不安である。

 新宿に出て、万世のパイコーラーメンを食べる。それから、さてドコに行こうかと思い、急に白金台の方を歩いてみたくなり、地下鉄南北線に初めて乗って行く。丸の内線国会議事堂前駅で乗り換えだが、この乗り換えに、15分も歩かされるのに驚いた。ホームと線路の間はガラスのドアでしっかり仕切られている。小浜逸郎が『弱者とは誰か』(PHP新書)の中で、この仕組みに怒りまくり、
「不注意な人は自分が注意すればいいので、まともな神経の持ち主なら、ホームと軌道の間が危険なことくらい百も承知のはずである。(中略)いったい、これまでに実際どれだけの人がホームから落ちたために、こういう設計をしなくてはならないといいう結論に達したのだろうか。人々の自己責任に信頼をおかず、何でも“弱者”を手厚く保護しさえすればいいという、人をバカにしたおせっかいな思想である」
 と書いていたが、これはまったく話が逆だろう。営団としては、落ちる人を守ろうとしてこんなものをつけたのではなく、人が落ちて事故となり、ダイヤが狂って苦情を言われることとか、落ちた側から訴えられて裁判になるとかいうことを恐れて、ここまで厳重な設計をせざるを得なくなったのだ。落ちた人間が自己責任で全て自分で始末してくれれば営団もこんな金のかかる面倒なことをしないで済むのである。この場合、弱者は地下鉄の方だ。この仕掛けは、弱者の自己防衛なのである。

 白金台駅近辺をしばらくブラつく。空は完全な冬空で冷え冷えとしており、何か、歩くうちに心まで寒々しくなってくる。面白そうなところもない。この散歩の思い付きは失敗であった。タクシー拾って、広尾まで行き、明治屋で買い物して帰る。日曜日でえらい混雑。空気が乾燥してノドが乾いて仕方ないので、近くのスタンドでキャロットジュース飲む。

 帰って米を研ぐのとダシコブを鍋につけておくことだけして、また外出。東急ハンズで来年のカレンダーを買い、HMVでCDなど見る。ビデオを買おうと思って売り場に行くが、すでに棚の半分以上がDVDになっていた。家に戻って食事の支度。ギンナンご飯、シャモ鍋、目刺しの焼いたの。ギンナンはさすが明治屋のだけあって粒が大きく、美味。大河ドラマ『葵・徳川三代』最終回やっていたので見るが、なんと水戸黄門パロディのコントで終わった。これで最終回? ウソでしょ、という感じ。大河ドラマも変わったなあ。二、三回しか見たことがないが、見るたびに、将軍が江戸城や屋敷の廊下を走り回っていた。あまりにリアリティーがない。その後のNHKスペシャルでそごう倒産をやっていて、案外面白いのでそのまま見ている最中に、電話。永瀬唯氏からひさしぶり。出版関係での問い合わせの件だったが、それだけで済むはずもなく、それからそれへ、とエンエン。ダレそれはまったくのバカでどうしようもない、彼コレはそもそもが低能、と、相変わらずの永瀬節に相槌を打ちながら、酒を飲みほし、バーボンをハイボールにして飲みながら聞いて、1時まで。1時にハローケイからゲラチェックのFAXがあったので、それをキッカケに切る。ふう。

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