28日
木曜日
むかしむかしプラズマは
大槻キョージュにのせられて。朝7時半起き。このごろ安眠できてできて。朝食はパンを切らしてスパゲッティ。冷蔵庫の奥にあったミカンも食べる。石坂浩二離婚会見をテレビで見る。K子によると、石坂浩二は料理名人として有名だが、普段はまったくそういうことをせず、取材されるときとか、どこかを訪問したときしか作らないヨソイキの料理なんだそうだ。そう言えば彼の料理の本というのを買ったことがあるが、あまりにキレイすぎて、ちょっと“今夜作ってみようか”というようなものがなかったな。
昨日で一応雑誌関係は仕事おさめだったが、とりあえず魔除にもうひとつ、週刊アスキーをやる。旅行前にまとめて原稿書いて渡したので、それから今日まで間が空いてしまい、調子をとりもどすのに時間がかかった。連載ってやつはな。ともあれ、トントンとすすむ。11時ころ、と学会員のH氏が、九州から上京しましたと言って、荷物を置かせてくださいと言ってやってくる。以前、原稿を書かせてくれる雑誌を紹介してほしいと言われ、編集部に連れていってやってからちょくちょく上京してくるのだが、仕事の紹介とかはやぶさかでないにしろ、私はこの人のテンションがどうも苦手で、いつも話を合わせるのに少しく苦痛を感じる。こういう人に限って、私と話すのは楽しいらしく、いろんな話題を次から次へと持ち出してとまらない。“こういうものにご興味はおありですか”と、オーディオのカタログだの、トレカだのをバッグから取り出して見せる。ニコニコとして、悪い人ではまったくないのだが、それだけに困惑を極めるのである。やっと帰り支度をはじめたか、と思うと、“ああ、そうそう”と、また別の話を切り出す。ほとほと持て余した。
風呂入って、一息入れ、メシはカレーうどんですまし、新宿へ出かける。銀行で金をおろし、伊勢丹古書市へ。初日などに行くとどう気が転倒して金を使うかわからないので、三日目をねらって行くのである。カゴを手に棚を見ていたら、“あら、カラサワ先生”と声をかけられる。開田あやさん。今日はバーゲンだったらしく、洋服の入った紙袋をいっぱい下げている。昔の東宝撮影所の宣伝部の人の本などを買っていた。戸板康二の『團十郎切腹事件』を探しているそうだ。ちょっと立ち話して別 れ、また回る。あまり買わないように買わないようにと口の中で呪文のように唱えていたが、『ファイト』創刊号からの縮刷版揃い三万円(プロレスの資料というより、当時の抜群の風俗資料となる)を衝動でカゴに入れてからタガがはずれ、“エーイ今世紀最後の古書買いだ、ケチらず行こう!”と、目についたものをどんどん手にとり(さすがにマンガの棚は目をつぶって通りすぎた)、気がついたらウン十万の買い物をしていた。三日目でこれだから、初日になんぞ並んでいたら身代限りをしていたかもしれない。
4時にヘアカットを予約していたことを思い出し、あわててタクシーで渋谷へ。ギリギリに、両手に古本抱えたまま飛び込んだら、三○分ほど延びるとのことだったので、一旦帰宅して荷物を置く。睦月さんから『日曜官能家』最新号が届いている。事務繁多化により官能家は今回で最終号なのだが、さすが、みな力作揃い。今年は官能倶楽部はコミケ落ちた(と、いうより睦月さんが申し込みをし忘れた)ので、と学会 のブースで委託販売となる。30日東モ60A。
4時半、再びヘアサロンへ。いつもは私は京王プラザ内の理髪店でやっているのだが、K子が、そこはダサい、と主張して、自分のやっているヘアサロンに予約を入れた。おねえさんと会話しながら、三○分ほどで終了。なるほど、理髪店よりはいくぶんカッコいいようである。家で寝っ転がってさそうあきら『やまだまるもちゃん』を読む。作家の父と幼い娘、という設定は榛野なな恵の『Papa told me』のパロディみたい(こちらはちゃんとママもいる)だが、『Papa told〜』の父娘関係がファンタジーなみに理想的なのに比べ、こちらは異次元の論理で動く4歳の娘に、父親が徹底的に振り回される。単なるほのぼのマンガでないシニカルな観察眼と、わたせせいぞうより一○○倍も地に足のついたおしゃれ感覚の絵が微妙なバランスでマッチしているところは、さすがにさそうあきら。最も、その視線が子供の行動の底の底にある残酷さまでには踏み込まず、“シャレたスタイル”をギリギリで崩さないものたりなさも、やはりさそうあきらである。
まだ20世紀も三日ほど残っている。その間の食料などを買い込みに青山まで行って、パンや牛乳を買う。そろそろ、都内も交通量がめっきり減っている。帰ってそのまま船山へ。もうさすがにあまり材料を仕入れていないらしく、アリモノで刺身、シマアジのカマの塩焼、イカとクルミの掻き揚げ天婦羅。日本酒をコップでグイグイやり、ご飯は天茶にしてもらって食べる。値段、この内容ではちょっと高いと思ったがまあ、古本バカバカ買い込むのに比べたら。