8日
金曜日
三大晦渋地球最大の決戦
蓮見重彦・吉本隆明・柄谷行人。朝7時半起き。朝食、ピタパンにチーズ。果 物はイチゴ。シャワー浴び、日記書き、さて、今日はかなりハードになりそう。松田聖子離婚会見のワイドショー見ながら、気を引き締める。引き締まらないねえ。
まず、ドリフト道場から依頼されていた冬コミ『豹マン』本の原稿。三枚くらいでおさめようと思っていたのが、筆がのって七枚となる。書き終えてすぐに開田さんの『特撮が来た!』の原稿にかかる。いろいろ書きたいこと山積なのだが、これに力を入れていると他のものがダメになる。先日の『ゴジメガ』観賞日記をそのまま引き写し、それに前後の解説をつける。書き足し分で三枚。
そこらで昼にする。あまり食べると眠くなるので、お茶漬け軽く一杯。ジンジャーエール一本。ユンケルも飲んでセイをつける。さて、午前中は同人誌、これからがメシの種、と、馬力かけて、まず講談社Web現代連載コラム九枚。濃いネタは近きにあり、で、どどいつ文庫の話。なかなかディープに仕上がったと思う。それからイーストプレス『フーゾク魂』コラム五枚弱。これも、ネタ仕込みを前以てしていたので楽勝。さて、それから休みなしでSFマガジン連載エッセイ八枚にかかるが、これが意外に難産。ゆうべ書庫で検索しておいた資料が、話の流れでうまく使えなくなってしまった。仕方ないので手持ちの資料をもう一度練りなおし、なんとかそれをつなげて、カタチにし終えたのが7時過ぎ。ふう。逆に、うまくいい方向に流れがつながったぞ、と思った新資料分は枚数超過であまってしまい、来月回しとなりにけり。
とにかく、本日の総原稿執筆件数五本、総計執筆枚数三十二枚。枚数的にはもっと書いたことがいくらもあるが、これだけいろんなものを書いたのは初めて。さすがに脳が熱をもった感じ。書き終えた後はいささか狂的なテンションとなる。
そのアイマに、いろんな連絡事項、雑用もある。昼メシを食ったあと、古本屋『変奇館』に、買った本の代金を振り込みに行く。マガジンハウス『ダ・カーポ』と、新連載の打ち合わせの日取りを決める。メディアワークスTくんと、芝崎くんの単行本の話。時事通信社から依頼の書評用書籍、受取り。TBSから電話あり、“特撮ヒーローものの主人公を演じた俳優のその後の人生について何か語れ”と言ってくる。ゼロワンたこやきの話や、赤影の東スポのエロ占いの話、それから主人公じゃないが、松坂慶子のダリーの話などする。向こうはオタク的知識何もないらしく、この程度の話に“へえ!”とか、“それは凄い!”“そこまで知ってらっしゃるんですか!”などとイチイチ驚く。われわれには常識の範疇なのだが。日曜の昼間に、撮影に来るそうである。ギャラ出る仕事ですかと訊いたら、それは副ディレクターに聞いてくれ、とのこと。頼りない。
さて、明日はいよいよ今世紀最後のトークライブである。なかの芸能小劇場で9日(土)6時半開場、『鬼畜変態マル秘ビデオ編』。おヒマのある方よろしく。おヒマない方もよろしく。なにしろ出演者の私がないヒマを作って出てるんだから。
夕刊を見たら、福田純監督の訃報。三日に亡くなっていたとやら。享年七七歳。ゴジラ新作の話題で盛り上がっているときに、ひっそりと昭和ゴジラの足跡を刻んだ監督が亡くなる。これもまた因縁か。一度だけ、間近でお酒をお相手させてもらったことがある。ゴジラの再ブームで、ビデオやLDの印税がちょくちょく入ってくるんだけど、全部競馬に使っちゃってるよ、と笑っておられた。“岩波新書から、『娯楽映画の作り方』って本を出さないかと言ってきたんだけど、娯楽映画に作り方なんかないよ、って断っちゃった”とも聞いた。惜しい。たとえ本人に自覚がないとしても、『ゴジラ』『若大将』と、変革期東宝で、二本の人気シリーズを初代から引き継ぎ、その路線を時代の変遷に合わせて、着実なドル箱として定着させた実力派だ。構成・編集のよろしきを得れば、日本映画の、これまで語られなかった一面の記録となっただろうに。福田作品は演出の大味さがよく指摘されたが、それは、氏が助監督としてテクニックを学んだのが大作監督稲垣浩のもとだったからであり、氏が監督に昇進した後は、日本映画界は、残念ながらその腕を存分にふるえる大型映画を撮らなくなってしまっていたのである。黒沢年男主演のハードボイルドアクション『野獣都市』では小技をきかせた演出に見事な腕をみせているという話だが、私は未見。ゴジラもので一本、好きな作品を挙げるとすると、『地球攻撃司令・ゴジラ対ガイガン』か。特撮シーンがライブフィルムを乱用していて評判の悪い作品だが、演出はナンセンスとサスペンスを混在させたシャレた味で、偉大な本多猪四郎の影をやっと払拭した新感覚のゴジラ映画になり得ていた。
9時、パパズアンドママサンで焼鳥。一日中座り通しで体は疲れていないが、脳内エンドルフィンとアルコールの配合で、変な酔い方をする。バドワイザー、ハーフアンドハーフ各イッパイ、焼酎お湯割り三バイ。焼鳥はツクネ、レバ、カワ、プチトマトベーコン巻、ササミ明太子、ナンコツ、手羽。手羽以外ここのはみなソロバン玉 みたいに小さい。それからもつ煮、ギンナンにジャガバタ。客の女がみな言葉使い滅茶苦茶で、聞いていて腹が立つ。帰宅、留守録に野沢義範くんから福田監督の件。