裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

木曜日

オコシアス(古代ギリシアの哲学者。京都生まれ)

 そうだ、ギリシア、行こう。朝7時半起き。夢の画面にパソコンのような機械でラクガキをしている、という夢。朝食、黒パンにソーセージとチーズ。日記つけ、麻黄附子のむ。あまりのみすぎないようにしたい薬だが(体が熱っぽくなって口が乾く)ここで風邪ひいてはモトもコもない。太田出版から『と学会年刊2001』届く。今世紀最後の著書(共著だが)である。よく年内に出たものだ。中のネタでは、長谷川さんの発表になる『ペリーの声』というヤツが、一度でも聞いたことのある人には最高。惜しいなあ、これ、CDにしてオマケにつけらんないかなあ。腰のくだけ方がもう、最高なんだが。

 世界文化社Dさんからメール。単行本企画、無事会議を通ったとのこと。めでたいことである。来年は連載に主力を注ぐつもりでいるのだが、書き下ろしも混ぜなくてはメリハリが生活につかぬ。このDさん、官能倶楽部の内藤みかさんと友人で、こないだ会ったときに私の話が出たという。“なんであんなにものを書いているのにあんなに出歩けるんでしょうねえ”と不思議がっていたとか。出歩かないで家の中にいたら煮詰まって、何も書けなくなるタイプなのである、私は。で、出歩く金を稼ぐために書いているのね。

 12時、時間割で某社打ち合わせ。例の、連載の話。知り合いの売れっ子作家さんにこのことを相談したら、モノカキにとっておいしい連載は何より大事なのだから、それは不義理をしても連載の方を取るべき、とレクチャーされた。某社さんもそれは十二分にわかっているし、あちらの雑誌の方も、それほど単行本には固執しない、かもしれない、という(笑)。いろいろ話し合い、ならば企画を二本持っていって、同時進行ということにしましょうか、と提案。これが無茶であることは百も承知なのだが、どちらの顔も立てるためには、こうするしかないし、今ならまだ、その無茶がきくのではないか、と思う(年齢的にこれが最後だろうが)。来週、その編集部と打ち合わせ。

 昼飯、某社さんと『暖中』でギョウザ定食。某社は今年一年で十一冊の本を出したが、来年はなんとか二倍にしたい、とのこと。帰りに、熊田プウ助氏に手紙を出し、薬局によって風邪薬を買う。パルコブックセンターにて書籍五冊ばかり。鴨井まさね『雲の上のキスケさん』3巻、もう出たかと驚いて買ったが、キスケさんは前半だけで、後半分は読み切り中編を入れてあるアゲゾコ単行本。人気があるのはわかるが、これはいただけない。この話は展開が入りくんだままどんどん進行していくのがウリなので、ある程度まとまった分量を読まないと、先がさっぱり見えずにイライラがつのるばかりだ。雑誌連載のその不満をそのまま単行本にまで持ち込んでどうする。

 6時までかけて『ダ・カーポ』新連載サンプル用原稿、書いても書いても終わらないと不思議がっていたら、字数計算を間違えていた。今度は縮めるのに苦心する。書いている最中に電話頻々。主にあちこちの雑誌社からで、来年2月売り、3月売りの号の原稿やインタビュー依頼。鬼が笑うどころの沙汰ではない。スケジュールを見ると、ナニがミレニアムクリスマスじゃ、といった感じ。まるで余裕がないぞ。自分の中での〆切を27日と決め、ここから先は年内は一切仕事をしない、と決意。せめて仕事場くらいは整頓してから新世紀を迎えたい。

 6時にイラストのK子にメールして、すっとんでいって時間割(今年この店には何回、通ったろう)。福音館書房T氏。昨晩送った原稿のナオシ。女の子が男の子にお弁当を作ってあげる、というのは男女の役割を規定することになるから直して欲しいというので、お互いにお弁当を作り合うことに変更。さらに、好き嫌いはいけない、ということを、今の学校では教えていないそうだ。アレルギーとかに関係なくても、嫌いなものは嫌いなもので、それも個性の尊重のひとつ。給食などで嫌いなものが出たら残してもいい、と教えているという。ここも表現を変更。変わったものだなあ、と思う。そういう教育で、個性の際だった、ユニークな天才たちがゾクゾクと生まれているのだろうか。そうは思えないんだが。ともあれ、話自体は面白いと編集部でも喜んでいるとのことで、ホッとする。向こうも向こうで、手直しなどを要求して癇癪を起こされないかとビクビクしていたらしい。二つ送ったうちでは、やはり絵物語りの方が採用された。

 8時半、花菜で酒とソバ。小青竜湯と小柴胡湯で、なんとか風邪の方は封じ込めた模様。トロ落ち、タチウオ塩焼、炒りギンナン。厚揚げが絹ごしで、外はサックリ、中はトロリと、精進のクリームコロッケといった風で美味。K子に、貯蓄をココロガケろと説教される。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa