裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

金曜日

アセトアミドと男と女

 化学実検室に芽生える恋。朝8時起き。ゆうべ二人とも夜中に目が覚めて、本を読んだりしてしまった。少々頭痛。朝食、ペペロンチーノ小皿ひとさら。バナナのヨーグルトあえ。いよいよ今年最後の週末進行。二見書房Yさんと会う約束だったが、飛び込みで今日まで、という仕事がやたら多く、延ばしてもらう。

 メール数通。こないだ、ハイレグジーザスの団長と書いたら、総代が正しい名称ではないか、との指摘。そうそう。日記というのは校正が入らないから、書き飛ばしの誤記がそのまま出る。午前中、日記つけ、メディアワークス本のゲラチェックをし、さて原稿。Web現代から片付けようとしたら、なかなか進まず。途中で放棄して、『大きなポケット』のナオシからやる。二回分に別けた話を(初回だからということで)一回にまとめなおし、チェック部分を問題ないように修正。案外楽しい作業である。FAXしたら、編集部Tくんから折り返し電話で、よくまとめられましたね、と感心された。下っ端ライターだったころ、こういう仕事はいくらもやっていたから慣れているだけなのだが。

 それでもう12時。外出して、パルコブックセンターで数千円ほど買い物。帰りにマンション下の喫茶店でザリガニ・カレーを食う。別にザリガニが入っているわけではなく、ザリガニ・カフェという店名なのだ。挽き肉を使ったカレーで、しゃれているが、ライスがベトベトでまずい。少し残す。部屋に帰ったらメディアワークスTくんから留守電で、ゲラチェック取りに来ましたがお留守でした、という。しまった、ドアの外に貼っておくのを忘れた。会社に電話して、折り返し連絡してもらうことにする。

 それから大馬力で、北海道新聞書評原稿。トンデモ本五番勝負で、今回の星五ツはパンタ笛吹の『裸のサイババ』。これ読んでサイババやおい本というのを書く奴は、まあいないか。書き上げてふと時計を見るともう5時過ぎ。試写会が一本あったのだが行きそこねた。それから最初のWeb現代に戻って、書き出す。体力ゲージが不足だな。8時近くにやっと書き上げるが、文章の密度に自信なく、明日、もう一度読み返してからメールすることにする。

 メディワTくんと電話。ゲラチェック分、それほどの量でないのでFAX。それから少し長めという注文のプロフィールを書いてメールする。なをきに電話。かなりバテてはいるようだが、やはり言葉のはしばしに売れている者のハリというか自信というかがバシバシ伝わってくる。来年予定の仕事のことで電話したのだが、ほとんどはカイジュウばなし。『ゴジラ対メガギラス』、そろそろ悪口も解禁ということで、盛り上がる。なをきは、なんで最近の怪獣はああ変形ばっかしするんだ、と言う。私はどうせ変形するなら、最後は二本足で立って、ゴジラと取っ組みあいさせるようにしなきゃ、と言う(ゴジラ細胞を吸収したんだから、そういう変形をしたっていいはずである)。ガバリとかキングマイマイとかクリケットンとかクモ妖怪とか、二本足の傑作デザイン昆虫怪獣がいくらもいるだろう。ツインテールというテだってある。二人の共通意見は、カイジュウ映画にはカイジュウ映画のリアリズムというのがあり、それはパニック映画やSF映画のリアリズムとはまったく別もん、ということ。日本の特撮マンがどれくらいロブ・ボッティンが好きなのか知らないが、もう、触手ばかりくねらしてずるずるぐちょぐちょとうねくる怪獣はたくさんである。触手映画は中野貴雄ひとり撮っていれば十分。あと、二人揃って、なぜ最近の怪獣は目に瞳がないのか、と叫ぶ。だからキャラクター性が出ないんだよ。キングコングが汽車をつかんで中をのぞきこみ、浜美枝に目をつけるところ、ガラモンが東京タワーの展望台に顔を近付けるところ、いずれも瞳があるからこそコワイのである。楳図かずおの怪獣まんがには、必ず、怪獣が瞳をぎょろり、と動かして主人公をみつめるシーンがあったことを想うべきである。

 もちろん、誉めもした。“今回のゴジラは、シーンごとで大きさが全然違うトコロがいい”と、二人で言う。怪獣映画の、これも大事なところである。イメージシーンでは数百メートルの大きさに、人間と対峙するときは、それがてのひらにすっぽりとおさまるくらいに。それをつなげて不自然と感じさせないところが、すなわち演出の力というものであろう。そんなことで盛り上がっているうちに、待合せの時間が来てしまい、あわてて新宿に出る。井上デザイン事務所との飲み会。この日記見て、幸永に行きたがっているらしいので、新宿幸永。メニュー制覇、とばかりに、いつものに加え、コメカミ(青筋が立っているのかと思った)、トロミノ、ウルテなど頼む。平塚くん、何か感動しながら食べていた。K子の作ったやおいのペーパーを見る。『お兄さまへ・・・・・・』のパロディ。“右手には金のちぱたま、左手には銀のちぱたま”などと書いてある。“ちぱたま”とは、例の『ペニスブック』に書いてあった、世界の言語でペニスをどう言うか、というコーナーの、“日本語”におけるペニス。どこで どう間違えてCHIPATAMAなどとなったか・・・・・・。

 11時ころ、帰宅。風邪薬を予防用にのんで寝る。ベッドでマンガ雑誌を何冊かパラパラ読むが、コミックオールマンの小池一夫原作『マッド・ブル2000』、どうにも形容に窮するが、なにかスゴいことになってはいないか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa