25日
金曜日
一夫関に当るやヴァンプも開くなし
あの性悪女も箱根の山にはへこたれたようだね。朝8時起き。朝食、ハムサラダとヨーグルト。ハムは紀ノ国屋特製肩肉ハムで絶品。紀ノ国屋ではなく明治屋に置いてある小冊子『嗜好』の今月号に、大正二年の『嗜好』に載った、ハムサラダについてのエッセイが採録されており、これを読んで急にハムサラダが食べたくなった。
「就ては是非其注汁(ドレツシング)を入れる肉漿鉢(グラヴイボール)を欲しいといふ事で僕はとう々々明治屋へ行って夫(それ)を買はされましたよ、何と細君孝行なものであらうと僕が申したら妻曰くナニ御自分の口孝行なんですよと反對に出られた、考へて見ればさうかも知れません」
などという文章は如何にも大正時代の呑気さで大いによろしい、考えて見れば私も随分と自分の口孝行。
笑わん殿下河本敏夫死去。政治家としての彼の不幸は、現小泉内閣を見ればわかるように、政治が実力と見識の時代からマスコミ相手のコマーシャリングの時代に移項する、ちょうどハザマの時期にいたことであろう。マスコミ演出の名人である中曽根氏と総理の座を争い破れ去って、その後第一線に浮上してくることが出来なかった。今後の日本は地味な人間はトップに立つことができない社会である、と考えるべきだろう。ブッシュ(今のブッシュの親父)が大統領になったとき、アート・バックウォルドが、“こんな特長のないやつが大統領になってはわれわれはメシの食い上げだ”と政治マンガ家たちが集会を開いて嘆きあう、という冗談コラムを書いていたっけ。そう言えば河本サンの似顔絵で印象に残るものを見たことがない。いしいひさいちがヒロオカに河本サンを演じさせたやつがかろうじて記憶にあるくらい。
K子に弁当、豚の生姜焼きに自家製ザワークラウト。そのあと講談社Web現代。昨日の晩にネット回っていいサイトを見つけていたのでネタには苦労しないが、形よくまとめるのに難儀。ノーザンクロスI田氏から単行本の件で電話。ここのも進行がこっちの都合で延び延びになっていた。急がねば。だいたいのところを完成させて、昼はタコヤキ坂下の吉野屋で牛丼。オシンコとケンチン汁つけて。ひさしぶりに食べるとなかなかうまく感じる。パルコブックセンター、何も買わず帰宅。某国営放送Yくんから讃岐うどんが早いお中元。
1時、時間割にて大きなポケットT氏。なんやかんやあって、今回で連載をオリることにした。双方のためにならない、ということ。プロとしては情けないが、打ち合わせ終わって外へ出たとたん、何か重荷を降ろしたような気分になってホッとする。帰って仕事続き。某社から電話。×社で出るはずの単行本が出なくなったと聞きましたが……と言われて、全然聞いてないので驚く。それをウチで引き取らせてほしい、という話。確認してから、と答えておく。まったく、何が起こるかわからないな、今の出版界は。ネット関係の某氏から、ちょっと新ビジネスに関する協力お願いのメール。こういう仕事、これから増えるのか?
2時半、また時間割。アスペクトのK瀬氏、K田氏。この日記の出版についての打ち合わせ。他の出版物と違い、日記に関しては自分の望むスタイルにこだわりたいので、こちらの要望を話す。社長がこれをOKしてくれるかどうか。それにしても、このところ雑誌の仕事が打ち切り、休刊、連絡ナシとどんどん減っていっているのに比べ、単行本関係の話はどんどん進展していく。この数年は連載中心だったのが、また単行本中心にサイクルが一回転したということか。
それに引き続いて村崎百郎氏と対談。例の無くなった『ウルトラグラフィックス』の問題対談の単行本化にあたり、追加対談。毎回村崎さんの意気込んだ準備に、こっちは無手勝でのぞんでいたが、今回はどちらも素しゃべりで、まず五分といったところか。ハンセン氏病患者のギャグとか、某皇太子妃関係のギャグとかに、K瀬氏、息を切らして笑いながら、ちょっとカンベンしてください、と手を振る。武富士が放火犯人の似顔絵をティッシュに入れて“見つかるまで配り続ける”とか言っているが、村崎さん、異様にこれを欲しがっている。もし、長いこと見つからずにずっと配り続けていたら、そのうち、あの顔が武富士のマスコットキャラクターになっちゃうんではないか?
6時半まで対談、あまりに人非人的な対談を大声でわめいていたので、時間割のマスターが気分を害さないか心配。途中で知り合いの芸能プロダクションのM氏が入ってきたが、目線で挨拶交わしたのみ。悪いことをした。帰ったら留守録に早川書房A氏から単行本企画書催促の電話。なんか凄いことになってないかと思うが、燃える。Web現代、仕上げてメール。タイトルを、最初決めた『一夫関に当たるや、ヴァンプも開くなし』がわかりにくいだろうというので、『腎虚の星』に変える。変えたために、ちょっと内容が偏ってしまった。8時、K子と待ち合わせ。8時半という約束だったのを間違えたので、まんがの森で時間潰し。
K子のみつけたイタ飯屋に行こうとしたが、パーティで貸切り。こないだの居酒屋『花暦』に行く。先日に比べ、店としての格好が整った(店員もみんな和服姿になった)が、厨房は二人きりなので、金曜でほぼ満席の店で、見ていても疲れるほどの忙しさ。女将は相変わらず美人。キューティー鈴木に似ている。かます刺身、ナス豚肉巻き、アジ叩きから生しらすまでかなりの品数を頼んだが、以前のおでん屋に比べて三割安。結構々々。帰宅したらWeb現代からナオシ入り。やっぱりなあ。