裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

木曜日

あ〜あやんなっちゃった、ケネス・アンガアンガー驚いた

『ハリウッド・バビロン』感想。朝8時過ぎ起き。朝食、イチジクにヨーグルトをかけたもの(なんかオシャレだ)、豆のスープ。細雨、蕭々。全身がダルい。ハンセン氏病訴訟控訴断念でまたまた小泉流独善プレイだと官僚たち激怒。彼らが怒れば怒るほど小泉人気は高くなる。パブリック・エネミーとしての役人をここまで利用した政権も珍しい。たぶん、明日のマスコミは官僚批判で埋め尽され、小泉サンの人気は沖天に昇るだろう。しかしながらここで一応官僚の肩を持っておくと、彼らはまさに頭の硬いところを見込まれて役人をやっているのであり、彼らまでが小泉流のやり方でいったら日本はメチャクチャになる。司馬遼太郎も『竜馬がゆく』で、頭が硬くなければ役人はつとまらないと言っている。要はバランスなのだ。

 風呂あがりに歯を磨く。昨日、歯医者さんで手入れが悪いと怒られたので、歯茎を特に入念に磨く。“いや、丁寧に磨こうと思っているのですが、忙しいのでつい、おざなりになるんです”と言ったら先生、真面目な顔で、“それはよく磨いたときのキモチよさを体験していないからです。本当によく歯を磨くと、もう、それはそれはキモチがよく、逆に磨かないと気分が悪くなって、磨かないではいられなくなります。いったん、このキモチよさが癖になると、朝晩と限らず、もう、しょっちゅう磨きたくなって仕方なくなるんです。会社でもどこでも、歯ブラシを手放せなくなります”と言った。歯磨きジャンキーであるか。なんか誤解されそうだな。

 昼はおとついの稲荷寿司、試しに食べてみたらまだ固くなってなかったので、これとツケモノ。あと、タラコをひと腹、焼いて食べた。午前中に手をつけられなかった海拓舎のやつが午後にやっと筆が動き出す。その前に、と『男の部屋』の残りも片付ける。ただし、『男の部屋』イッキ書きで体力が極端に消耗。少し横になったら、落ち込んだようにグーと寝てしまう。中笈木六氏のサイトに、唐沢俊一の一日の執筆量が30枚と書いてあったが、とてもとても。15枚が限度。30枚書いた日もあったという話がいつの間にか大きくなったので、毎日そんなに書いていたら死ぬ。

 3時、時間割。予定表に3時とのみ、書いてあって、誰との打ち合わせだったか、まるっきり失念していた。おそるおそる時間割に行ってみると、世界文化社のDさんがいる。アレ、Dさんは今日6時からでは、と思って、やっとわかった。同じ世界文化社のKさんとの打ち合わせも偶然同日になっており、予定表の6時のところに世界文化社と書き込んで、同じ世界文化社との打ち合わせなので社名を書かなかった。やはり雨で頭がボケている。打ち合わせはとにかく、原稿遅れていることに平身低頭。
「ネットの日記拝見していると、講談社さんはもう、すぐ単行本が出るみたいでいいなー、って」
「いや、大丈夫、あそこのも前書きと後書きをまだ書いてません」
 何が大丈夫なんだか。6月から再運転、というスケを立てる。雑談の中でDさん、私も“ソレハ面白い!”と思う次の本の企画を出す。早くそれにかかれるよう、今の本の原稿を(いや、今の本及びツッカエている他社の本の原稿も)急ごう。それにしてもDさんは若い。二人の子持ちとはどこから見ても思えない。グリーン食道などでの食欲は、友人に“あなた、食べ女(フィリピンかどこかの伝統で、大食芸人の女性を宴席に呼び、彼女の盛大な食べっぷりを見物しながらみんな食事をする)になれるわ”と言われるくらいだという。

 今日は打ち合わせが雨垂れ式に入っていて、家での仕事はポツポツとしか進まぬ。4時、岩井天志さんと打ち合わせ。時間割二度目。中野武蔵野ホールでのトークのこと。あと、アートアニメばなし。アニドウのことなどもいろいろ話す。日仏会館時代の思い出話などすると、若い岩井さんにとっては、定期的にアニメの上映会が開ける場所があった時代はうらやましかろう。アレクセイエフなんて、今の若い美大生なら絶対ハマるよねえ、というような話。なんと岩井さん、大竹浩介さんの作品を、友人つながりで見たことがあるという。アートの世界も狭いねえ。

 また帰ってしばらく読書などし、6時、時間割三度目。世界文化社Kさん。こちらの単行本の話。連載をまとめただけでは枚数が足りないので、これまで書いたものの中から使えそうな原稿のセレクトをしている最中なのだが、やはり古すぎたり、文体が今と全然違っていたりで、なかなかない、という話。雑談で、昨日の日記の黒澤家の食卓の記事のことになる。たまたま先日、Kさんは人と一緒に永田町の『黒澤』という和食屋に行ったそうだ。息子の久雄さんがプロデュースしているとかいう店で、肉料理とソバの店。ソバは山梨の『翁』から職人を呼んで打たせていて、まず絶品であったという。
「肉料理はコースでしてね、いちいちに『姿三四郎』とか『七人の侍』とか、黒澤映画のタイトルがついているんです」
「『悪い奴ほどよく眠る』とか『白痴』とかいうコースはイヤですねえ」
「『醜聞』とか『どん底』とか、胸焼けしそうですねえ」

 帰って仕事。夕方以降の方がはかどるということは、明日は好天なのだろう。しかし、蒸し暑くなりそうでそれはそれでイヤだ。GOOGLEの調子はなおったよう。6月にロフトで宮台真司と対談という予定だったが、昨日斎藤サンから電話で、司会のやまけん氏からの要望で、それより先にオタクアミーゴス対オタッキー佐々木、やまけん、斎藤Kでまたオタク世代論をやりたいと言ってきた。盛り上がるだろうかなあ。どうせなら彼らと鶴岡でもカミあわせてみたらどうだろう。8時半、ママズアンドパパサンでK子と夕食。ムスコのサーファー仲間が持ってきたタコを酢ダコにしたものを出してくれる。これが巨大なるタコの足で、酢ダコのイメージとはほど遠いもの。梅干し焼酎2ハイ、生1、レッドアイ1。

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