裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

日曜日

ヘイ、ムーチョ!の中

 メキシコ版花輪マンガ。朝8時起床。朝食、マカロニサラダとトースト。設置位置変えたパソコンで初めて仕事するが、午前中は直射日光が当たって暑い。日よけのブラインドを買ってこなくちゃならない。机まわりの書籍を少し入れ替えたりする。

 母から電話。連休中は、三々五々見舞い客に来られてはたまらないと、初めの方にまとめてよんですませてしまい、後はゆっくり、と思ったら寂しくなって、鬱状態になってしまったそうである。雑用や雑事にかきまわされて初めて、日常が日常らしくなるのかもしれない。

 昼食はご飯に卵をかけ、ノリ、カツブシ、ネギを散らして。もう三十五〜六年前、マンガ雑誌のコラムで横綱大鵬の大好物、と書いてあったのを読み、うまそうだったので自分で作って食べてみた。私の料理歴のトップに位置する食い物である。食べて外出。タクシー使ったが、その運転手さんが、容貌風采も卑しからず、娘が台湾に嫁に行っているとかで、台湾論、外交論から子育て論に至るまで、見事な高説を述べるのに驚く。ちょっと見にはどこかの大学の先生のようなこんな人が、なんでタクシーの運転手なんかやっているのかと不思議だったが、これもひとつの主義なのかもしれぬ。それで思い出したが、『特別機動捜査隊』の部長役で有名な早川雄三という役者さんは、自動車の運転が好きで好きでそれに凝るあまり、大映の俳優だった当時、掛け持ちでタクシーの運転手をやっていたそうである。

 帰ってしばらく仕事。ML配信用の日記をまとめるが、体力極端に低下で、それも半チクのまま投げ出す。4時、銀座線渋谷駅でK子と待ち合わせ、上野まで。元ヤクザのIさんの出所祝い。早く着き過ぎたので、アメ横をぶらつく。路上のモツ焼屋でホッピー飲んでいる一団の様子が非常に雰囲気があってよかった。5時、北京飯店でIさん、そして彼女と獄中結婚したT子さんと久闊を叙す。Iさんは長期の刑務所暮らしにもほとんど変わらぬ元気な様子。頭をすっかり剃って、ちょっと山本麟一に似ている。T子さんはさすがに少しやつれた感じ。T子さんとの獄中結婚秘話、刑務所の中での逸話、それから今後の計画についていろいろと話す。些少ながら出所祝いを進呈。週あけから、ちょっと各出版社に連絡を取ろう。お互い顔も見られない獄中での交際はどうしていたんですか、と訊いたら、外を通して服や布団を交換しあっていたのだとか。ううむ、凄い純愛。

 Iさん夫妻と別れて7時。ちょっと時間が空いたので、青山まで行き、スカしたイタリアン・バーでワインとおつまみ。K子と話がはずむ。近くで結婚式があった二次会らしく、いかにも青山といった感じのお坊っちゃんお嬢ちゃんがはしゃいでいた。私ァ、やっぱり上野のモツ焼き屋の一行の方が好きだな。出て、K子と夜の人気の少なくなった青山通りを歩いて帰る。こういう青山はよし。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa