裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

月曜日

ジャイアンの娘

 やっぱりいじめっ子? 朝7時起き。夢で出久根達郎の『デシン症候群』という本をえんえんと探す、というシチュエーションを体験し、目が覚めたとき、どこまでが夢かちょっとモーローとしてわからなくなっていた。最近は全然出久根氏の本も読んでいないし、デシンって一体何かも不明。なんでも、古いことを極めて鮮明に覚えている人間の話だったと思う。あまりに具体的な夢だったので、インターネットで出久根氏にそんなタイトルの著書が本当にないか、調べてしまった。

 朝食、胚芽パンにニシンのスモーク。果物はオレンジ。朝から蒸し暑く、何かダラけてしまう。鶴岡から電話。例の沖縄の家出少年、なんでオレのところに来なかったんでしょうねえ、そうすれば泊めてくらいやったのに、と言う。あまりに似すぎている奴のところには行きずらかったのではないか。最近の日記の記述で、読んだ人たちから“あれ、それからどうなりました?”と最もよく訊かれたのがあの家出少年のことである。見かけた人がいたら、鶴岡のところへ連絡を。

 昼は六本木に出かけ、買い物。あおい書店で都築響一『精子宮』(アスペクト)を買う。鳥羽SF秘宝館の写真集。2000年で閉館したらしい。閉館前に取材が出来たのは幸運だった(そうか?)。ところで、4800円もする本なのに、ページがバラけている。ひどいものを売るなあ。昼は立ち食いソバ屋で冷やしたぬき。いよいよ冷やしタヌキの季節の到来と思うとうれしくなる。なんでこんな食い物が好きなのだろうか。

 帰宅、少し仕事。『フーゾク魂』の編プロから電話。今回はコンナことになっちゃいましたが、と、次の企画の話をちょっと。つながるのはよし。3時、時間割にてエニイクリエイティブという編集プロダクションのインタビューを受ける。全国家庭薬工業組合の組合誌の特集で、クスリ関係のエッセイや評論を書いている人たちの特集ということで、私や田中聡氏、町田忍氏などの談話を集めているということ。男女のインタビュアーだったが、30代半ばと思われる女の人が“前々からファンだったんです”と何かはしゃいでいる。頭のよさそうな人だが、女性が“〜ですなァ”という口調で話すのがちょっとノスタルなツボ。初期オタクグループによくいたですよ、こういう口調の“女史”。

 1時間半ほど話して、手みやげのオセンベを貰い(これがギャラ代わりである)、パルコブックセンター、東急ハンズ、靴のダイワなどを回る。東急ハンズで日よけのブラインドを買う。取り付けに案外手間がかかった。6時、また時間割にとって返して、メディアワークス打ち合わせ。芝崎くんも同席しているので、と学会の事務方の引き継ぎの件で少し話す。問題は今彼が使っているパソコンが海拓舎のFくんからのお下がりで、バージョンが古くて使いにくいということらしい。メディワのTさんと今後の出版予定の件、三冊連続でスケジュール立てる。

 芝崎くんからバースデープレゼントを貰う。そう言えば明日、誕生日か。すっかり忘れていた。誕生日を祝わない、というのが何故か唐沢の家の特長で、パーティなどというもの、したことがない。だから自分の年齢がいま、いくつかということを考えたこともあまりない。なをきなどは学生時代、自分の年齢を訊かれると、まず私の年齢を思い出し、そこから3つを引いてようやく自分がいま、いくつかということを確認していた。大学時代、母親が“有名な占いの先生にお前のことを見てもらった”と託宣をうやうやしく書いた紙を見せられたことがあったが、まるで当たっておらず、何だこりゃ、と思ってよく読むと、母がセンセイに教えた私の年齢が、生まれ年も月日もまるで違っていて、これじゃ当たらないよ、ムスコの誕生日くらい覚えておきなよ、と呆れ返ったこともあったほどだった。

 8時半、花菜でK子と食事。タカベの塩焼きがお勧め、ということでとったが、やはりアジの方がうまい。冷や奴は絶品。あとなめろう、野沢菜など。ラストにモリを一枚とり、また揚げ玉をもらってタヌキにして食べる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa