裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

木曜日

むかし、むかし、プラズマは

 見つけたキョージュに連れられて。朝7時半起床。朝食、エビクリームコロッケサンド。モーニングショーの話題は野党の小泉・田中いじめ。“小泉さんはパフォーマンスやりすぎ”と辻元清美がイキドオっていたのに苦笑。オマエのこれまでやってきたことはなんやねん。こういうトンチンカンに比べれば田中真紀子などまさに大政治家の貫禄(貫禄だけだけど)である。国民的人気を得る政治家が出てくるとヒトツオボエで、“ヒトラーの再来”と危惧する人がいるが、私は小泉さん、人気だけでどこまで行けるものか、とことんまで行ってみればいいんじゃないかと思っている。日本的土壌の中で果してヒトラーが生まれ得るものかどうか、非常に興味があるし、第一“ヒトラー一人生み出せない国”というのも考えてみれば情けない。私は小泉政権は『ゴジラ対メガギラス』だと思っている。前がひどすぎた分、評価で得をしているのである。

 昨日少しハイテンションにしすぎて、今日はもう、朝からグッタリ。原稿を書こうとするも、気力がスウスウ抜けていく。電話数本。メディアワークスから打ち合わせの日取りの件。イーストプレスから『フーゾク魂』休刊とのこと。まあ、あそこの出版社ではよく続いたもんだと思う気持の方が強し。世界文化社Dさん、なんと昨夜、彼女もグリーン食堂行っていたとのこと。その他あののものの。

 永瀬唯氏から電話。ウレシソーに下血のことを話す。腸内の痔核が破裂したらしいが、よくある話で(うちの親父もこれ、やったことがある)痛みなどの自覚症状がないから、トイレに行ってその大量の血の噴出に仰天したらしい。尻から血ィ垂れ流しながら原稿書いていたという。普通はそれくらいの失血があると貧血を起こすもんなんだが、全くそういうこともなかったとか。よほど血の気が多かったものとみえる。手術も無事済んで、いま退屈してるというから、明日にでも誰か誘って見舞に行くつもり。

 團伊玖磨氏死去、77才。この日記には何故かちょくちょく出てくる名前だった。ナマで最後に見たのは去年、新橋の蕎麦屋で風邪を引き込んでボヤいている姿だったが、何か生気がないように感じたのは病気のせいばかりでなく、奥さんを亡くした直後だったからか。『パイプのけむり』シリーズは末期には出版社のお荷物になっていた、という話も聞いたことがあるが、しかし、あれだけの期間、エッセイのネタを途切れさせなかったというのはスゴい。文章の読みやすさと大衆が安心してついてこられる程度の知的レベル、上品さ、視点の位置など、文筆業志望者ならば一度は(一度でいいが)目を通しておくべきだろう。そうそう、ジェイソン・ミラーも死んだ。舞台中心の人だったので映画では『エクソシスト』のカラス神父くらいしかおなじみのものがないが、あの暗ぁい深刻そうな顔がなければ、あの映画は成立しなかっただろう。カラス神父と言えば小倉智昭の頃の『どーなってるの?』で中村江里子がこの名前を“カラス親父”と読み間違えた事件は何回もネタに使わせていただきました。

 昼は参宮橋の『道楽』で海苔ラーメン。青山へ行って買い物。もう夏を思わせる気候である。帰って西山英一さんのサイトなどをのぞく。昨日自慢していたトップペー ジのカリグラフアニメーションに笑う。文章もおもしろい。

 原稿書きの資料集めにGOOGLEを使っているが、これが調子が悪くなった。検索のキーワードを二つ以上打ち込むと、最初の十件はきちんと表示されるのだが、次の十件を見ようとすると、スペースを入れた部分に@が入ってしまい、“見つかりません”になってしまう。ワープロを変えてみてもダメである。仕方なく、間にandを入れてやっているが、いちいち“andは必要ありません”と注意が表示されるのに腹が立つ。“それで出来ないから入れておるんじゃあ”と画面に怒鳴りつけたくな る。

 5時、やはり体がバテていると判断、新宿でサウナ&マッサージ。気休めだとは思いつつ。ここの経営者なのか、禿げた爺さんがやたら愛想よく“カラサワセンセイ、お飲物です”とか“時間が来たらお呼びします”とか声をかけてくる。経費削減か、サウナ室の床に敷いてあるタオルマットが、ドアから腰掛けのところまでの一本道だけになった。出ようとして、そこ以外のところの、むき出しの木の床に足を降ろすと熱いあつい。

 帰って夕食の支度。また鮎ごはん。それと鳥しゃぶサラダ。ビデオで加藤泰が新東宝で撮った昭和三十年の『忍術児雷也』。萩原遼との共同監督ということになっているが、実際は加藤の単独演出らしい。この当時から集団立ち回りを多様しているのが笑えるが、それだけに個人ヒーローを際立たせるのが上手くなく、児雷也役の大谷友衛門も、すぐ妖術を破られてしまったりしてパッとしない。山賊の頭領願人太郎役の山口勇が、山上智(昔、私のプロダクションに出入りしていたゴロ)そっくりな顔で印象的。そういえばこの山口という俳優、かの『和製キング・コング』(斎藤寅次郎監督)の主演だった人ではないか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa