裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

火曜日

あなたがカンダタ小指が痛い

 タイトルに意味はない。意味がないと言えば夢の話を日記に書くことに何か意味があることなのかどうか、首をかしげざるを得ないのだが、一応書いておく。ラジオで古くさい漫才を聞いている夢。他のシチュエーションは忘れたが漫才の内容は何故か克明に覚えている。“皇太后陛下もお亡くなりになりまして”“おいたわしいことです”“竹下元首相までお亡くなりになりましたな”“天皇陛下と昭和の幕をおあけになった皇太后さまと、昭和の幕引きをした内閣の主のお二人が相次いで世を去られましたね”“子供のころからおなじみだった方々がもうこの世にいないというのは寂しいことだねえ”“そうですねえ”“私なんかも子供時代、よく明智光秀さんに頭をなでてもらいましたが、あの方ももういらっしゃいません”“おいおいおい”というもの。こうやって書くとまことにつまらないが、夢の中では私含めて、聞いていた者み んなが笑っていた。なんで明智光秀?

 7時半起床、朝食8時。タラコスパゲッティとコールドコンソメ。メール返事数通とニフ会議室書き込み。それから某薬品メーカーPR誌の原稿、3枚半。書き上げて渋谷に出て、回転寿司で昼食。銀行へ寄り、古書センターへぶらりと入る。古い艶笑 エッセイ集などを買い、一万円ばかし使う。

 帰って原稿書き。右足の傷のところが仕事しているうちに痒くなってきて、ワープロを打ちながら掻いていたら、爪にカチン、と当たるものがある。何だろうと思って見てみたら、カサブタがはがれて、そこに3ミリ幅の、ホチキスの針みたいなものがのぞいている。そう言えばこないだ診療のときドクターが、中に針が残ってますが、これはわざわざ切って取ることもないものなのでそのままにしておきます、と言っていた。その針が、肉に押し上げられて、出てきたものと見える。以前、岡田斗司夫氏にもらったプラモデル組立用キットの中のラジオペンチではさんで引抜き、後の傷口に抗生物質の軟膏を塗り、バンソウコウを貼っておく。生命力なるかな、とちょっと感心。針を見ると小さいが先がトガり、かなり凶暴な感じがする。

 高信太郎には某所から金が出ているそうな。心配してソンした。湿度高く、原稿書き放棄して、前から考えていた単行本の企画書だだだと書き上げ、コピー取って存じよりの出版社に郵送。青林堂から電話で、なをきとのマンガ、単行本未収録集を出したいと言ってくるが、もう一冊分は残っておるまい。

 家の郵便受けに入っていたエロビデオのチラシ、逆輸入ものが多いのだが、そのタイトルが傑作。“トーキョー・スラッツ”だの“ドラゴンレディース”だの“ジャパニーズ・キモノ・ガールズ”“ゲイシャ・タトゥー・ガールズ”などという、占領時代から変わらぬセンスのタイトルがあるかと思えば、“ノーティ・ニンジャ・ガールズ”みたいな中野貴雄監督作品か、というのもあり、さらには“タッチ・ミー・トーフ”だの“ソイ・ソース・スラッツ”、“サケ・トゥー・ミー”なんてグルメ&ヘルシーなものもある。桜井舞や星崎るな、人気AVアイドルなんていばっていても(いばってるかどうか知らんが)逆輸入ビデオではオマエら“ワンタン・ウォーカーズ”なんだぞ。なんだいったい、ワンタンウォーカーって。大笑いし、しばらく体全体がポーッと暖かくなるような幸福感にひたる。変な知識、裏モノ情報が得られると、私の脳は快楽物質を放出するようなシステムになっているらしい。

 8時、新宿に出る。K子と待ち合わせて東口“かに料理・たらば屋”。大入り満員状態で、20分ほど待たされる。K子は今日、例のポーランド語の教室帰り。毎回、彼女が聞き込んでくるポーランド情報(ポーランドにおける階級差別の実情)などがなかなかおもしろい。今回のネタ“ポーランドでは、社会主義時代に政治家の名前を冠していた通りの名称をソビエト崩壊後一斉改名したが、あまりにそういう名称が多かったため、新しい名を考えるのが間に合わず、<タマネギ通り><マルメロ通 り>など、野菜や果物の名をつけてごまかしたところが多い”。たらば屋のカニ、焼きタラバと蒸し毛ガニを試みてみたが、どうも大味。

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