裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

水曜日

泣かぬなら泣かしてみしょうクリトリス

 三流雑誌大量に読み返していたらセンスも三流に。朝7時半起床。朝食、タマゴとベーコンのサンド。朝、薬局新聞やろうとしたらワープロの(この原稿だけはワープロでやっている)フロッピーがいきなり読み取り不能になる。十年以上使っている機種だからなあ。

 裏パティオでゆうべのことなどいろいろ、替え歌など作って笑うのは我ながら悪趣味。なんと東浩紀氏から直接メールが来て、例の『ドラキュラ』評のカン違い指摘のことについて、自分のHPにその旨訂正を出したいので私の名前を記すこととリンク張ることの許可を求めてきた。そのフェアなことに、さすがは学究だなあ、とちょっと感服。われわれ野にある者は、自分の書いたものを商品として認識しているから、明らかに間違いがあったにしても、なかなかそれを認めることが出来ない傾向がままある。こういうところは学ばなくてはいけませんな。とはいえ東氏、時にはツラリとして知らん顔をしている、という面の皮の厚さも文筆でやっていくにおいては必要なときもありますぜ(とりあえず、TINAMIXは次も出る“らしい”。やめときゃいいのに)。

 以前受けたインタビューの単行本掲載依頼、別のインタビュー依頼、広告原稿の資料到着、こっちからの図版送付など雑事多々。昼は札幌から届いたアスパラガスの味噌煮ブッカケ。バテ防止用に、プラセンタの錠剤をのみはじめる。

 最近、筆は非常に充実する感があるのだが、書き出すテンションが容易に上がらぬようになってきている。年齢もあるだろう。セックスと同じで、勃起力はあるしテクニックも回数こなす体力もあるのだが、問題は勃起し続ける持続力なのだ。持続力がモノを言う一冊丸々の書き下ろしはツラいなあ、やはり。連載を増やして、最初から 単行本化を念頭において少しづつ書き貯めるというのが一番能率的かしらん。

 4時半、歯医者。奥歯にマスイを打ち、型をとり(型どりでマスイを打つのはしみないため)、それから何だかよくわからないことをあれやこれや。前回の帰りに“次回は一時間半ほどお時間がかかります”と言われたが、終わって時計みると確かに一時間半カッキリかかっていた。さすがプロ。

 青山に買い物に出る。子供の城の前あたりを歩いていたら、“あの、唐沢さんですか”と声をかけられる。月蝕歌劇団の女優さんで、今度阿部能丸くんに誘われて、中野の会に行くという。そう言えば阿部くんから昨日の晩、その件で留守録が入ってい た。久しぶりに出たな、西手新九郎。

 8時半、夕食。鶏鍋、スーパーで買ったイワシつみれフライ。これが案外うまかった。ビデオで、『マライの虎(ハリマオ)』(1943年)。この主題歌が三橋美智也の歌うテレビのハリマオの元歌なのである。大作『シンガポール総攻撃』の撮影でロケに行ったスタッフが、せっかくロケに来たんだからもう一本撮って帰ろう、というケチ精神で作ったソエモノ、キワモノ映画で、まともな映画雑誌からはそのズサンな作りとストーリィの安っぽさを酷評されたが、それが本家本元の『シンガポール総攻撃』より当たってしまった、というのがまことに痛快なエピソード。国策映画の重々しい作品ばかり見せられていた国民は、こういう安っぽい、ドンパチだらけのアクション映画に飢えていたのである。ハリマオの腹心の部下になるサリーというマレー人、誰かに似ていると思っていたが、裏モノの“見えない世代”に感じがソックリな のであった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa