11日
日曜日
カフカ食われるか
こっちの方がスッキリしてるな。朝、7時半起き。水木しげるの本の装丁をまかされるがデザインの素養がまるでないので、手を加えるたびにひどいものになってあせる、という夢を見る。悪夢、とまではいかないがヤな気分になって目が覚める。朝食はハムとスイカ。フィギュア王11枚、11時半までかかって書く。
梅雨の冷たい雨がシオシオと降りしきる。昼はゆうべ寿司屋で作らせた太巻きと、コールドコンソメ。体にカビが生えそうなので、表へ散歩。タワーレコードでCD買い込む。シンプソンズの“ストーンカッターズ”とかハロウィンスペシャルのオープニングテーマの曲が入ったやつとか。七階の書籍売り場でバットマンのコミックス見て、別の棚に眼をやったらバカでかく“GOTHAM”の文字。ニューヨーク市の歴史を綴った大著だった。西手新九郎大活躍。これはこの日記を執筆している時点で得た知識(植木不等式氏の教示によるもの)だが、台湾版バットマンではゴッタム・シティに“高譚市”という翻訳があてられているとか。そう、意訳でやれば“衆愚城”はどうかな。
青山まで足を延ばして散歩、体調どんどん回復するも、口中乾き、酸っぱいものが欲しくなる。プラセンタ飲んでいるので体熱が上昇しているな。買い物して帰宅、雨音を聞きながら寝転がって『澤村田之助曙草紙』読んでいるうち、ズシッと眠気がさしてきて、一時間ほど熟睡。実によく眠れて、眼が覚めたあと血が入れ替わったような心地よさを感じた。
『曙草紙』の発端はまだ少年時の田之助を山王台の住職観正院が見染め、金でこれを買って男色の相手とし、それをパトロンにして田之助が梨園で名を上げていく、というストーリィだが、明治の世に男色は流行してなかったと見えて、リアルでないと言う声があがったか、作者が幕末までの坊主には男色は常のことであった、と中書きで言い訳をしているのがおかしい。そもそもこれは弘法大師が、あまりに僧の戒律が厳しいのを気の毒と思い、工夫して発明した性欲解消法であるが、その後宗旨を問わず大流行りに流行って僧の乱脈極まるまでになり、さしもの弘法さまもこんなものを広めねばよかったと悔いたが、これが本当の空海先に立たずというもの、などと言うのは江戸戯作の血を引くクダラなさの極み。
原稿書きしばし。猫が最近の暑さ寒さの入れ替わりで夏毛と冬毛が混乱状態、生えたり抜けたり。抜けたものを舐め取るものだから、毛玉をあちこちに吐き散らかす。トイレのしつけはまことにいい猫なのだが、毛玉だけは始末が悪い。それから夕食の準備。NHK『葵三代』を初めて見て、あまりのひどさに呆れる。白身魚のイタリアンシチューと豚しゃぶサラダ。ビデオで『大怪獣バラン』。昔オールナイトで必ず途中で寝入ってしまい、通してみたのはこれが初めての経験ではないか。
怪獣の暴れるシーンや自衛隊との攻防は見事だが、人間ドラマが一抹たりともないのがスゴイ。兄の謎の死を解明するため取材陣に加わったヒロインが、ラストでバランの最期を写真に撮ろうと駆け出すところで“商売商売!”などと叫ぶのはいかになんでも不人情ではアリマセンカ。兄の命を奪った怪獣だぞ。海外輸出用に作られた作品だそうだが、アメリカ人はこれを見て、日本人は兄弟の情より仕事の方を大事にする組織人間である、と思ったような気がする。K子はバラダギ山中の様子を見て、本当の田舎はコンナモンジャナイと怒っていた。