裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

10日

土曜日

カフカカハヌカ

 タイトルに意味はない(と、言うよりこれは何か?)。朝8時半起き。朝食、昨日ドタバタして買い物忘れたのでミルクも果物も抜き。札幌から到来のキャベツ煮で。気圧、梅雨入りで低め安定。かえってその方が調子はよし。気圧の変化ですぐ体調がくずれてダルくなるのは、久美沙織さんところの犬と同じなのだそうだ。

 SF大会について談之助師匠と官能倶楽部パティオで打ち合わせ。ゲストにプロ呼ぶ関係で大会企画として行うと入場料金とれない(ギャラが自腹になる)ので、前泊あるいは後泊企画で、近くの会場を押さえてトンデモ落語会の特別バージョンをやります。詳細はまたこの日記及びイベント告知欄にて。今回は会場周辺の宿泊事情最悪だそうだが、横浜なので渋谷住まいの私にとっては痛痒なし。

 K子に弁当(ジンギスカン炒め)、自分も同じもので昼食。奥の仮歯の具合悪く、メシが美味しく食べられない。気圧は低め安定で仕事はジョキジョキ。午前中に週刊アスキー一本書き上げ、午後はモノマガジン。モノマガジンはネタで四転八倒、とまではいかないが二転四倒くらいした末に、まったく内容のない原稿を5枚、ダッシュで書き上げる。馬鹿にするかもしれないが、内容がまったくなくて読ませる原稿を書くというのは、内容がつまった文章を書くことの十倍は難しいものなのだ。嘘だと思うなら書いて見給へ。

 大森望さんところのサイトをのぞいたら、Gothamはゴッサムかゴウサムか、で論争、のようなものが起きていた。海法紀光氏が“バットマンならゴッサム”と発言していて、参加メンバーも異を唱えていなかったが、みんな若いんだなあ。われわれの世代、ロイ・ジェームスのナレーションを聞いて育った世代にはあれは“ゴッタム・シティ”なんだが(渡辺洋一監・訳の『スーパートリビア事典』にもゴッタムと表記されているのは、このTVでの訳に従ったものだろう)。

『明治開化期文学集』で、高橋阿傳に続き『澤村田之助曙草紙』読み始める。16歳で守田座の立女形になった美貌と才能の持主があたらその若さ美しさで脱疽を患い、足を失い手を切断し、四肢を失ってなお、舞台に立ち、その美しさで観客を魅了したという実話に基づく、頽廃美の極致のようなお話。田之助は三十四で死んでいるが、この小説の作者の岡本起泉も、結核で三十才で死んでいる。読本調のオリジナルに乏しい文章とはいえ、漢語文語を駆使したこれだけの美文を二十代の若さでスラスラ書けるんだから、江戸文化の蓄積というのは凄い。

 5時半、新宿でマッサージ受けて、そこから四谷三丁目に出て買い物。新宿へとって返し、寿司処すがわら。客が開店早々からドドッと来て、土曜のことであまりネタ入れてなかったんで、白身が切れているという有り様。茹でたてのタコを出してくれる。歯がよければなあ、と嘆く。四谷で立ち読みしたまんがくらぶの大橋ツヨシの四コマに、ツマヨウジでも取れない、鏡見ながらピンセットでつまみ出さねば取れないところに食べ物がはさまるという話があったが、こういう時だけに無茶苦茶に実感性があった。食べたあと、皿に残ったタコの茹で汁が、タコダシが濃縮されたものでまことに結構。

 帰り、カードで支払おうとしたら、読み取り拒否された。さっきマッサージサロンでは使えたのに。帰宅したらFLASHから著者校FAXあり、一ケ所手を入れて返 送。

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