裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

土曜日

おい、キダタロー!

 田の中勇の声で。朝6時前に目が覚め、所在なさにパソ通など。7時半、改めて起床、朝食スパゲッティ。毎朝やかましかったテレ朝の世界水泳ニュースもやっと今日で終わり。それにしてもピーター・ファンデンホーヘンバントという名前は何とかならないか。実況が可哀想であった。選挙戦終盤で、朝っぱらからドクター中松が“ヒレイ・センキョハ・ドクター・ナカマツ”と、妙にリズミカルに繰り返している。これも多分、彼の発明になる暗示戦法なんだろう。果たしてその効果や如何。

 午前中、ウェブ現代原稿。昨日、四分の一ほどアゲていたのだが、かえってツナギに勢いがなくなった感じがして、ちょっと苦労する。結局、12時になってやっと完成。メールする。それから外出、東急ハンズでコピー用和紙を買って帰る。四十九日が過ぎると香典返しの手続きを始めねばならないのだが、そのお礼状があまりに豪勢な出来なので、ビール券など、それを添えるのが気恥ずかしいものの場合、コピーにするから、ということで母から頼まれたもの。これを90枚ほど作成。昼食はついでに買って来たフライドチキン2ピース。このドタバタ感が案外快感だったりする。

 1時、K子と家を出て羽田まで。電話予約していたチケットを受け取る。JASだが、窓口でK子、レインボーシートにこの便はゲーム設備がついているかと質問、とまどった窓口のお姉さんが奥へ訊きに入った。いい年をしてよくこういう質問が恥ずかしくなく出来るものだと、ちょっと感心する。結局ダメ。

 3時、札幌へ。機内では文春文庫『「四億年の目撃者」シーラカンスを追って』を読む。シーラカンスにまつわる(うちの一行知識掲示板などでも書き込まれている)さまざまな伝説の真偽が全て明らかになる本である。昭和30年代半ばに私の愛読書だった小学館の魚貝図鑑では、“シーラカンサス(ラテメリア・カルムナエ)”と表記されていて、何かオマジナイのようなそれを暗記したものだが、その学名の由来が わかって感慨無量。

 スムーズに乗り継ぎも出来て、5時45分、道庁北門前のからさわ薬局へ。朝の飛行機で来ていたなをき夫妻とも合流。札幌は曇気味で、風があり、肌寒い。すすきのの和食居酒屋へ、母と、三人兄弟夫婦で。ビル2階なのだが、そこに上がるのに違う階段を上がってしまってドタバタ。どうも、母と一緒に行動するとこういう弥次喜多になる傾向が高いような気がするのだが。

 この和食居酒屋は豪貴のお客さんが勤めている店。そのおかげでいろいろサービスしてくれる。なをきの奥さんは結婚当初は魚類は塩ジャケもダメという人だったのだが、最近はガラリと嗜好が変わって、生ウニに大喜びしている。毛ガニ、イカ刺し、じゃがバタなど。じゃがバタに最初からシオカラがついてくるのが結構。話はずみ、なをきがやたら機嫌よく“もう一本飲もう、もう一本飲もう”と酒を追加注文。かなり酔った。帰り、明日のパンがない、というので、母が“あっちに私の知ってるパン屋さんがある”と、みんなを先導してすすきのを歩く。なをきに“きっと無くなっていると思う”と話していたら、案の定で、“あら、ないわ。おかしいわねえ”と、そこらをウロウロする羽目になる。やはり、弥次喜多になる。

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