裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

日曜日

新造人間国宝柳家キャシャーン

 境界線のダジャレシリーズ。昨晩も寝苦しさ散々。酒の酔いでやたら喉が乾き、三時ころノソノソ起き出して台所で飲んだコカ・コーラのうまかったこと、言語に絶した。明け方、やっと涼しくなり、8時半くらいまでウトウト。最近、トイレ読書で宮崎市定『大唐帝国』(中公文庫)読んでいるのだが、その影響で中国の小国の内乱の夢を見た。起き出して朝食、ヨーグルトと青豆のスープ。K子にはコーンとジャガイモの炒めもの。

 読売新聞朝刊日曜板にモスラの歌のことが載っており、開田夫妻のコメントが。これ、こないだ本多夫人宅で電話インタビューがあった奴か。他にも本紙の方で、全面で大きくゴジラの顔。新作映画の宣伝かと思ったら、公明党の広告だった。まあ、どこがゴジラを宣伝に使おうがそれはかまわないのだが、この広告が『日本を文化芸術大国にしよう』というタイトルで、
「日本が経済大国への道を歩み始めたころ、ゴジラは日本の映画界にデビューしました。その背後には独自の特撮技術やセット美術での工夫を編み出した映画人たちの涙ぐましい努力がありました。それは、やがて世界に誇る映画芸術として、実を結びます。ゴジラは、総合芸術といわれる映画の世界で、日本が生み出した象徴的な存在となりました。やがて日本の経済はバブルの崩壊へ。一方、ゴジラは世界が認める日本のヒーローへ。日本人が真に誇りにすべきものとは何か? それは経済一辺倒の誇りだけではなく、文化や芸術といった分野の誇りではないでしょうか? そのことをゴジラは教えてくれています」
 などという文章が添えられている。まるで意味不明瞭の悪文である。経済と文化はシーソー関係にあるわけではないだろう。文化を持ち上げるのに経済をクサす必要はどこにもない。

 そもそもがこの文章の内容、事実誤認だらけであって、ゴジラが生まれた昭和29年の日本はまだまだ戦後を引きずっており(『ゴジラ』の中にそれを象徴するセリフがある)、経済こそ順調ではあったものの、当時日本が経済“大国”になる、などと予想したものは誰一人いなかった筈である。昭和35年に池田首相が高度経済成長論を唱え、所得倍増計画を発表したとき、識者はこれを机上の空論扱いしたくらいだ。真に日本が高度経済成長のピークを迎え、経済大国の末席に座れるようになったのは『キングコング対ゴジラ』の公開された昭和37年あたりからだろうが、すでにその第一作から、ゴジラは海外で日本が生んだ傑作怪獣映画との扱いをうけており、別に日本のバブル崩壊を待つことなどなかった(大体においてバブル崩壊が高度経済成長からの流れとすること自体に無理がある。東宝がゴジラ映画をどんどん大型化させていけたのは高度経済成長で映画業界の活気があったからだし、今回の新作を最後にゴジラを投げ出すことを決定したのも、不況による経営悪化が原因ではないか。会社経営が傾けば文化も芸術もあったものではないのだ)。日本が真の文化大国になるためには、まず、こういうどうしようもないクソ文を新聞紙上から追放するところから始めなくてはいけないと思う。
「この考えには各分野で活躍されている方々からの多数の賛同をいただきました。ゴジラもそのひとりでした」
 というのには笑う。東宝はこういう使われ方をされることを認めているのかね?

 母から電話。土地の処分について少し話す。会計事務所がかなりがんばってくれているらしいので一安心。鶴岡から電話。ジオポリスのライブの件。フィギュア王のイラストのみK子に指示。雑用すませ、まだ寝が足りないので昼寝。ネジが曲って入ったような、いやな熟睡をしてしまう。夢をまた見るが、芝崎くんが初めて夢の中に出てきた。東京のえらい郊外の街に行く夢。夢の中に出てくる未知の街というのは、どれもこれもどこか生活やつれの見えるような、嫌な雰囲気を持っている。

 1時過ぎ、ハローミュージックA氏からの電話で目を覚ます。明日のジオポリスの待ち合わせについて。渋谷駅前に行き、回転寿司で昼食。渋谷系というのがオシャレの代名詞だというのはもう通用しないのではないかと思う。センター街歩いている若いのは水商売にも売れないような低レベルのケバ女と、脳波が流れてないんじゃないかと思えるアホ面のアンちゃんばかり。地下鉄銀座線で青山まで行き、買い物少し。

 仕事しようとしても時間が半チクで手につかず、だらだらとネット散策など。4時になり、東急ハンズ前のたこやき坂(この名称も、今月末に京たこ全面撤退で消えることになる)のルノアール地下会議室に行く。と学会運営委員会。事務をこれまで勤めてくれていたYくんの勇退により、芝崎くんに事務業務引き継ぎの件。Yくん、芝崎くんの他に唐沢、皆神、植木、藤倉、眠田、志水の各運営委員、初代事務局長のK氏、それから芝崎くんに事務局用ノートパソコンを提供してくれるエンターブレインNくんの10名。

 現在までの会計状況報告、運営資金の確認、登録会員状況報告。続いて引き継ぎ事項の確認、会計・会員名簿の整備・報告の義務化の件。夏コミ用会誌制作の件(これがともかくも急務。とりあえず私が名義上編集人となって刊行)その他ML作成、例会の定期化及び会場費徴集、事務局運営謝礼などの件を討議。と学会も来年で発足十周年であるが、これまで運営についてここまで具体的な会合を持ったことがない。要するに、いいかげんにやってきたということ。そのいいかげんなところがまた、実にノンビリしていてよかったのであるが、マスコミ等におけると学会の名称の拡大などに鑑みて、さすがに少しはきっちりとした事務の引き締めが必要であろう。

 そのあと、本業で忙しいYくんが抜けて、残りメンバープラスK子で、パルコ上のタイすき屋でタイしゃぶ。UFO業界の現状、ネット有名人たちの噂、幽霊会員たちの消息、出版業界の景気などなどなど、さんざいろんな話が出る。シンハビールをおかわりおかわりしていたら店に在庫が切れた。ここでタイしゃぶは何度か食べたことがあるが、やはりこれだけの人数で具をどんどん追加するとダシが濃厚になり、美味となることを発見。

 帰ったのが9時ころ、まだ時間も早いしあとひと仕事、と思って、ちょっと酔いを覚まそうと横になったら、そのまま朝までグーと寝てしまう。まあ、夜になってやや涼しくなり、寝やすくなったということもある。いささか呆れるが、健康にはよろし からん。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa