裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

月曜日

パイパンジャイアント

 お毛がなくっておめでたい。朝6時に起きて、夕刊フジ原稿書き上げ、メール。原稿の出来はまあ満足できるものだが、今日入院だというのにいろいろやらねばならぬことが残っていて、イラつく。朝食7時半、ベーグルサンド、リンゴ。

 光文社Hさんから電話。なんと、4月イッピに週刊宝石に移動だとか。うーん、先任のAさんはじめ、担当がどうも職務をマットウできない、呪われた本だな、『少年探偵の逆襲』。

 12時半に家を出て、東京医大病院へ。1時、外科西病棟に入院。前回のように個室に入ろうと思ったのだが、抜釘(バッテイ、と読む)のような簡単な手術では個室は取れないそうで、4人部屋。ただし、現在入っているのは私含め3人。担当看護婦さんがメガネかけたこうるさそうなオバちゃんなのに少々ビビる。隣のベッドのおじさんが、体温計をどっかにやっちゃったというので叱られていた。

 オソルオソルという感じで今日の外泊をお願いすると、ドクターにきいてみるので少し待ってください、ただし3時半から、というのは早すぎるので何にしても無理です、とのこと。早く帰って残った原稿とか片付けてしまいたかったのだが。

 で、ドクターを待つが、これが待てど暮らせど来ない。今夜用意しようと思って本も何にも持って来てなかったので、何もやることがないまま、ただベッドの上でツクネンと待つ。退屈まぎれのときというのはあまり有用なことをやる気にならないもので、山号寺号などを考えて時間つぶす。碇さんシンジ、兜さん甲児。ジローさんチェインジ。アントラーさんバラージ(怪獣にさんづけもどうか)。メリーさん羊、審判さんジャッジ。マッカーシーさんレッドパージ。エトナ山神の啓示。希塩酸便所そうじ、AV男優さん疑似。妖精さんファンタジー、おじいさんノスタルジー。お嬢さんもじもじ(今どき)、昭雄さん実相寺。どうもロクなのができない。伊藤さん唐沢さん民事、てのもあるな。別の看護婦さんが入院予定を教えてくれたが、1日だと聞いていた手術が30日になったという。どうもここの病院、ヨコもタテも連絡が悪い。以前もドクターの指定した来院日と、予定票に書いてあった来院日がまったく違っていたことがあった。

 4時半ころ、やっとドクター来て、検査とかがあるので出来れば帰るな、という。今日の外泊は入院日が決まったときからお願いしてあったんですが、と言うと、しぶしぶ許可くれて、ただし明日の朝は6時に帰ってきなさい、と言う。出てしまえばどうでもいいから、ハイハイと言って許可もらった。これから出る、というときにさっきのメガネの看護婦さん、“先生は6時とか言ってましたけど、検査は9時からですから、8時ころ帰ってくればいいです”と、許可証を書き直してくれる。案外親切。

 家にとってかえして用意して、なかの芸能小劇場へ向かう。出掛けに、用意したはずの道具が見えなくなったりして、時間食い、到着がほとんど開場ギリギリ。とはいえ、出演者は山咲トオルはじめひえださんもちゃんと到着、客もほぼ8割の入りでまずまず。やれやれ。K子は楽屋で仕事やり、山咲トオルと志加吾の二人に消しゴムをかけさせるという女王サマぶりを発揮していた。お客に声優の田中信夫さんが来ていたのは驚いた。談之助と昔、仕事したんだそうだ。

 前半の落語は談之助の赤尾敏物語フルバージョンが何といっても圧巻。たいていの落語会では、客が談之助のキャラに慣れるまで時間がかかるのだが、こういう会では最初からバリバリに観客と演じ手の間にレポールがかかっている。志加吾が楽屋で聞きながら、“神懸かってますね”と評していた。

 後半、私のトークは佐川一政物語。受けは十分だが、話の流れがイマイチで自己採点65点くらい。山咲トオルの使い方をもう少し考慮すべきだった。ひえださん、急遽上がってもらった睦月さんはもう文句ナシ。アガったあと、NHKのYくんにトオルちゃんを紹介。

 二次会はまず、例により“俺んち”で。しん平と開田夫婦は次回の“怪獣寄席”について打ち合わせしている。客で来てくれた快楽亭は、私が話した佐川さんの小説、“ガイジンハウス”を落語にしたいと言っていた。

 それから3次会、焼き肉屋で。もう明日は禁食なので、最後の晩餐とばかりに、真露を飲みまくり、豚足を食いまくった。何時に帰ったか覚えていない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa