裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

木曜日

秘密戦隊サリンジャー

 機関車仮面でつかまえて。ゆうべ就寝時に百草胃腸薬をのむのを忘れていたら、やはり朝、胃腸の具合悪し。7時半近く起床。パン切らし、K子にホットケーキ焼く。私はサラダスパにタラコをまぶしたもの。ワイドショーで涙ながらに少年法の不当を訴えていた光市の母子殺人事件の被害者の夫、言いたいことはわかるが、どうもウサンに見えてしまうのは、あのなめらかすぎる弁舌であろう。演劇に見える。こういうときはトツトツとしゃべって自分の悲劇性を強調する、という演出をしなくてはならない。

 午前中は体の不調で仕事すすまず。ただし雑用々々で忙しい。イーストプレスに提出する企画書など書く。昼、銀行で家賃降ろす。まったく、このマンションの家賃は高い。K子が自分のコーナーで私の貯金のなさを嘆いているが、その原因は古本と家賃である(まあ、もといた参宮橋の億ションに比べれば安いけど)。とはいえ、都心に住むという足のよさと、古本という情報源がなければ収入がそもそも今のように入 りはしないから、やはり貯金はできない。ジレンマか?

 六本木に出る。ソバ屋でせいろ食ったあと、書店三軒ほど回って、1万2000円ほど貧乏になる。立ち読みした週刊新潮に裏っぽい記事がいろいろ掲載されていた。機関車トーマスの作者(60)の愛人が全裸の溺死体で発見され、しかもそれが性転換した元男性だったという話など、なかなか裏ヨミが出来ていい味出している。さいとう・たかをの記事で、氏が劇画という名称の命名者、としているのは(これは見出しで、本文中では“僕ら”と、複数形にしてあるが)、実際の命名者である辰巳ヨシヒロ氏の名誉を奪うものではないかと思うのだが。

 仕事関係のFAX、電話、メール多数。無視して読書しばし。リチャード・ザックス『闇の世界への招待状〜封印された下品で残酷で悪趣味な教科書〜』の前書きは、そっくり私の“裏モノ会議室”の開幕言にしてもいいほどではないか。
「歴史とは、本来ぐちゃぐちゃなものだ。過去とは、教室の時計の、カチカチという心を落ち着かせてくれる音のように、論理的に説明できるものではない。また戦争から戦争へ、年代から年代へと、すんなりと流れていくものでもないのだ。読者の皆さんには、混乱や、不埒な驚きを存分に楽しんでもらえたらと思う」
 われわれは少し、年表的にものをとらえすぎる。これまで縄文式土器を使っていた人間がある日を境に弥生式土器に全てモデルチェンジするわけはない。人の思想も思考も、また同じ。

 夜半に入り、雨、ザザーッと降り出す。風も吹いてすごい音。もっとも、これはうちのマンションがいま、足場組んで幕で包まれているから増幅されているのかもしれぬ。そうか、体の不調はこれが原因だったか。夕食の準備。キンキのオイスターソース蒸し、豚肉と豆腐・油揚げの煮物、ホタテ焼き飯。焼き飯はいしる味であっさりと仕上げる。ビデオで映画版『忍者部隊月光』。メンバーの名前、月光とか水月とか月影とか、全部月にちなんでいる。しかも、オリジナルメンバーの他に国際警察から補充されたメンバーまで流月などと月にちなんだ名前である。いったいどれくらいいるのか、K子と他のメンバーの名前を考えてみる。月曜、臨月、月経、お月見、月末、月賦、今月、来月、さ来月。風月ならゴーフル、睦月なら変態(笑)。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa