裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

1日

水曜日

ZOIDそこゆく車屋さん

 タイトルはオタクな美空ひばり。朝、コーンスープ、バナナ。午前中かけてメンズプライスマガジン原稿十一枚。引用が多かったので比較的楽だった。あくまで比較的ではあるが。

 K子に弁当作り。オカズは豚肉の立田揚げ。昼に自分もこれで食べようと作り置きしておいたら、猫が食ってしまった。めったに人の食い物に手を出さない猫なのだが 乾きエサとカンヅメに飽きたか?

 仕方なく外に出る。チャーリーハウスで定食。鶏肉と洋ネギ、セロリの味噌炒め。こないだ『ウィークエンドジョイ』に出ていたクロナスのボーカルがいた。パルコに行き、記事に使うため雑誌を二十誌ほど買い込む。思い紙袋をエンヤラヤと下げて、1時『時間割』でインタビュー。マーケティング・リサーチ会社の有識者(笑)インタビューというやつで、2010年、生活者をとりまく環境の変化予測レポートというのを作るのに私の意見を参考にしたいとのこと。アイデンティティ問題に関して、女性インタビュアー二人相手に、オタク的ライフスタイルの一般化と、非オタク層のオタクとのつきあい方について、1時間半ほど述べる。どれくらい理解されたか知らないが、少なくとも時折感嘆の声はあげていた。その場でインタビュー代金を手渡しでくれる。時間で割るとかなり高額のギャランティである。

 帰って仕事。光文社、早川書房、どちらも尻に火がついている。『創』から電話。学陽書房に連載原稿渡す件、まだモメそう。忙しいさなかのトラブルなので、神経痛んで泣けてきそうになる。どちらかにこうなったら書きおろして一冊分、渡した方が早いか、とも思う。NHKのYくん、BOOKTVのIくんからも電話。出演依頼。了承するが、まだどちらにも間がある。

 夕刊フジから電話。『土曜トーク』原稿依頼。最近、社会時評系のお仕事がホントに多いなあ。サブカル系の目からの論評が欲しいのだが、書ける人間が少ないということだろう。私ゃ本質的には紅旗征戎わが事にあらず、と文人生活を決め込む方が似合っている男だと思っているのだが、世間はそう見てくれない。売文している限り、自分の掲げた看板でなく、ユーザーがおっかぶせたイメージに合わせるのが宿命というもの。それに逆らった人間でかつて成功したものはない。

 世界文化社から電話、ナンバーフェチ原稿、今夜じゅうに・・・・・・とのこと。ここもギリチョンにならぬと連絡してこない。頭に血をのぼせながら三枚半、四○分で書きあげる。イラストのDちゃんが無理の効く人でないため、あまり遅らせるわけにはいかない。

 まだ書かねばならない原稿残っている(と、言うよりほとんど書いてない)のだがエネルギーがそこで完全に切れる。厄年の人間をこんなコキ使っていてはいけませんですて。買い物に出て、料理。吾妻ひでおの“ああ、タコ焼きはいい! ギャグ入っていなくてもタコさえ入っていればいいんだ!”というセリフがここまで身に染みるとは思わなかった。

 9時、夕食。タコとタケノコの煮物、餡かけ豆腐、豚バラと京菜の水炊き風。ビデオで中川信夫『憲兵と幽霊』(ビデオタイトルは『憲兵銃殺』。なんで変える?)。天知茂の憲兵の極悪冷血ぶりがほれぼれするほど。二十年前に池袋文芸座のオールナイトで観たとき、なをきが“コンナ悪イ奴見たコトナイ、というのはこの主人公のための言葉だ”と言ってたなあ。万里昌代のワキ毛がなんともどうも。K子は後半の、天知が追い詰められるシーンは見たくない、と寝てしまった(笑)。

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