裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

19日

月曜日

ふはっ!弾

「B29の置き土産が今ごろ? ふはっ!」(府中住人のメガネデッパ男)

※DVDデラックス原稿 阿佐ケ谷ロフト『コント考現学第1回』

朝、珍しく記憶に残るような夢も見ず起床。
寝汗はなはだし。
体力かなり落ちているか、という感じ。
普通、“夢は五臓の疲れ”で、体調よくないときに
夢を見るというが、私にとり夢は体調良好のサインぽい。

朝食、9時。
ブドー、種だらけオレンジ。
カブのスープ。
日記つけ、いろいろ仕事。

グリーンピースジャパンが告発した鯨肉の横領は事実無根と
告発された共同船舶が報告とのニュース。
詳しい論評は『社会派くん』の方に譲るが、
以前、ここ(GPJ)の代表の本を出した出版社に聞いた話では、
その時期にこの出版社が出した本の中で、壊滅的に
売れなかった本のトップがその代表の著作(もちろん反捕鯨関係)
だったそうだ。

この話を別の出版社の人としたとき、
「鯨食文化を守れって本なら売れるんですかね」
と訊く(ならば書かないでもない、てな含みで)と、
「いえ、売れるのは反・反捕鯨の本なんですよ」
とのことだった。今の日本人は別に鯨に餓えているわけではない
(冷凍鯨肉が有り余っている、という事実がそれを証明している)。
日本人が反捕鯨に反対しているのは、ひとえにそれが欧米からの
押し付けであるからであって、それが、国家としての永い低迷に
不満を蓄積している日本人の、非常にわかりやすい憤懣のハケ口で
あるから、に過ぎないのではないか。

そういうことに利用されて、殺せ殺せと騒がれている鯨が
ちょっと哀れではある。外国に何と言われようと、鯨肉は美味い。
美味いから捕って食う。その意識がないと始まらない。
「日本固有の鯨食文化を守れ」
と言うならまず、声高に米豪のワルクチを言うよりも、
黙々と鯨を食うべきである。毎日の食卓に鯨を上すべきなのである。

DVDデラックス原稿。
しかし昭和30年代の社会風俗ってのは面白いな。
6枚、弁当(アスパラとイカの掻き揚げ弁当。アスパラは北海道から
送られたもの。一瞬で食い尽くした)挟んでアゲ。
K子と編集Kくんに送る。

それから家で今日、ロフトAで使うビデオを探し、
自宅を出て渋谷事務所へ。
バス乗り継ぎで。車中、メディファクS氏から、
河井さんのゲラ確認と写真撮影の確認。
事務所に某図書館から、聴覚障害者のために、朗読テープ作成の
許可をお願いしたいという葉書。こういうのはよく来るのだが、
今回許可申請が来たのは珍しく著作とかではなく、朝日新聞に
掲載された芦辺拓さんの『裁判員法廷』の書評。
こういうのも最近の図書館はテープで聞けるのか。

その朝日新聞書評、今回掲載のもの、文字組みの関係で1行オーバー、
ちょっと使用する言葉を変えて字数を削減、削減しただけでは面白く
ないので、表現をホンの少し過激にする。
担当NさんへFAX。

荷物届き、見てみるとWHDジャパンから、ベラ・ルゴシ
『ファントム・クリープス/ゾルカ博士の野望』をはじめと
する、B級怪奇映画DVD数セットが送られきてていた。
どこかで取り上げてくれということだろうが、
いやあ、嬉しい!
このDVD発売のニュースは知っていたのだが、
十五年くらい前にアメリカで原語版のビデオを買って持ってるんで、
どうしようかなア、と考えていたところだったのである。

6時、事務所を出て、新宿から中央線で阿佐ケ谷。
あぁルナティックシアタープレゼンツ『コント考現学 VOL.1
ルナティック流コントの作り方講座 』
にゲスト出演。すでにみんな、最終稽古。
全員、黒のあぁルナTシャツに統一された衣装も結構。
山口A二郎監督とちょっとトンデモ本大賞について話す。

ハッシーとざっと打ち合わせ。集客がどうか、第一回で告知なども
まだ十分でない中、かなり神経質になっていた模様。
実際、開場と同時にゲストの藤田由美子ちゃんの友人らしい
一団が入ってきはしたが、その後パラ、パラで、台風の影響も
あってやや寂しい入りになるかな、と私も心配していた。
……ところが。
三々五々、という言葉があるが、パラ、パラ入ってくるのが
繰り返され、次第にその間隔が狭まり、どんどん、になって
来て……この段階で楽屋にいるハッシーに急いで報せに言ったが、
最終的にはテーブル席、壁際席とも、座席全てが埋まるという
大盛況になった。オタクアミーゴスのときより入ってたんじゃ
ないか? 壁際席に山口さんと座っていたが、
追い出される形で、オノ、マド、三才のT田くん、そらから
麻衣夢ちゃんのいる辺りに席を移す。
麻衣夢ちゃんからは新譜『Jewel』のサンプル盤を
もらう。おお、なかなかいいジャケ。

やはり気になるのだろう、楽屋からテリーやNC、菊ちゃんなど
ひっきりなしに出てきては客席の様子をのぞきに来て、
場内の密度を確認していた。
こうなると出演メンバーも張りきる。
山口監督の作った凝ったオープニングDVDで始まり、
コント数連発、いずれもキレがよくていい出来。
乾ちゃんと岡っちの生き生きぶりがちょっと驚きだった。
二人に琴重ちゃんが加わった『おままごと』、
それからもやしのハマり具合が凄い『死体刑事』など、いやいや。

それから私とハッシーのコント講義、
「コントの基本は“裏切り”である」
という定義から初めて、実例をいろいろ。
で、まさにその裏切りの代表である
「キャストとストーリィの裏切り」
をやってみせる『天体観測部』コント、これに爆笑。

休息を挟んで、次にビデオを使ってのコント講義。
それからさらにコント実演、壇上にお客を上げて、即興で
コントをやらせてしまうという試みだったが、お客もこういうときは
ノってくれて、予想以上の完成度。
さらにメンバー全員順列組み合わせのようにまたコント実演数本。
樋口ちゃんの一人芸で笑わせる『外人パブアルバイト』、
『女子高校合唱部』というネタで女性団員と、ゲストの古舘プロダクト
の藤田由美子ちゃん、鈴木希依子ちゃん加えて七人が壇上に
並ぶと、阿佐ケ谷ロフトの壇上では端から端までが女性になる。
「こんなに多かったっけ?」
とオノと話す。

最後は『メメロン星人の襲撃』。エロっぽいネタもエロにならず
スラップスティックに昇華されちゃうのがここの凄いとこ。
いや、団員たち、ゲストが公演以上に(と、言ってはいけないが)
生き生きしていた感じがして、楽しかった!
構成もほぼ、第一回で完成してしまった感じ。
これは映像企画としても売れるな。
店長の児玉さんにもお礼。こないだは撮影場所にこの店を
無理言って貸してもらっただけに、今回の成功で恩が返せた。

終わって乾杯、お客さんたちも多く居残って話に加わってくれたのも
今日のライブが楽しかったからだろう。
テリー曰く、ここのステージは最初思っていたよりずっとやり
やすいし、お客さんとの距離感も最高、とのこと。
「若い頃、新宿西口のロフトに通いまくってたんで、場所こそ
違ってもロフトのステージに立てるのが嬉しいですよ!」
と。そう、作った人が同じだから内装のコンセプトとかもどこか
似通っているからなあ。

乾ちゃんに大賞のときのちょっとした役を依頼。
菊ちゃんには衣装のことで。
麻衣夢ちゃんには例の件、日付確認。
好きな仲間といろいろ次から次へ企画をやっていく
くらい楽しいことはない。
これが私のモチベーション。

オナカが空いた、というメンバー(オノマド、山口さん、
T田くん、しら〜、麻衣夢ちゃんと阿佐ケ谷飲み屋街『じげもん』
へ行く。後でもやしが合流、それから明日5時半土ワイ撮影という
(9時に延びたそうだが)ハッシーも顔出しに来て、
ワイワイやりながら。ハッシー、第一回大成功で飲みたい
ところだろうが、
「一度、酒でテレビの現場をしくじったことがあるので」
とウーロン茶にしているのは殊勝なり。
山口監督、じゅんじゅんが“説明なしにブス役というのは
納得いかない、彼女可愛いじゃないですか!”とハッシーに苦情を
言う。じゅんじゅんはPマンスタッフに親和力強いなあ。

定期ライブというのは地道だがかなり効果がある方法である。
阿佐ケ谷ロフトというホームを持てたことはルナにとって大きい。
それにしても、とハッシーと話す。
縁というのは異なもので、もともとハッシーにロフトAを
紹介したのは、ある企画を阿佐ケ谷Aを使ってやろう、という
某人のアイデアからだった。それが某人側の都合でNGになり、
しかしその日を空白にするのも迷惑を店にかけるから、と
いう理由で強行したのである。そこから、店長の児玉さんと
話がつき、天沼住まいのハッシーにここをホームグラウンドに
しませんか、という話が来たのである。
最初ダメダメだったことがいい形に結実する。
ものごとはこれだから面白い。

12時過ぎまで、電車組が逐次帰る中、オノマド、もやしに
送られてタクシーの押し込まれ、台風接近の雨の中、
帰宅。傘持って出ずにほとんど濡れなかったのは奇跡。
しかし明日、屋外撮影この天候でハッシーは大丈夫か?

Copyright 2006 Shunichi Karasawa