7日
水曜日
本宮、さらば与えられん
「わいは漫画家になったるんじゃァ〜ッ」(本宮ひろ志・談)
※『創』対談 単行本原稿 朝日書評委員会
しかしいろんな夢を見るものである。
下町にある家。
一階が材木屋か何かで、二階が住居になっている。
私はその家の長男坊で大学生、なをきもちゃんといる。
その家の爺さんというのが桂文楽(先代)である。
材木屋のハッピを着て二階に上がってきて、
「おい俊一、先生どこィ行きなすったかしらねえか」
という。
「しらねエよ。どうしたの?」
「いやな、実はさっき先生がいらしッてな、財布をすられたと
こうおっしゃるんだ。お孫さんの学費がへえってるってンだがな」
「財布を? ひでえことしやがる」
「下で話を聞いてたンだが、ちっとばかし用をしているあいだに
姿が見えなくなりなすッてな」
先生というのは私の一家がみんなお世話になっている
元・教師の老人である。
「心配だな。じゃ、オレ、自転車でひとっ走り、近所見つくるわ」
「お、そうしつくンな」
私はなをきの部屋をのぞいて、
「おゥ、おめえの自転車、ちょっと借りるぜ」
と言って、外に出る。
先生のモデルは、私が大学時代通っていた、カウンターだけの
小さな定食屋(外食券食堂の名残か)の常連だった、
“先生”と呼ばれていた和服姿の老人だろう。
家族もいるのに何故かこの食堂が好きで通っているようで、
サンマ定食などを楽しそうに食べていた。
片足が義足だった。ときどき、この義足の付け根が痛んで
帰れなくなり、店の者が家族に電話して迎えに来させていたっけ。
朝8時起床、入浴して、朝食。
リンゴとキウイ。キウイの酸っぱいこと。
それとスープ。
今日は『創』の対談が10時半から荻窪で。
10時半というのを10時と間違えて早めに出てしまう。
地下鉄丸ノ内線。
荻窪は老人の多い街だが、ルミネの中、時間もあるのか
ほとんどがオバアチャンばかり。
ルミネ4階のマウカメドウズなるハワイ風な喫茶店。
これも早めに来た構成担当のBとちょっと話す。
かなり笑える話。
遅れて(いや、遅れてないので私たちが早すぎたのだ)
岡田さん来る。
某美少女のことをBがトイレ行っている間にヒソヒソと。
対談に入ってからはワーク・ライフ・バランスのことについて。
すでにこの対談は中高年の生活設計の対談になっていて
オタクばなしじゃないな。
しかし、三人が三人とも
「今日の話は面白いですねえ!」
と言ったほど盛り上がった。読者はどう思うかしらないが。
その後、ちょっとワルダクミの話。
終わって、5階の喫茶店カフェ・ペトロで少し時間つぶし、
オノと合流。
5階はレストラン街なので、焼き鳥屋『燦鶏』で特性の
うな重ランチを食べながら、各方面にお礼状など。
あと、偶然話題がさっきと同じ笑える話になった。
別れて、自宅に戻り、原稿。
某所で映画を観るはずだったがあきらめてひたすら。
まずは対談原稿に手を入れたもの、2時半までに終わって
メール。それから次の原稿にかかり、3分の2まで完成した
あたりで、K子に、掃除をするから早く家を出ろと言われて
詮方なく中断。
丸ノ内線で新宿、西口に出て、京王プラザホテル下の
入口から大江戸線。築地市場前。
朝日新聞書評委員会。
なんと一番乗りだった。
今日は別に目玉としてねらっていたものもなく、
二、三冊かなと思っていたが、実際手にとってみると
読んでみたくなるようなもの多く、他の先生たちも同様
だったと見えて、ほとんどの本が数名でのセリ合戦だった。
同点で重なったもので譲ってくださったものもあり、
結果、9冊もの本を持ち帰ることになる。
上下二冊のものもあり、読み通すのが大変だな、これは。
終わって、アラスカで懇親如例。
担当Nさんと次の本、相談。
あと、パクチーハウスぜひ行きましょうと話す。
ハイヤーで新中野まで。
メールいろいろ。
なぜかK子のところに届いたらしい、オンデマンドの注文本
『赤塚不二夫漫画大全集 1960年代 その2』を読む。
なんでこれを注文したかというと、
赤塚不二夫・藤子不二雄・つのだじろうの合作、
『ギャハハ三銃士』(昭和41年『少年サンデー』正月増刊号所収)
が収録されていると聞いたから。
いやあ、まさか生きてこの作品に再開できるとは。
当時サンデーに連載されていた
おそ松くん、オバQ、ブラック団のキャラクターが共演して
西遊記のパロディ(デカパンが三蔵、チビ太が悟空、オバQが
八戒で『ブラック団』のタローが沙悟浄的な役割)を繰り広げる。
西遊記というより、赤塚がリーダーシップをとって、自作の
『そんごくん』の世界の中に他のキャラクターを出演させたという
感じか。いかにも正月のおあそびという感じの、ぜいたくな
バラエティーである。
版権とかがうるさい昨今、この作品が単行本に収録されることは
まず、あるまいと思っていたので、感激であった。
ドロンパ仙人とかオタフク風の神とかというキャラクター、
馬とカメとゴジラの組み合わせのバカメラという怪獣、
「しょくんのオツムはドテカボチャざんす!」
というセリフ等々、全部憶えていたのに驚愕。
読み込んでいたんだなあ。つのだ氏だけ、ちょっと浮いているのも
あの当時から感じていた。
今読むとギャグとかのヌルいことヌルいこと。
合作だからなおのこと、そこが目立つのだが、
これが昭和の少年マンガのギャグなんだよなあ。
この大人気漫画三本が合体するってだけで事件だった。
何かくたびれて、焼酎2杯だけ飲んで、1時にベッドへ。
大きな地震あったそうだがまったく気づかず。