16日
金曜日
ハニカミオージー
オーストラリア人なのに繊細なのねえ。
※朝日新聞書評 鼎談原稿
毎朝楽しみなのが夢の記録。
読む方は退屈きわまりないと思うが、まあ読み飛ばしてください。
今日の夢の舞台は下北沢にある小さな劇場と、地下通路で
つながっている古い喫茶店。昔は倉庫だったところを改装したらしく、
床じゅうにマットレスを敷き詰めた上に黒い布をかけて、
どこにでも座ったり寝転がったり出来るようになっている。
地方在住の役者がつながっている劇場で芝居をするときは
寝泊まりの場所にも使用されているらしく、関西から来た
中年の芸人三人が宿代わりに雑魚寝していた。
ここのマットレスが実に柔らかくて寝心地がよく、
私も寝転がっていると、猫のような動物がじゃれついてくる。
見てみると驚いたことに子グマで、ぬいぐるみのように
可愛いが、鼻が大きく、ブー、と鳴くたびに鼻水が細かい水滴
になって飛び散る。ハナグマっていうやつだな、とぼんやり思う。
これを連れてきたのが向川圭介で、西部劇のような格好だが、
今度舞台でガンマンの役をやる稽古だ、と言う。
地下通路を歩いて劇場に向いながら、圭介、コルクを発射する
小道具の銃を撃ってみせるが、壁にはねかえって圭介自身に
当たって、イタタタ、と叫ぶ。
……夢はここまでだったが、目が覚めると6時ジャスト。
まだゆっくりできるな、と思い、さっきの夢に出てきた場所が
面白かったので、続きを見ようと思いまたまどろむと、
案の定、続編(?)が見られた。
今度は私もその舞台に関係しており、毎日、喫茶店から地下通路を
通って通うが、その通路が、日が変わるごとにせまくなっていき、
這いつくばらないと通れない感じになる。
「この分だと千秋楽にはつっかえて出られなくなってしまうんじゃ
ないか?」
と心配になる、という内容。
劇場のロビーはまるで風呂屋の脱衣所みたいに、牛乳売りの
冷蔵庫があったり。
朝8時起床。
外は好天。ずっとこういう日であれば原稿も進むのだが。
9時、朝食。ブドー7〜8粒、タンカン半個。
このタンカン、味は素晴らしいが、以前仙台のファンから
送られたものと違いタネが極めて多い。
タネごと皮ごと食べろ、というのが今の自然食派の主張なんだろう
けれど。
新聞に女優・関弘子さん死去の報。78歳。
きつい目の持ち主だったせいか、テレビドラマで意地の悪い姑役とか
主人公をいびるいかず後家役とかを持ち役にしており、
うまいなあ、と思いながらも
「生活のためとはいえ、こんな役ばかりじゃつまらないだろうな」
と思っていた。本業はあくまでも舞台の人で、テレビ出演は公演費用
を稼ぐためのアルバイトだったのだろう。
それが1984年、伊丹十三の『お葬式』で、主人公の山崎努が
自分の家のお葬式の参考に見る“お葬式のやり方”のビデオの
中(だけ)に出てくる冠婚葬祭の先生役(モデルは塩月弥栄子か)で
強烈な印象を残し、その後伊丹映画の常連となり、また『魔女の
宅急便』のバーサ以来、宮崎駿アニメの声優としても活躍した。
舞台役者独特のアクの強さを、ビデオの中に出すことで活かした
伊丹監督のキャスティングの見事さは今でも感心している。
舞台役者の訃報もう一人、俳優の三上直也氏死去。73歳。
ちょっと西手新九郎の存在を感じたのは、おとつい、ビデオで
資料に司馬遼太郎の『関ヶ原』を見たからで、この豪華な大作の、
方言指導という地味な役をやっていたのが三上直也だったのだ。
愛知県出身だから、宇野重吉の秀吉や杉村春子の北政所に名古屋弁の
指導をしたんだろう。東宝現代劇の第一期生。この人も舞台中心の人で
『屋根の上のヴァイオリン弾き』『そして誰もいなくなった』が
代表作らしいが、私個人としては、もう三十年近く前、1979年に、
中野サンプラザの記念企画として上演された『ロックオペラ・
ハムレット』(小田島雄志・演出)が強烈に記憶に残っている。
記憶に残っているのは、舞台が優れていたから、というわけでは
残念ながらなくて、某女流作家の脚本が力不足で(「♪尼寺へ、尼寺へ、
ゴーゴーゴーゴーゴーアウェイ」という歌詞に会場から失笑が
わいた)どうにもしまらない舞台だった(再演のときに脚本家だけ
差し替えられた。こういうのも珍しいのではないか)。
しかしキャストはなかなか豪華で、ハムレットが桑名正博、
オフィーリアが岩崎宏美、クローディアスに上條恒彦、
ガートルードが金井克子、レアティーズが尾藤イサオ。
そして、ホレイショー役がこの三上直也だったのだ。
ロックオペラだから、桑名などは現代劇そのままのセリフ回しで
やっていたが、三上直也のホレイショーはまさにシェイクスピア劇
そのままのホレイショーで折り目正しく演じている、と思ったら
何と、ラスト、ハムレットの死を嘆くシーンで桑名正博と唇を
重ねたのに驚いた。これはやはり脚本家(後にBL系のブームを
作る)の趣味だったのか。
ところで、こういう商業演劇のパンフレットには、
配役紹介のところに、俳優の友人や関係者がその俳優の紹介文を
書くのが常なのだが、『屋根の上の〜』の共演の縁か、
三上直也の紹介文を森繁久彌(『関ヶ原』の家康)が書いていて
(記憶で記すが)、
「長いつきあいであることに改めて気づいて驚いた。改めて気づく
ということは、あまり記憶に残っていないということである。
こんなにいいものを持っている俳優なのに地味なのはなぜなのか。
この大役を機に、大きく飛躍してもらいたい」
と言う、森繁らしい、皮肉だが温かみに満ちた文章を書いていた。
しかしながら、人間性によるものなのか、最後まで地味だったなあ。
今日は一日中原稿書き。
まずは朝日新聞書評、今回は500字。
かなり字数ぴったりに書いたが、ホンの数文字の添削に
ちょっと手間取る。
それから弁当(ヅケマグロとあなごのちらし寿司。シソが香り高い)
はさんで、すぐこないだの杉ちゃん&鉄平との鼎談のテープ起こし
にかかる。テープ起こしといっても、話したことをそのまま文章に
するのではなく、ライナーノーツ替わりにする目的なので、資料的
なデータや解説を折り込んで、しかも自然な会話になるよう
再構成しなくてはならない。
事務所にも出ず、ひたすら鼎談構成原稿。
日記に書くことが無くて困る。
モノカキになってからずっとつけていた日記を中断させたのも、
最初の本(『ようこそカラサワ薬局へ』)の書き下ろし作業だった。
毎日原稿書きばかりで、つけることがないのである。
夢の記述や追悼文が長くなるのはそのせい。
合間にと学会MLなど。
物販のことについて。
みんなが“会場のホワイエに”とか書いていて、
私も普通にホワイエと書いてやりとりしているが、
実はホワイエの正確な定義を知らない。
感覚では、劇場の入口から上演室につながる“通路”が
ホワイエで、そこに椅子とかテーブルとかが置かれていると
そのあたり一帯が“ロビー”になる、という感じだった。
心配になって辞書を引いてみたら
「ホワイエ(Foyer)フランス語でロビーのこと」
と書かれていて、ちょっと拍子抜け。
8時半、やっと完成させて(400字詰め原稿用紙換算30枚)
メール。したあとでラストのまとめ部分を(先に書いて)つけ
忘れていたのと、注釈の番号に間違いがあったことに気がつき、
大急ぎで訂正してまたメール。
9時、サントクに出かける。本日初めてマンションの外に出た。
タイの薄造りとご飯、それにハインツの“ライスdeクッキング・
ガーリックライス”というのを買ってくる。
http://www.heinz.jp/products/product/id/p00124
ご飯と冷凍の鳥肉の細切れをオリーブオイルと酒で炒め、
そこにガーリックライスの素をまぜこんで炒め、
最後に刻んだクレソンを混ぜて出来上がり。
食べてみると、おお、ステーキハウスで食べるガーリックライスの
味がする! 鶏肉なのに。
続いての原稿書き始めるが、体力的にダウンし、明日にしようと
酒(黒ホッピー割り)飲んで、いくつかのサイト読んで寝る。
嬉しいこと書いてくれるじゃありませんか。