裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

30日

火曜日

叩けよさらばアセチレン

 ドアの向こうにはランプがいる。朝7時半起床。朝食、ハーブオムレツ。体調、昨日よりはだいぶよし。『変書目録』寄贈先整理して学陽書房へ。玄関の名札がやっと完成、代金4000円。

 K子に弁当で磯ご飯。自分はパルコの家の小龍飯店でお粥定食。大盛堂書店に寄り三一書房系の本をまとめて買う。東京大学新聞社にゲラ戻し。大幅に改稿しようかと思ったが、手間を考えてあきらめ、字句のみの修正とする。

 なをきに幻冬舎文庫の件で電話、お互い忙しいし名前だって売れているのにのに貧乏だねえ、という話。なをき“俺たちこんなに仕事していてこんなに貧乏なのに、俺たちよりもっと仕事してない連中はどうやって生活しているのかねえ”とかこつ。昔の作家のエッセイなど読むと、著書の数冊も文庫に入れば、後は悠々自適のように思えたものだが、してみると彼らと言えど今の我々と似たようなものなのか。なをきのNHKマンの仕事、さすがNHKで、広告代理店を通すことを知らなかったとか。いい話である。

 3時から徳間文庫の久美沙織『新人賞の獲り方教えます』の解説を書き出す。何かノッてしまい、やたら思い入れが入ってしまう。3時間かけて400字詰め、12枚書き、それを30分かけて縮める。それでも9枚。依頼より1枚オーバー。

 7時、タクシーで幡ヶ谷。チャイナハウス瀧口酒家で飲み(食べ)会。本チャンは8時からだが、その前に朝日新聞社K元氏と手塚本打ち合わせ。新機軸をいろいろ入れる算段があるのだが、まあ、全ては実際の作業に入ってから。マスターの奥さんに“手術以降血行が悪くなって”と言ったら、この店特製のパイチュウをごちそうしてくれた。甘くて強くて、しかもマイルドな複雑な味。血行には絶対の効能だそうだ。

 世界文化社のK田氏、古屋兎丸氏とDちゃん、それから睦月開田夫妻談之助という官能倶楽部の常連。安達Bさんは仕事、Oさんは体調不良で欠席。“あのOさんがこの店のリーメンをあきらめるとはねえ”“もう長いことはないね”などと話す。“よほど食欲がなかったのかねえ”“でも、銀座の画廊のオープニングパーティでコロッケに齧りついてたよ”“リーメン食わずにコロッケ食って死ぬとはねえ”とさんざんな言われよう。これだからこういう集まりに欠席は怖くて出来ない。K子に至っては(OだのBだのDだのK子だのやたら英字が出てくる集まりだな)最後のリーメンのとき、わざわざOさんに電話して“いまリーメン食べてるのぉ! とぉってもおいしい!”と、電話口で食べてみせる。そこまでやるか、普通。

 悪食評論家のK元氏にDちゃんが胎児の食べ方を質問。それで思い出したのが立川談生HP(最近ハマってます)で読んだ話。北海道の牧場主のセリフで、“羊はいいよ〜。かわいいし、おいしいし”それ聞いて談生“やっぱりジンギスカンですか?”“いやいや。生まれたて。出てきたヤツをその場で醤油につけてぺろって。これが最 高!やってごらん”“できるかっ(いろんな意味で)”

 Dちゃん(北海道出身)から札幌の最近のゲイ事情など聞く。こういうことやたら詳しいね、この22歳女子は。料理は気に入ったようで、結構でした。ホタテのトマトソース炒めが夏らしくさっぱりしており、白アスパラもさわやか。例によって紹興酒山ほど、パイチュウはK元、睦月、兎丸各氏も飲み、“こりゃうまい!”と絶賛。みんな仕事疲れで血行が悪くなっているのであろう。雑談多々。それがみな濃いこと濃いこと。田舎の学問より京の昼寝。皆さんに『カラサワ堂変書目録』進呈。肝心のDちゃんの『ファンタスティックサイレント』紹介したビデオは忘れた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa