27日
土曜日
毒蝮カンガルー
アボリジニの婆あ、元気か。朝、8時半にトイレの内装工事(いいかげんなやり方だったので再工事させることにした)が入るというので早めに起きて、朝食。モヤシ とベーコン炒め。風呂にも入らず待っていたのだがいっかな来らず。“交通渋滞に巻き込まれて遅れている”と電話あり。土曜の朝に渋滞ぃ? どうも怪しい。
『創』図版指示をK子に渡す。日記書き。書き忘れたが昨日、時事通信社から電話で山藤章二『似顔絵塾』を書評してくれとのこと。辛口でいい、と珍しく言うので引き受ける。内装、11時半過ぎにやっと入る。
昨日、片平さんに聞いた話。あっちのメーカーの洗濯機を輸入販売するのに、パンフレットを翻訳していたが、“ミレニアムシルバーのボディ”という文句があるので電話して、“このミレニアムシルバーというのはどういう色だ”と訊くと、“見ればわかる、ああいう色だ”という。“なぜミレニアムなんだ”と聞いてもさっぱり要領を得ない。カッコいいからというだけでつけた名前らしい。“ミレニアムでだめならサイバーシルバーと書いておいてくれ”などという。もっとわからない。“どういう特長があるのだ”と重ねて訊くと、“自動車と同じく三重塗装しているから、ちょっとやそっとカスリ傷がついても目立たない”洗濯機にどうしてカスリ傷対策をせねばならんのか。日本では性能とか、洗濯ものの仕上りとかを宣伝しないと売れない、といくら言っても、外見のことばかり言ってくる。
「バイタリティは無茶苦茶なんですが、力の入れどころが日本人とは根本的に違っているんですよね」
・・・・・・そう言えば、私も去年の暮れ、韓国の出版社さんから、貸本マンガのCD−ROM化の協力を要請されたことがある。300冊近くを一枚のCD−ROMに収録する、というから、そりゃ時間かかりますねえ、と言うと、一ケ月でやる、という。そりゃ無理です、一冊130ページ平均として300冊なら39000ページ、一日1300ページになりますから8時間休みなしにやっても一時間に162枚強撮影しなくちゃならんのですよ、おまけにアニメのセルと違って貸本は本を開いた状態での撮影になるから、綴じ口側のゆがみを修正しなくちゃならない。ページをバラせば楽だがほとんどの本はコレクターからの借り入れになるだろうから、作業は慎重を期さないと、下手に傷つけたりしたら訴えられる可能性がありますよ、と、こっちがいくら言っても“大丈夫デス、出来マス、自信がありマス”の一点張りで、呆れて降りたものだった。情熱があればいい、というものではない。
書庫整理していたら出てきた明治文学全集『開化期文学集2』の、仮名垣魯文『高橋阿伝夜刃譚』を寝ころんで読む。読本調にしても流麗達意とはとても言えない文章だが、これは明治十二年一月三十一日に高橋お伝が処刑され、その半月後の二月十三日にもう初編が刊行されたという大キワモノであったことが原因だろう。出版元の金松堂では魯文に執筆を急がせ、先に挿絵を木版で彫らせて、それに合わせて文章を書かせたらしい。なにか、最近のゲームのノベライズと同じような出版形式ではないですか。これが大衆小説というものの出自なんだなあ、と、むしろ感心してしまう。読本作家としての大ベテランにして、その版元の無理な要求にあわせ大ヒットさせた魯文もエラい。
4時、買い物に出かけたらその帰途に雨パラパラ。傘を持って改めて6時外出、中野の芸能小劇場、『トンデモ落語会』第19回。前座はブラ談次、それからブラ房が柳家金語楼の新作落語(『釣りの酒』だったか?)をやる。なんで師匠もこんなアナクロな作品をやらせるか。それにしても口調はプロ仕様になってきたなあ。あと、談之助、ブラックは今日は軽く流し、中トリの志加吾の『寝床(エイリアン風)』という大ネタ、中入り後の談生の『うんこ指南』というディープネタにつながる。トリの新潟は体調不良か、イマイチ。と、いうより、『うんこ指南』のスゴさにカスんでしまった感。まあ、あれやられりゃー他の演者は逃げるのが一番利口だよなあ。
二次会は小さな居酒屋の三階を貸切状態で。せまい部屋に二十人以上が詰め寄せ、暑い暑い。エンターブレインのNくん、モバイルパソコンで志水さんにアイドル声優のアイコラを見せている。談之助がそれ見て“『電脳炎』のモバイラーくんですね”そう言えばソックリ。三次会はいつものようにトラジ。体力消耗であまり話せなかったが、まあ、これからチャイナハウス、日暮里、二人会と続きますしな。2時近く、 解散。