裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

水曜日

売女 売女 桜庭 売女

 デビ夫人談。植木不等式氏が例によって同系統の駄ジャレを山ほど送ってきてくれた。“わいた わいた サナダが わいた”“歯痛 歯痛 桜が歯痛”“抱いた 抱いた まくらを 抱いた”などなど。上記のタイトルは送られたものをちょっと改稿してみました。“ハカイダー ハカイダー 錯乱する ハカイダー”てのがあったがこれに至っては元ネタはすでに雲散霧消している。ノイズ駄ジャレ。朝7時半起き。朝食、ローストチキンとトマト。

 UPした昨日の日記を改めて見てみたら、『RAKUGO EPISODE1』、31日を(金)としていた。立川流のスケジュールサイトからそのまま引っ張ってきていたので、そこの間違いをそっくりUPしてしまったのである。あわてて平塚くんに訂正お願いのメール。気がつけよ、立川流もよ。

 原稿、週刊読書人漫画評。講談社『お水の花道』をとりあげる。この手のドラマのルーティンを全てぶちこんで見事にまとめあげ、一毫たりとも不確定要素を入れ込まない、商品としてのマンガの見本みたいな作品。読んだあと、何も頭に残らない。批評にもっとも不適当な作品だけに、あえて取り上げてみた。書き上げてメール。11時にどどいつ文庫伊藤氏来るはずがなかなか来ない。出かけようかと思っていた矢先に、“遅れまして”とやってくる。小銭がなくて電車に乗れず、一度家まで引き返したとか。本日もまた、カルトきわまる洋書多々。電気ショック拷問の安全なやり方ガイド、恋人募集の掲示板傑作集など。こういう本の輸入販売をやっていると変な英語には強くなり、こないだ東大の英文学部の教授に単語の意味を教えてやったそうだ。総購入額、5万なにがし。

 12時、半蔵門まで出て、ぴあ本社試写室。鈴木章浩監督『天使の楽園』。ゲイ映画として世界傑作劇場のような映画館で上映されることを前提に製作されながら、世界ゲイ&レスビアン映画祭などで絶賛をあびた、“アンチヘテロセクシャル”映画。喪失感にさいなまれる登場人物たちの彷徨を、どこまでもやさしく描く。そのやさしさが、私のような人間にはかなりもどかしい。しかしこの映画はそのもどかしさをもどかしいままに描くことを目的としているのだろうから、その意味では映画にハマってしまったともいえる。体調不全のせいもあるが、手持ちカメラ映像には相変わらず慣れない。目が痛くなり、胸がつかえてくる。出演者の中に知り合いのホモ雑誌編集 者がいた。

 慣れないながらも、手持ちカメラの重要性というものをいろいろ考える。鈴木監督が手持ちカメラにこだわるのは、それが“自分で映画が撮れる”という自己表現ツールのルーツ(シャレみたいだが)だからだろう。ぴあフィルムフェスティバルの上映技師として映画に関わってきた彼の世代(1961年生まれ)は、映像というものを自分たちの表現手段とするために、さまざまな工夫を試みなければならなかった。それよりもう少し後の、ビデオカメラというものを生まれたときから自由自在に操れた世代とは、意識が異なるのである。そして、彼らが“自分が何物であるのか”というアイデンティティの位置づけに悩む時期、映像はもっとも先鋭に、自分を表現できる手段であった。映像が、一部の職業についているもののみの特権的な表現手段でなくなった、その大衆化の先端に、8ミリや16ミリといった手持ちカメラはあったのである。“ワタシニモウツセマス”という文句で映像は観るものから自分で撮るものへと変化した。そして山崎正和の言葉を借りれば、映像を大衆が手にしたことと“大衆を指導する天才が現れることが、うまく幸福に結びついている時期があった”。手塚真、石井聰互、塚本晋也といったこの時期に登場した才能が、手持ちカメラにこだわることは、決して意味のないことではないのである。

 昼は試写室で上映前に食べた天むす一個のみ。帰って仕事続き。鶴岡から、イーハトーヴ社の件について電話。後の文庫化のこともあり、さっさと版権引き上げておいた方がいい、と言っておく。その後、雑談。早稲田に性文献の研究をしている先生がおり、講義でブルーフィルム上映したりする。彼のゼミの学生は自腹で裏ビデオ買って見て、レポート書かねばならないのだそうだ。東京大学新聞社から、だいぶ以前に送った『東大は主張する2000』用のインタビュー記事原稿著者校が届く。送ったことも忘れていた。今読むと、さらにつけくわえたいことが多々、あるな。日記の曜日については午後、訂正完了。

 5時、新宿鳥源でオタクアミーゴス本打ち合わせ。岡田、眠田両人と角川春樹事務所Nくん。前に出したものの改訂版(なにしろ『REX』のこととかネタにしているから改訂版にはしないといけない)と、第二弾を同時発売したいという話。11月の博多公演とリンクさせて、来年春あたりの発売、というメドでいきたいというあたりまで決める。K子同席、なんかやたらキツい言動でパフォーマンスしていた。あとは例により雑談。ガイナックスのこと、最近の離婚ばやりのこと、周辺のバカさんたちのこと、バイアグラのメカニズムのことなど。岡田さん相変わらず超多忙で8時半退出、私も早めの時間に酒を入れたんで体力急に低下し、帰ってすぐ倒れ込むように寝る。風邪の極初期かも。

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