18日
木曜日
調布のミイラ
保谷の決闘。府中大作戦。朝7時起き。昨日2時間も昼寝したが、やはり朝まで、一度目が覚めたものの起き出しもせず、湯船がやたらたくさんある湯治場旅館の夢など見ながらグースカ。梅雨入りか、しとしとと雨もよい。朝食、コンソメスープスパゲッティ。
昼くらいに雨はあがる。K子に弁当。おかずはアナタマ(アナゴ入り卵焼き)。アナタマ神を信じますか。タイトル考えるだけで毎日苦労してんのにこんなところで駄ジャレを無駄にするんじゃない。鶴岡から電話。自分が売れるのか、才能があるのかということを、彼もやっぱり第三者から保証してもらわないと安心できないらしい。今の若いのって、結局シンジくんであることに彼もまた変わりはない。私の二十代前半なんて、ごく狭い一部を除いて誰にも自分の才能を認められなかったし、才能を認めてくれている人にも、“こいつはまず、世間で売れるようにはならないだろう”と思われていたが、私はどんなときでも心の底で“自分が世の中で一番アタマがいい”と信じこんでいたから、自分の才能と可能性は自分にしかわからない、バカに何を言われても平気だよん、と心の平静を保っていられた。究極のナルシストだったのかも知れない(いまは卑屈なまでの謙虚人間になっております)。
ナルシストは自分が究極の基準だから、世間の評価や自分の本当の姿などを気にする必要がない。昨今話題の17歳たちも、一様にみな、世間をあっと言わせたいだの世の中に自分の存在を認めさせたいだのと、ナルシーな自己世界観を外に開いて不完全なものにしてしまっている。外に開いたナルシシズムは、一挙にその存在感を薄れさせてしまう。ナルはナルのままであるがよろしい。
昼飯はキュウリとワカメの酢の物に、芝崎くんが実家から持ってきてくれたフキの佃煮で軽くすます。仕事関係の電話、数本。あまり重要なものはなし。かかってくる筈の催促電話も不思議にかからず。また昼寝少し。起きて原稿書いてたら、エンターブレインのNくんから“1時間半待ってます”との電話。打ち合わせを明日とカン違いしていた。あわてて時間割。対談本の打ち合わせ。シリーズ立ち上げなので、あまりカルトな内容はまずいらしい。それからそれと話が続き、7時半まで。某ネットで精神科の先生がバス乗っ取りを分析するのに、2ちゃんねるに対しトンチンカン極まる評論をしていた、という話を聞いて大笑い。“氏ね”“名無しさん”なんて用語法から理解するのは一般人には難しすぎるだろうなあ、そりゃ。
ある特定の閉鎖空間には、常にその場独自のジャーゴンが生まれ、形式、様式、約束事、独特の思考スタイルが生ずる。これの大きいものが“文化”となる。マンガにもアニメにも特撮にも、政治にもアカデミズムにもそれは存在する。こういった独自文化圏に対する外部からの批評がマトハズレなものになりがちなのは、そこの文化圏の中で歴史と因縁を背負って成り立っている約束事を、そういう知識なしに分析・定義しようとするからである。以前、某哲学者先生がドリル娘について下していた分析 など、失笑ものだったですよ。
8時、四谷荒木町まで出て、まさ吉で井上デザインと飲み会。親父さん入院中だがママが一人でこなしている。いわしシソ揚げ相変わらず絶品。井上くんと二人、アニドウ時代の話を、てんで理解できぬ事務所の女の子にえんえんするという、セクハラならぬナツハラ(懐かしばなしハラスメント)。日本酒かなりいってベロ状態で11 時過ぎ、帰宅。