裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

日曜日

カルボナーラ鳴くまでまとうホトトギス

 タイトルに意味はない。朝8時起き。朝食、くりくりのパンにスモークトアンチョビをはさんで。週アス原稿シコシコ。“ニッポン良い国強い国、世界に輝く神の国”というリズムのいい文句を森総理発言でつい連想してしまうが、これ、前にマスコミで流行ったのは何のときだっけな。それにしても、神の国発言があった会の主催者はこの騒ぎをどう思っておんのか。

 神の国で思い出したが、昨日の晩、大雨で睦月さんと“こら、明日の佐川くんパーティはお流れだねえ”などと話していた。今年も佐川一政ピクニック(よく焼肉パーティなどと言われるが、火は公園なので使えない)やるとのことだが、今まで毎年、快晴に恵まれ、前日がザンザぶりの雨だった日もちゃんと当日の朝には晴れ渡って、“すごいですね”と言うと、“天長節と私のピクニックの日は雨が降らないんです”と佐川氏、豪語していた。われわれが参加しなくなって規模も縮小されたということだが、今朝のピーカンにいまさらながら驚く。佐川氏の霊力、いまだ衰えず。文運の方にこの力が向けばいいのになあ。

 とはいえやはり湿気きつく、体力いまいち。早めの夏バテか。体重も2キロ減。痩せると言えば昨日の志加吾は〆切地獄のせいか、いっそう痩せギスになり、頬がゲッソリこけて、目クマが深くなっていた。『寝床』より『死神』が似合っているようなちとコワい容貌である。モーニング編集部諸氏、落語家というのはあまりアタマ使うようには出来ていない(先代桂文楽・談)んだから、無理に使わせていると死ぬ よ。

 昼飯は昨日の昼、ふと思い付いて仕込んでおいた味噌煮カツでご飯一パイ。『高橋阿傳夜刃譚』、読みつぎ。とにかく〆切がタイトな連載だったらしく、何度も作者が顔を出して、誤字誤植やストーリィがつながらないところをあやまっている。自分からやれキワモノのやれ拙速の作のと言い訳をしているが、しかもこれがヒットしたため出版社が最初の予定より大幅に話を伸ばせ、と言ってきて、大苦労していろんな紋切型のエピソードをくっつけて枚数稼ぎをしている。売れるものならハイハイどうでも書きます書きます、鳴呼人間万事金の世の中、などとボヤきながらも人気にまんざらでもなさそうなところが面白い。

 4時頃外出。タワーレコードしばらく散策。『サウスパーク』映画版サントラ、フランスの子供番組主題歌集のCDなど買う。“ポップブックス”のコーナーに自分の本があったのには驚いた。私の書くモノてのはポップでしたか。そこから青山まで歩いて、買い物。ダイヤモンド社N氏にバッタリ出会う。奥さんが買い物している間、『高い城の男』などを熱中して読んでいた。SF世代だね。

 帰ってCDかけながら仕事を。フランス語版『ベルサイユのばら』(レディ・オスカル)主題歌てのが珍。妙に軽くて明るいの。あちらのアニメ文化におけるアニソンというシステムは、たとえストーリィがいかに辛気くさいものであっても、こういう主題歌をつけてしまうのだろう。フランス人の文化的かたくなさは大したものだと思う。日本においてはレコード会社の主導のもと、売れるアニメの主題歌をアイドル歌謡やポップソングにする、という愚を犯し、アニソンという固有のくくりを破壊してしまった。文化ジャンルの垣根を破壊することで、“アニメの世界”を外の世界に無理矢理引きずり出し、その中でのイメージの完結を不能にしてしまったのである。その結果(まあ、それからさまざまなウヨはあったにせよ)、アニメは外部文化ジャンルのパロディツールとしてしか機能しなくなってしまった。現在のアニメは“かつてアニメだった”文化的抜け殻でしかない。

 一方の『サウスパーク 無修正映画版』サントラは、これはパロディどころか堂々と正統派ミュージカルをやらかしていて爽快。冒頭の『MOUNTAIN TOWN』などはそのまま50年代のハリウッド・ミュージカルのオープニング曲になっておかしくない名曲である。パロディでありながら、ちゃんと音楽映画として自立している。これも、“ミュージカル映画”という文化的ククリがしっかり確立しているからこそでき ることなのである。

 9時、夕食。味噌煮カツと鮎飯。鮎飯、ハラワタとるのがメンドくさいので一夜干しの開きでやったが、やはりただの干物飯になってしまった。ビデオで『日本沈没』後半。地震、火災、火山噴火など特撮シーンは今見ても見事だが、“これで怪獣が出てくればなあ”という封切り時(中学三年生)の感想、そのままなのは私も進歩がない。『妖星ゴラス』にだってマグマが出てきたんだから、それくらいのサービスはしてもいいと思う。と、いうか、これも特撮シーンに怪獣ものと一線を画す“パニック映画としてのククリ”の演出ラインが定められていないから、そう思えてしまうので あろう。

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