裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

月曜日

代打 代打 桜が 代打

 芸能人野球大会、代打、桜金造。朝8時起き。8時間グッスリ熟睡。おとつい昨日あたりは雨降りにもかかわらず眠くならなかった。豪貴が送ってくれた漢方薬の効果だろうか。朝食、スモークト・サーモン・サンド、巨峰。巨峰はまだスッパイ。薬局新聞一本アゲ。K子の弁当、揚げつみれとカブの煮物、カブの葉を使った菜飯。

 海拓舎Fくん電話。原稿チェックまだかかりそうなので、国会図書館で資料コピーを先にしておいてもらうことにする。昨日、最初の書き出しのホクチにいいエピソードを発見し、それを冒頭に添えるためにまた最初から書き換えるハメになった。こういうのも困るんだかいいことなんだか。メディアワークス本原稿、残り二本をやっとメール。さすがに書き下ろし五本はつらいので、以前書いたものを手直しした。学陽書房から電話、『変書目録』6月1日には書店に並ぶとのこと。

 昼は弁当の残り。道新の書評本仕込みに六本木へ。小物ではいいものがいくつかあるのだが、これが五つ星、とダントツに推せるものがない。ABCからあおい書店に回る。ここの棚分類、タレント本の隣がサブカルチャー&アカデミズムで、私はじめ岡田斗司夫大槻ケンヂ村崎百郎串間努宮台慎司吉本隆明柄谷行人マンガ地獄変等々がイレコミになっているのだが、その棚の表記が“フリークス”。これには笑う。

 鶴岡から電話、エンターブレインの対談本の打ち合わせ少し。彼もいろいろじたばたしているようだが、じたばたしてもダメなときはダメ。もっとも、じたばたもせず偉そうなこと言っている奴よりはじたばたしている奴の方がはるかにエラい。対談本では少しシゴこう。

 岩波文庫『棠陰比事』(駒田信二訳)など、寝転がって読む。中国古典の現代語訳というのはどうもキレが悪い気がする。途中で眠くなってしまい、放擲して大正時代の博文館発行の『絵本稗史小説集』を手にとって京伝や馬琴の文章を読むと、これがテンポ抜群で滅法面白い。ところで“稗史”の意味を辞典で引いたら、昔中国の稗官(役人)が、民間のうわさ話などを集めて皇帝に献上したもの、だそうな。これから転じて小説の意味になった。うわさばなしこそ読物の元祖。私の行くべき道も稗史作家の道かもしれない。

 本日42歳の誕生日。我が家は誕生日とかを一切祝わない家なので(昔、母が占いに凝って、私のことを高額で有名な占い師に占わせたことがあったが、見てみたら、データで出した生年も月日もことごとくマチガっていた)、感慨もなし。厄年ということでちょっといつもよりは意識したかもしれないが、まあ、前厄の骨折事故で厄落としは済んだだろう。年齢相応の仕事もしてきているし、それなりの評価も受けて、幸いまだ上り坂だし、客観的に見て己れの分際なみの厄年である(金銭的にはも少しめぐまれたい)。

 7時半、渋谷の天ぷら屋『天松』。K子が今朝、おごってくれると言うから、誕生日プレゼントかと思ったら、『入院対策雑学ノート』の原稿料代わりだった(今日、あおい書店で見たら“家庭の医学”コーナーにこの本、平積みだった)。ここは何とか言う文人が愛したという、渋谷ではまあまあの天ぷら屋で、上品な味。メゴチが切れていたのは残念だったが、ギンポが初夏の味覚でまことに結構、おかわりする。その後腹ごなしに花菜まで足をのばしてソバ一枚食べて帰る。腹ごなしにならない。

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