裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

金曜日

踏んだりまったり

 なごやかなSMショー。本など読んで寝て起きて、を繰り返し、4時を過ぎるがK子帰宅せず。またキミちゃんと飲んだくれているんだろうと思っていたが、4時半になった時点でさすがに心配になり、携帯にかけるが通じず。5時にもう一度かけたら不満そうに、いま帰る、との声。5時半に酒の匂いをさせて帰ってきた。キミちゃん のグチを聞いていたのだそうな。若いことである。

 なんだかんだぐだぐだ酔っぱらいの相手をしてまた寝て、朝8時起床、入浴、日記つけなど。9時朝食、スイカ小二切れ、ミニトマト、カボチャ冷スープ。中田の伯母を見舞にいった母によると、“当初8月が山、越えられるかどうかあぶない”と言われていた伯母、元気になって来週にも退院予定とか。戦前生まれはなんだかんだ言っ て強い。

 メール等いろいろ。今日の予定の多さに少し憂鬱。麻黄附子細辛湯と救心のんでカツを入れる。11時出勤。おぐりから送られてきた(〆切厳守、感心々々)同人誌あとがき原稿、チェック入れてパイデザに送る。みずしなさんから図版使用許可メールもらって図版もメール。さて、これで同人誌は私の手を放れた。あとはコミケ。

 昼は8番ラーメン、ざる。圓生の『一つ穴』聞きつつ。1時、どどいつ文庫伊藤氏来。洋書の行商である。今日は比較的おとなしい本多し。洋書は普通の本の数倍、読 破に時間かかるが、最近時間なくてほとんどの本がツン読。

 以前数ヶ月一緒に仕事した編プロの女性編集者から退職通知。まだ、その後に勤めるところは決まってないらしい。担当編集だった人の中では突出して若い子で、打ち合わせにヘソ出しルックで来た初めての(いまのところ唯一の)編集者であり、
「ついにこういう時代になったか!」
 とショックを受けた子だった。そのくせ、家庭的な大変いい子だったのだが。若い子から先にどんどんやめていくなあ、この業界。

 2時半までに『ギャグバンク(GB)』原稿、5枚。資料から引いた文章がかなりあるからこれ使えば楽勝で、と思ったら全部書きおろしで規定枚数が埋まってしまった。編集部Hさんとイラストのツチダさんにメール。今夕はこのGBのパーティがあ るんであった。

 2時半、時間割。六花マネと共にイマジカエンタSさんと打ち合わせ。ダンドリの件。実は頭が痛い件がずっとあって、最初山田誠二さんを通じて京都の撮影コーディネーターに動いて貰っていたのだが、話がちと途中から大きくなり、イマジカのF制作プロデューサーが、
「私が京撮にはカオが効くから、私の方で仕切ります」
 と進めてしまい、このままだと山田さんに対して私のカオがつぶれ、そのコーディネーターさんに対して山田さんのカオがつぶれ、という具合になってしまうのではないかと案じていた。そしたら今日、Sくんの話では、Fさんが話を持っていった相手というのが、なんたる偶然か山田さんが話を持っていった相手と同一人物であることが判明、心の重荷が一気に軽くなり、かえってよかったという仕儀で落ち着く。ホッ としたというか、わが運の強さに驚くというか。

 で、そのコーディネーター氏の尽力で撮影は松竹京撮のスタッフが協力してくれる ことになり、またイマジカと松竹とは初めてのつきあいになるので
「恥ずかしい映像にはしたくない」
 とリキ入れてくれるらしい。そうなったらそうなったで、今度は予算の問題も出てくるのだが、そこは最終までなんとか詰めましょう、とSさんも言ってくれる。佳声先生、おぐり、関口さん(音楽)のギャランティなどについてもざっとした話を。ともあれ、撮影台本の完成と山田さんとの連絡、相談を至急に。台本から絵コンテ(コンテはまあ、紙芝居だが)起こして、この場面刀何本、ヅラ何個と割り出さねばいけ ない。

 実はこっちの日記にも書けない秘かなプロジェクトもあるのだが、そっちも、Sくんの話で、私が苦労してかけずり回らなくても進めてくれていることを知る。これが機運というものかとの思いで、何か燃えてきた。Sさんとはまた来週月曜打ち合わせということに。その後六花マネとしばらくスケジューリングのこと話して、凄まじく 眠くなったのでその足でタントンマッサージ一時間。
「固くないところ探す方が難しい」
 と言われる。しょうがない。

 帰宅、すぐFRIDAYネタ出し。出したら担当Kくんからすぐ電話、基本OK、一本ネタの見せ方だけ変更することに。これでちょっと時間とられ、6時からのGBパーティに、家を出たのが6時5分前という感じになってしまう。しかもタクシーが会場のアグネスホテルとエドモンドホテルをカン違いしていた。40分遅れとなり、もうパーティも佳境だろうと思っていたら、なんとまだ乾杯も始まっていなかった。 挨拶がすさまじく長くかかっているらしい。ツチダさんと編集Hくんと、
「え、何、まだなの?」
 などとコソコソ話。

 話はなんか、ゲストがGB社の社長との昔のつきあいの思い出話が長々と続いており、遅れていってよかった、と思えるもの。イマジカの件といい、最近の私はツイてるような気が。やがて乾杯、他に知り合いもおらず、上記両人と雑談。DVDの件、二見本『雑学園』の件などツチダさんに報告。知り合いいない、と書いたが、そう思う先からライターのうぉりゃー大橋さん、以前TVぴあで仕事したカメラマンさん、英知出版T氏など、やはりワザワザと顔見知り出てきた。レディースでK子と仕事し たことあるという人も。

 GBは創立二十周年で、年配から若手まで参加者層さまざまだが、不思議なことに若い男性に背の低い率が異様に高い。そういう人間ばかり集めたのか、と思うほど。ツチダさん、ただでも背が高いのに底厚のサンダルを履いているので、周囲より頭ひとつ抜けている。司会は某、テレビでも二、三回顔見たことのある若手コントコンビがやっていたが、司会はソツなく済ませたが余興のコントがかなりサムい。親父がガンで死んだというネタだったが、この年配層が客だと、ガンを実際にわずらっている人もいるんじゃないか、と思える。TPOをもっと効かせないとダメ。と、いうか、こういう会場ではもっとベタなネタでないとダメ。自分たちのライブとかでばかり演じていると、最初から笑うつもりで来たお客さんばかりなので、笑わせるという行為が、ことに自分たちを知らない客を笑わせるという行為が、いかに大変なものか、気 づかないのである。
「若い客を相手にしてると芸人は殺される。滅多に笑わない中年を笑わせて初めてホ ンモノ」
 と、昔、談志に面と向かって言われたっけ。

 ビンゴ大会はじまる。私はビンゴ運はない男で、全然ダメ。ツチダさんがイオン美 容用具かなにかを当てていた。その受け取りを見ながらHさんと会話。
「しかしツチダさんってのはスタイルいい人ですね」
「おまけに格好が派手ですからね」
「今日もなかなか凄いですね」
「一緒にいるとイラストレーターと思われないんですよ」
「さっきもウチの若い子が、お二人の話しているところ見て“あの人はカラサワ先生 のアイジンですか”と言ってました」
 と(笑)。いや、笑いごっちゃないか。浮き名儲けではあるが。

 まあ、見るものも見、挨拶する人ともし、2時間ほどいてアイジン、いやイラストレーターと辞去。神楽坂の甘味屋でかき氷シャクシャクやりつつ、またちょっと打ち合わせ。DVDの件、携帯写真展のことなど。まだ未定のものがほとんどだが、奇妙におぐりがらみのプロジェクトはスイスイとうまくいくことが多い。ツチダさんも不 思議がっていた。このノリは逃したくない。

 出て総武線。ホームでFRIDAYのKくんから電話、増刊号ゲラのこと。予定通り、これから仕事場に戻って作業するからと返事。これからアキバでふらないの収録のあるツチダさんとはホーム左右に分かれて、新宿まで。そこからタクシー。送られたFAXに8ラインほど足す作業。他に来ていたメール数通に返事など。博多のファンのMさんから恒例の秘蔵焼酎が送られてきた。急に顔がニコニコしてしまうのは、 私も飲ンベエである。うちでの飲み会まで取っておこう。

 今日はあわただしい日であった。仕事はまあ、した方だからいいと思うが。帰宅、くたびれきってウイスキー缶小一本だけ、寝酒にビーフジャーキーつまみにのんで、 シャワー浴びて寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa