裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

土曜日

新庄と信じまいと

 オールスター選で使用したスパイクシューズは180万円のダイヤがはめ込まれており、一足400万円。“世界一豪華なスパイク”としてギネスに申請している。朝7時起床。梅雨の最中は暑かったがあけてからこっちどうも涼しい。よく寝られてい いことはいいが。

 9時朝食。スタートレックシリーズの機関長スコティを演じたジェームズ・ドゥーハンが20日死去、85歳。テレビシリーズのときは、はっきり言ってあまり印象に残っていないのだが、スタートレックが映画になり、他のキャラクターたちがいくぶん老けてはいたものの以前の面影は残しつつ出演していた中で、唯一体型が丸々として白髪になり、ガラリとイメージが異なって登場、いかにも機関長にふさわしい好印象キャラとして生まれ変わった。ヤマトの徳川さん以来、機関長はデブの白髪、というイメージがこちらにあるのかな、と思ったが、アメリカでも映画版以降人気も登場 キャラ中のトップクラスになったようだ。

 それは、スポック役のレナード・ニモイはじめ、全員が
「こんなテレビシリーズの役が自分の役者人生の代表作になるのか」
 という複雑な思いを抱く中、最も早くに開き直り、
「オレはスコティさ」
 と、ファンたちに囲まれサインすることを心から喜んでいた、その姿勢にもよるだろう。最もそのキャラが際だったのは映画第4作『故郷への長い道』だろうか。タイムスリップしてきた20世紀で、オシの一手で工場に宇宙船の修理に必要な、この時代に存在しない特殊素材を作らせてしまい、ボーンズ(マッコイ)が
「そんなことをして、歴史が改変されてしまったぞ」
 と顔色を変えるのに
「改変? われわれはこうしてここにちゃんと存在しているさ」
 とおどけてみせる姿勢が、
「スタートレックはハードSFじゃない、エンターテインメントなんだぜ」
 という制作者側からのメッセージにそのままなっていた。

 また、主役のウィリアム・シャトナーがスタートレックの人気の手柄を独り占めしていることに腹を立て、彼がいかに撮影現場でわがままばかりいい、この番組を子供だましとバカにしていながら、いったん人気が再燃するとツラリとして自分が番組の中心だったと言いふらしはじめたかなどということをインタビューで暴露したりして物議をかもしていた。そこらへんもまた、ガンコで融通のきかないスコットランド人というスコティのキャラクターにピッタリ本人が重ね合わされる。もっともドゥーハンはカナダ人だが。確か数年前、80で子供を作ったことも話題だった。いい人生で あったのではないかと思う。

 12時出勤、途中参宮橋道楽でノリミソラーメン。仕事場到着、やたら荷物類が届 く。注文のDVDボックス類など。京都で作った眼鏡も届いた。かけて仕事。今日はなかなか進まず。2時にタントン行く。ひさしぶりだからか、やたら気持ちよかった が眠くて参った。

 4時、『世界一受けたい授業SP』番宣番組を見る。最強講師陣5人の中に入れてもらっているのは光栄なれどもほぼ半日かけて回してたったあれだけか。トークもほとんど使われてなかったし、二見本の宣伝もカット(あの集まりは“雑学仲間”ということにされてしまった)。まあ、タダで飲んだわけだし、おぐりファンには動くおぐりをテレビでひさしぶりに見られたというだけでプレゼントだったかもしれない。 『恐怖奇形人間』のポスターはそのまま映っていた。

 ……などという感想は実は後のもので、
「さあ、次は唐沢先生!」
 というあたりでグラリ、と凄まじい揺れが来たのに驚いた。ここ一〜二年、地震が頻発しているなあ、とは思っていたのだが、その中でも最大の規模である。窓の外を見たら、アムウェイのビルからも飛び出してきた人がいた。最初の大揺れが去ったあとでも、船に乗ったような、ゆうらりゆらりという揺れがしばらく続き、階下の書庫の本がドサドサ、と落ちる音が聞こえ、
「ヤバいな、これは」
 という思いがうずまくが、どうとも出来ない。
「これでせっかくの特番が地震番組で放映中止とかになったら目も当てられないな」
 と思っていたが、テレビなどで見るに、あれだけの震度(5だったとか)にしては 驚くほど被害が少ない。無事、番宣も本番も放映された。

 とはいえ、書庫の惨状、ちょっと手をすぐつける気にもならず。本棚こそ倒れはしていないが、本棚に横に積んであった本はほぼ全て落っこちている。仕事場の方でもやはり軽いからだろうか、小判のカストリ雑誌が多く棚から遠くへ飛び出していた。片づけは後回しにして、仕事にかかり、週プレ一日遅れでなんとかまとめ、担当Sく んはじめ関係者にメール。ネタを珍しく2つも新たに探して足した。

 体調として悪くはないのだが、今日はなぜだか朝から眠くて仕方ない。原稿書き上げて、珍しいことだがちょっと横になったら30分ほど寝てしまった。地震が起きるときは地震性低気圧になる、という説がある。その類の説を何度読んでもよくわからないので、トンデモ理論のひとつだろうくらいに思っていたが、今日の発作的な眠気 と地震、ひょっとして関係はあるか?

 10時半帰宅、夜中なのに青梅街道バカ混み。タクシーの運転手さん、顔もコトバ使いもどう考えても東南アジア系かフィジー系の人だが(“オ客サン、コノ道イイデスカ?“)ネームプレートは日本人名。11時、家でメシ。ニラとレタスを頬肉スープで煮た鍋と焼肉数片、ポテトサラダ。中田の大伯母の入院を見舞った話など聞く。

 自室でメールチェック。幻冬舎Nくんから“担当をY(とても可愛い)一本に絞りましょうか?”と言ってくる。あまり日記で可愛い可愛いと書くのでヤキモチを焼いたらしい。Nくんは私の作家としてだけでなくプライベートな部分でのブレーンでもあるので、離れられては困る。テレビ出演のリスクについても丁寧にサジェスチョン くれる。実際、ちょっと用心せねばな、という部分が多々あるのだ。

 あと、こないだの『エピ3』論も“革新的原稿”と褒めてくれる。
「あそこまで『帝国の逆襲』を評価しないスターウォーズ論を初めてみた」
 とか。返事書くが、まだ地震低気圧の影響か、極端に眠気がさし、明日にしようと思いベッドに倒れ込む。K子は今日、モー娘。のコンサートに行ってきた由。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa