裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

金曜日

本日回天

 お母さん、いよいよ人間魚雷に乗り込む日が来ました。7時45分起床。寝室のエアコンはつけずに居間のエアコンをつける間接空冷で寝冷えを防いでいるが、適温にはなかなかならない。入浴して9時朝食、スイカとスープ、ミルクコーヒー。

 和食屋Fさんから電話。六花マネ帰京していろいろ連絡。札幌の報告にラルズ(旧金市館)という名前が出てきて懐かしい。五番館だの金市館だの、加藤物産館だの、北海道には“〜館”とつくデパートが多かった気がする。彼女、実家の母親に“スケジュールマネージャー”という仕事を説明してもどうしてもわかってもらえず、あぐねていたらたまたま『世界一〜』の再放送をやっていて、そこにたまたま私が出ていて、
「これこれっ! この人のマネージャー!」
 と言ったらイッパツで理解してもらえたとか。

 日記つけ、SWE3の感想などミクシィに上げて12時出勤。車中、開田あやさんの『眼鏡っ子パラダイス』(二見書房ブルーベリー文庫)を読む。こないだ二見本社に行ったときに貰ってきたもの。表紙(あるまじろう・絵)の女教師の顔は著者がモ デルか? Fさんのところに行き、このあいだのサジェスチョンで書いたという原稿の冒頭部分を渡される。私と並木伸一郎さんにサジェスチョン貰っているのだそうだ。いまの この人にきつい批評は出来ないが、ちと読むのが心苦しい。

 京都の山田誠二監督に電話。こちらの制作サイドとのスリ合わせをお願い。それなどを元にイマジカエンタテインメントに出すスケジュール表を完成させる。これを元 にスタジオ押さえなどをして、予算を割り出す大事な表である。メール。

 茶漬けをかきこんで、2時時間割。幻冬舎Y(とても可愛い)さん。決して美人ではないんだけど可愛いんだよねえ。お母さんに“編集者なんてよくわからない仕事をしていないで、早くいいおムコさん見つけておくれ”とかいつも言われているような可愛さだな、と思う。わかるかな。しかしそんなに早くおヨメさんになられても困るぞ、というくらい今後の仕事の話をした。とりあえずハチアタマに(“〜も蜂の頭もあるか”という言い回しはここから来たのではないか、と一瞬思った)書店に並ぶ、『ダメな人のための名言集』、関口誠人さんのイラストが全体を飾る豪華版。また私 の似顔バージョンがひとつ増えた。

 それから9月発売の『裏モノの神様』、すでに井上デザインで8分通り作業が進んでいるとのこと。これは驚いた。Y(案外やり手)さんだな。盆前に後書き変わりの日記コラムが欲しいとのこと。いきなり言われて驚く。関口誠人さんも言っていたがY(顔の割に仕事にはシビア)さんらしい。また、『社会派くんがゆく!』文庫版の話、前任のSくんとずっと前に打ち合わせしてそのままになっていた単行本の文庫化の話。さらに懸案の書きおろし小説の話をして、その上イマジカのDVD発売に関連しての緊急出版の話までした。Y(とても有能)さんということか? ぜひ、私の仕事にかまけて嫁き遅れになってほしいものである。

 4時まで話して帰宅、催促電話にせっつかれつつ講談社FRIDAYの増刊号用雑学ネタを三十個、出す作業。テーマが決まっているので、その中でネタを選ぶのに難航。二十個まではいいのが案外簡単に出たが、その後の十個に苦心する。8時半まで になんとか片づけてメール。

 それから昨日の(早!)オタク清談のテープ起こしが創のKさんから送られてきたので手を入れてMLにアップ、これで10時。いつもは8時か9時で仕事は切り上げるのが通例だが、今日はとにかく徹底して、と思い、FRIDAY本誌の方のネタ出しにかかる。途中で鶴岡から電話、新聞に載っていたマンガ家アシスタントの放火犯であるSという男、知り合いの某の元アシではないか、という話。業の深い人は業の深い人を雇うねえ、とか。それにしてもイタい。気持ちがわかるだけにイタい。

 私だってこの歳になって、まあまあなんとかやってはいるものの、さっぱりラチがあかず、そこらに火をつけて回りたい件はいっぱいある。私の半生はひょっとして挫折と後悔の連続だったかもしれないとさえ思うことがある。それをごまかすためにいろいろ頑張って、他のところの成功でなんとかカバーしているのである。私どころでないホンモノの成功者も、聞いてみると実はこのパターンが多い。むしろ、最初の挫折の失望へのごまかしが、次の成功へのモチベーションになっている場合が多々、ある。“成功”という頂上はひとつだが、それに至る道は無数にある(こないだ本棚を整理していたら中学の卒業文集に校長先生がそうサインしてくれていた)。才能あるのに成功しない人に多く共通する特長は、成功への道までも、自分の好む道以外認め ようとしないことではないか。

 人生の時間は有限である。売れどき(旬)の時間はなお、有限である。とりあえずなんでもいい、成功しろ。それからなら、ゆっくり他の道を逍遥してみる、ということも出来るのである。このあいだのYさんのサイトを見つけてからこっち、ずっとそんなことが頭から離れない。スターウォーズ観にいってなお、それを感じた。エピ4公開を待ちながら同人誌作っていた時代、共にデビューを誓い合った仲間たちもみんな脱落し、家庭に入ったり趣味でカメラやったりしている。なぜもっと頑張らない。 頑張ればなんとかなるのに。成功してくれ!

 FRIDAY四コマネタ、出したのがなんと夜の11時半。そこらをざっとかたづけて帰宅の途についたのが12時半。新中野でつけ麺を食って、家で戦争ものDVD 類見ながら水割り缶一缶。K子も相伴してきて、いろいろ話す。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa