裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

水曜日

私の浄化槽

♪排水溝をくぐりぬけ見上げる下水道の蓋に……。朝7時起床。長い々々夢。台湾が出てきたのはと学会有志で今度台湾旅行するメンバーがいて、うらやましいと思っていたためか。私は中国本土から台湾旅行に来た親子の一人で、末の息子。父親はマルセ太郎みたいな顔のコックで、台湾に料理の素材を買い付けにきた。私の上の兄はやはり料理人で坊主頭の大男。私は漢方薬の原料を買いに来たのだが、買った後にそれ は許可がないと国外へ持ち出せないと言われ、
「台湾は中国領土なのだから国内だー!」
 とキレる(これには笑う。私は台湾独立国家主義者なのに)。

 その後一人で宿を移るが、携帯を前のホテルに忘れてきてしまい、地下鉄で戻ろうとするが、タイペイの街は遊園地のように、途中で道がとぎれて滑り台のようになっていたり、降下棒があるのでこれで下に降りるのかと思ってちょっとつかんだら抜けて落ちてしまったり、迷路のごとくでなかなかたどり着けない。いかにも夢の中っぽ いシュールな町並みが面白かった。

 朝食、9時。スイカ、カボチャスープ。昼のざるラーメン用の葱と海苔を貰う。母は最近、入院中の孝子伯母の見舞に毎日行っている。やや元気が出て、口紅を塗りたがっているそうだ。かつての、一族の中心という存在でパリッとしていた彼女の姿を知っているだけに不憫。それでも自慢屋である本質は変わらず、看護婦さんや医者たちに、私がテレビに出ていることをしょっちゅう自慢しているそうだ。自慢の種を提 供したという点では学生時代、世話になった恩は返せたという感じか。

 それにしても、大きな声では言えないがこの中田家の息子たちといい何といい、親戚中、私と同世代の連中で、どこかの分野で名をあげたとか、ひとかどの者になったと言う者が一人としていない。よほど遺伝子的には優れていない一族らしい。なをき が親戚づきあいを毛嫌いする気もわからんではない。

 部屋に戻って週プレ『名もニュー』のナオシについて、おぐりと少しメールやりとり。プライベートをどこまでギャグにするかの線引き決め。さらに『創』対談のナオ シ一カ所、ちょっと資料引いて。

 11時、パイデザ平塚くん来。次の日曜にK子が新しい仕事場に自宅の(いま、このミク日記を書いている)パソコンを移すにつき、新しいDELLのパソコンの操作 法のレクチャーを受ける。慣れるまで時間がかかりそうだ。

 12時半、出社。台風一過(一過って、本チャンでは来なかったではないか)のギラつく陽射し。マンションのペーブメントに例によりヤスデのひからびたり踏みつぶ されたりした残骸がいっぱい。8番のざるラーメンゆでてひと玉半。

 アサヒ芸能ゲラチェック。イマジカエンタテインメントと、予算のことでの詰め、打ち合わせ日取りを決める。いよいよ本丸。それにしてもこの後の火事場騒ぎを思う と……。いや、まだ今は思わないことにする。

 昨日『ダメな人たちのための名言集』お渡しした新潮社のH女史からお礼メール、彼女はなんとC・C・Bのファンで、
「乏しい小遣いをやりくりして関口さんのレコードを買っておりました」
 とのこと。
「関口さんの描く唐沢さんの顔は若い頃の関口さんに似ていますね」
 だ、そうだ。

 夏コミ用同人誌『名もニューノーカット版!』原稿。名もニュー用対談の、週プレ用原稿に仕立て直す前のテープ起こしを整理して、読める原稿にしてまとめるもの。ガリガリと。途中で時間が来て、4時仕事場を出て時間割。村崎百郎さんと『社会派くんがゆく!』対談。“フォースの韓国面”という話が出る。ネットでひろがっているそうで、これに落ち込むと日本の悪口しか言えなくなる。

『ぱちんこウルトラセブン』の話題から、キャラクターがパチンコ台になった場合の版権料などをちょっと計算して頭がクラクラする。対談後、文庫化、また携帯配信の話。『ガラダマ天国』再刊の件なども。仕事場に戻り、同人誌作業続き。9時までに 終わらせて、チェック用におぐりにメール。

 それからタクシーで代々木まで。煮込み屋なりたにて、K子、談之助夫妻と食事。今日も他の常連さんと席を寄せ合い譲り合いの盛況。K子はひさしぶりにローライフレックスを持ち出してきて写真撮影していた。豚肉のハラミ焼き赤ワインソース、ラム肉のタジン(煮込み。これをクスクスにかけて食べる。煮込み屋という店名にふさ わしい料理をやっと食ったが、これがバカうま)、それに鴨のコンフィ。

 談之助にブラック一門のその後の行き先の話を聞く。ブラ談次はやっと最初の希望通り左談次のもとへ行けたそうな。懸案になっているちくま文庫の落語本、この件とは関係ないが少しコンセプトを変えようと提案。あまりにこれまでだと各人のスタンスがバラバラすぎて本に一貫性の主張がなくなる、というのがこちらのまとめが遅れている理由だった。私と談之助の共著、という性格をかなり強め、実演部分でトンデモ落語界採録、という形にまとめることにする。近く編集Mくんと再開の打ち合わせ をしよう。

 ワイン、ビールと交互に行ってかなり酔い、お腹もコンフィのポテトフライでくちくなる。11時くらいに辞去、タクシーで帰宅。ワインの酔いにK子またまたご機嫌である。他の酒でここまでご機嫌になったのは見たことなし。酔いの種類が酒によっ て違うのか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa