26日
月曜日
プロジェクト鬱屈
この計画には、いままで会社で冷や飯を食わされ続けていた私の怨念が……。朝、7時50分起床。朝食はトーストにオイスター、これでおしまい。二十世紀梨、べらぼうにうまい。食いつつ感動。一旦頭(脳)を通して得た感動というのは、その後は実体がなくても脳に残されたコピーで代用が効くが、食とか性のように、舌だの性器だので直に感じる感動は完璧な再現が不可能で、それ故に忘れた頃に味わうとわっ、 これだった、という驚きが身体をかけめぐる。
メール、このところ多いこと。よくわからぬウイルス(らしきもの)やどうしようもないDMも多くなっている。ウイルス以上に困ったメールもあり、読めば不愉快になるとわかっているが、仕事がらみなので読まないと話が先に進まない。たまたま、同内容のメールが別の人にも行っていることがわかっていたので、その人に頼んで、内容をダイジェストで伝えてもらう。やはり読まない方がよかったような内容だったが、人を通して、やや客観性をもってその内容を見ると、なにやら苦笑したくなるような、独特のユーモラスさも生まれることを実感。個人にとって嫌なことは、第三者にとってはオモシロイことなのである。笑いというものの、これは本質に関わることだな、と感心。もっとも、その嫌なものを直に読んでさらにダイジェストして、こちらに伝えてくれた人には迷惑きわまることだったと思うが。
台所のガス台の上の換気扇についている灯りの電球が切れる。取り替えるには換気扇の蓋を全部はずさねばならない。外してみると油汚れがべったり。これを掃除しようとクレンザーかけてゴシゴシやっているところに、どどいつ文庫伊藤氏がちんちん先生を連れて来訪。先日のコミケのお礼やなんやかや。ちんちん先生は各地のマラ像を集めた祟りか尿道結石になったというが、なるほどやや、顔かたちが小さくなったような感じ。雑談はずんで、結局換気扇の蓋掃除は半チクなまま、またハメ直すことになる。
昼は参宮橋でノリラーメン。ここ、水や酒類はセルフサービスで、カウンターの席につく前に入り口の近くの給水器でコップにくんで、それを持って席につくシステムになっている。このところ、そのシステムの他、おかわり用にカウンターに数カ所、氷水入りのプラスチック製のジャーが備え付けられて、水好きな私にとってはうれしい改良だったが、今日行ったらジャーが撤去されていた。夏期限定のサービスだったのか、それともみんな客ががぶがぶ水を飲んで、計算してみたら水代氷代もバカにな らぬ、と驚いたのか。
バスで渋谷に戻る。渋滞で十分遅れ。西武デパート近くで降りて、夕食の買い物して帰る。仕事していると、品田冬樹さんから電話。ワンフェス、スーフェス等でのくもちゅうてんとうむしの、売上報告。結局、350個がはけ、ビデオも50本松竹から預かって38本が売れ、まずペイラインは超えたとのこと。おめでとうございますと祝いを述べる。残りはまんがの森で販売するのと、ネット通販をこちらのルートでやろう、という話をする。ちょうど、今進めているムック企画にノッてもらおうと、そのテーマに水を向けると、もう、話すわ話すわ。いや、これまでのそのテーマの類で一番ひねくれた(褒め言葉)話が聞けた。大喜び。向こうも“こんな話でエエので したら……”と喜んでくれていた(のか?)。
ちょうど、その話のモトになっていた企画担当の、河出のAくんからメール。別件でうれしい話で、ちくま書房で今度文庫化される『お父さんたちの好色広告』(ぶんか社で出したものの改訂版)の解説を、ダメモトで『性現象事典』の小宮卓先生に依頼していたのだが、是非やらせていただきたい、と快諾があったということ。これで肩の荷が下りた。あと、『天使の緊縛』も非常に評判がよく、ディックの翻訳者の大滝啓裕氏や、種村季弘氏からもお褒めの言葉をいただいているとのことである。これ で次の企画にもはずみがついた。
頭の中で次第に企画が形をなす。こういうときは他に神経を使わずに、山荘などに籠もって、無我に近い境地の中で思考のカオスからじっくりと企画が浮かび上がってくるのを待つのがベストなのだが、現在の私の状況ではそうもいかぬ。原稿の催促電話だの何だのがあり、なをきに送らねばならぬ本もあり、夕食のことも考えずばいけず。雑踏の大通りの真ん中に立って針に糸を通そうとしているようなものである。
雑事いろいろ。編集部に長文のメール。8時半、夕食の準備。キャベツと肉だんごのスープ煮、ゴーヤチャンプル、アジの煮びたし。ごはんはシジミ飯。アジの煮びたしは池波正太郎の小説で読んで、その料理読本で作り方を知り、いつかやってみようと思いながら、“果たしてうまいのか?”という味の想像がつかず、躊躇していたもの。アジを塩焼きにして、それを酒を煮てアルコール分を飛ばしたものの中に入れて煎り煮にする料理。小アジのいいのが安かったので買ってきて四尾を塩焼きにし、半分はとっておいて、二尾のみで試みてみた。鍋に多めの酒、ホンの少々のみりん、香りづけの醤油を熱し、アルコールが飛んだところで焼き上がったアジを入れてさっと煮付ける。で、出来上がったのを食べてみると、煎り煮によって生臭さがなくなり、旨みが増幅され、肉も軟らかくなり、まことにうまい。コレハヨロシイ、と、さっそく残りの二尾も追加して煮びたしにし、すっかり平らげてしまった。LDで『未来への遺産』をBGMがわりに。缶ビール大一本、梅干入り焼酎二ハイ半。