裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

木曜日

Gackt出陣

 裸になって、突撃! 朝、7時半起床。昨日は昼間3時間以上も昼寝したので、眠れないかと思ったが、夜中一度トイレに起きた以外、朝までぐっすり。よほど体が眠りを欲している。朝、ニュースショーは長島監督邸刃物男侵入の話で持ちきり。K子と“セコム、してますか?”というセリフをニュース見て口にした人間はいったい、日本中でどれくらいの数になるのか、と話す。朝食、カニ缶の残りを使ったパスタ。

 コピーいくつか。手差しコピーのものがあるので、ずっとつき切りで紙を入れ、スイッチを押すということを繰り返す。孤独な作業である。繰り返していると、ひしひしと寂しさが肩につもってくるというか、“いい年して俺は何をやっているのか”という無常感が湧いてくる。コミケ合宿とかで、みんなで泊まり込んで製本する人たちの気持ちがわかるようにも思う。もっとも、これもある時間続けてやっていると、その無常感が妙に心地よく感じてくる。侘び寂びというのは、こういう感覚を言うのかも知れない。妙に懐かしいような気分になるのは、小さい頃から孤独の中に放り出されたような子供だったからか。孤独には慣れている。だから物書きのような職業にもなれたのだと思う。原稿を書くというのも孤独な作業だが、それは原稿というものと対峙しているわけであり、決してひとりぼっちではない。人とツルむことばかり考えている者は、この、原稿(もう一人の自分)との対話が出来ない。友人は多い方だと思うが、物書きとして友人が多いことは決して自慢にはならない。一人も友人がいなくなることを恐れない、自分はものが書けるのだから、ということこそを、物書きの矜持にすべきだろう。寂しがりやは物書きになれない。

 電話で編集部各位といろいろ打ち合わせ。『クルー』原稿ゲラチェック、『男の部屋』ゲラチェック。『クルー』は何故か向こうのFAX機に何度ダイヤルしても噛まない(ダイヤルはされるのだがFAX機能が働かない)ので、電話して口頭でチェック部分を伝える。他にも、コミケ二次会の場所をFAXしてくれという依頼にサイトから地図をプリントしようとしたらプリンターが動かないとか、こないだ入れたばかりの4万もするコピートナーがもう空になった(ベタの多い絵の原稿を大量コピーした)など、機械のトラブル多々あり(プリンターはあっちをいじりこっちを調整し、なんとか直した)。それやこれやで、昼飯を食い損ねる。買い物に青山に出たついでに、PRONTで菓子パン一個とコーヒーで軽食をとる。近くの席にいた白髪あたまの中年サラリーマンの三人、話の流れはまったく見えなかったが、一人が“触れなばおちんちん”というシャレを口にして、大爆笑。しばらく笑い続けていた。

 帰宅する。麻黄附子湯のおかげか、眠くもならず。原稿、4時ころから書き出し、7時半くらいまでにフィギュア王10枚とちょっと、書き上げる。自分評価で65点(平均点)。ネタが裏っぽすぎるのが減点対象で、掲載誌がフィギュア王じゃない場所だと75点くらいにはなるか。あと、個人的な手紙(ちくま文庫の解説依頼)も書かねばならぬ。

 寝転がってノートを広げ、バカな本の企画、いろいろと頭に浮かぶのをメモしておく。どうも妙に今日は攻撃的かつ狂騒的で(麻黄附子湯の作用か?)、“オレは絶対にえらくならんぞ、バカをやるぞ”とか書き付けて、後で恥ずかしくなって、そこを破ったりする。困ったもんであるが、この年になると、常にこう自分に言い聞かせておかないと、つい、おさまったことばかり言いがちになる。権威権力・体制の怖さは身にしみて知っている。反権威などと硬くなると、必ず取り込まれてしまう。若者がポリティックになるほど、権力にとって扱いやすい事態はない。権力がその手を及ぼせない相手はバカしかないのである。支那の賢人が多く佯狂となったことを思え。コミケ、と学会会誌が30箱になり、一ブースにはちょっと置けないという報告が、今頃印刷所から来た。あわてて同じ島の『カラオケの艦隊』『本家立川流』などに連絡し、分散させることにする。まぎわになっていろいろアクシデントが出てくるが、これもイベントの醍醐味である。

 9時、夕食。春雨とミニトマトの中華風サラダ、水ギョウザ、イワシとジャガイモのオーヴン焼き。K子にはこれにプラスしてにゅうめん。ビデオで、アメリカのサタデーモーニング番組いくつか。『ゴジラ&ゴズーキー』、『ジョニー・クエスト』、『ジャナ・オブ・ジャングル』など。ジョニー・クエストは60年代に放映されていて案外楽しんで見ていた。新しいゴジラ&ゴズーキーに比べてずっと絵も動画も丁寧なのがなんとも。予告編でだけだったが、子供のとき、そのデザインに弟ふたりで痺れたクモ・ロボットが見られて大喜び。ジャナ・オブ・ジャングルは女ターザンものだが、首に巻いた飾りが、はずすとアイスラッガーみたいな、何でもスッパリと切り裂いてしまう武器になる。これが何でもズバズバで、“こんなもん切れるか!”と大笑い。山本会長はこれ、知ってるのかな?

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