裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

金曜日

マッコイ生きてる

 ディフォレスト・ケリーは死んでもドクター・マッコイは僕らの心の中に永遠に不滅です。朝7時半起床。朝食はトウモロコシとクレソン、二十世紀。窓の外を見ると細かい雨がサーッという感じで降っている。気圧、朝から変調を極め、体調は不良。これは一日ダメだ、と直感、本日の予定をだいぶ変更。

 ネットで、昨日話題に出たレオ・マッカーンのことを調べたらちょうど一ト月前、7月の23日に亡くなっていた。オーストラリア出身だということは初めて知った。シェイクスピア劇の俳優として著名で、『ロミオとジュリエット』の神父役のスチールを見たことがあるが、なるほど適役だ。モンティ・パイソンのギャグの中に、歴史上の人物のデタラメ紹介で“父親はレオ・マッカーン”と言うのがあったから、イギリスではポピュラーな名前だったのだろう。歴史劇からコメディ、SF(『スペース1999』にゲスト出演していた)まで、イギリスの役者らしくありとあらゆる役を楽しげに演じていた。映画の代表作は昨日も書いた『HELP! 四人はアイドル』の他、『わが命つきるとも』では策士のクロムウェル(あの清教徒のクロムウェルではない)を演じ、直属のボスであるウルジー枢機卿(オーソン・ウェルズ)を追い落として自分がヘンリー8世(ロバート・ショー)の腹心となり、その再婚に反対するトマス・モア(ポール・スコフィールド)を反逆罪で死刑に追い込む。スコフィールドとマッカーンの法廷対決が、この役者の顔ぶれ以外は非常に地味な映画の、クライマックスになっていた。その他『レディホーク』の神父(あきらかに『ロミオとジュリエット』の神父役をイメージしたキャスティング)とか、『プリズナーNO.6』のNO.2(もっとものこの役は出てくるたび違う役者が演じている)とか、『新・シャーロック・ホームズおかしな弟の大冒険』のモリアーティ教授とか、とにかくこの人が出てくるとテレビであれ映画であれ、その達者な演技で作品に幅が出て、大したことのない作品でも楽しく見られたものである。英国映画界にはこういう、悪玉だろうが善玉だろうが何でもこいで演じわける、芸達者な名優たちが実に豊富にいたものである。ロバート・モーレイとか、ピーター・ブルとか、クライブ・レビルとか、コリン・ブレイクリーとか、ロイ・キニアとか、フレディ・ジョーンズとか、ジェイムス・ロバートソン・ジャスティスとか、ストラトフォード・ジョーンズとか、英国のこういう万能俳優たちについて語らせてくれる本を、どこかで出さないかなあ。

 植木不等式氏の日記で、昔懐かし『気のいいあひる』という唄のことが出ていた。ちょうど、官能倶楽部のパティオで、フリー職業人たちが気勢をあげて、会社に守られているサラリーマンたちいい気になるな、と盛り上がっているところだったので、発作的に替え歌を作る。
「♪むかし会社は景気がよくて、手当もついたし経費も落ちたよ、ランララララララランララララララ、ランララララララ、ララララララララン」
「♪ある日会社のバブルがはじけ、不況はごうごうリストラも凄い、ランララララララ、ランララララララ、ランララララララ、ララララララララン」
「♪こいつはちょっと考えもの、失業したらばつまらない、ランララララララ、ランララララララ、ランララララララ、ララララララララン」
 以下5番まであるが、全部記すとサラリーマンの友人が一人もいなくなるので略。

 昼は冷蔵庫から、おとついのトウモロコシご飯の残り、サンマの梅煮の残りを取り出してきて、味噌汁に卵を落としたやつとでもそもそ食べる。電話数件。まとめねばならぬ企画書も何本もあるが体も頭も動かず。新宿に出て、紀伊國屋書店で資料散策 し、伊勢丹で買い物。さすが金曜で、人がウジャウジャ。

 帰宅して雑用すませ、時間割。村崎百郎さんと月例時事対談(人非人対談とも)。ウルトラマンコスモス、杉浦太陽が出てこないバージョンの編集版も、あまりに出来がいい、ということで公開決定したというニュース。大笑い。そう言えば『エピソード1』も、ジャージャー・ビンクスの出演シーンをカットした海賊版が向こうで大人気だというしな。怪奇マンガ文庫などを出していた蒼馬社が倒産、というニュースも村崎さんから聞いた。どう考えても怪しげな商売法だったもんなあ。
http://www.fugra.tv/shakaiha/data/left.html

 対談終わり、ガックリ疲れて帰って、しばらく読書。8時、夕食。今日はK子は語学教室の人の送別会とかで留守。豆腐とアサリの煮物、鯛の刺身などでひとり、酒。LDでコロンボなど見る。『愛情の計算』、小池朝雄・鈴木瑞穂はいいが、他の声優のカラっぺたなことに呆れる。菊正宗冷やから焼酎梅干割に切り替えて飲み、10時には寝る。暑さは薄らいだが、まだ湿気がひどい。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa