7日
水曜日
右翼・イン・クローゼット
極右の殺し屋が衣装箪笥の中に! 朝7時45分、起床。朝食、昨日と同じ。夕張メロンに贅沢にかぶりつく。朝から猛暑。セミの鳴声すら8時を過ぎるとやや、バテ気味に小さくなる。部屋は冷房をきかせているが、それでも窓際は暑い。午前中、テ ンションの上がらないことに参る。
新聞に“漫画家逮捕”の記事。少年ジャンプで『世紀末リーダー伝たけし!』を連載中の島袋光年が16歳の女子高校生とセックスして(新聞の“みだらな行為”という表現はそろそろ何とかした方がいい)、8万円渡したとのこと。さすがジャンプの人気マンガ家、一回のセックスで8万も払うか、と、そっちに感心する。と、いうか週刊連載などしていたら買春するしか女性と交際する暇はないのである。編集部も、10代20代の、金だけは持っている若者を多く抱えているんだから、そこらのケアもしっかりやってやらないと、こういうことはしょっちゅう起こる筈。ちなみに、今週号のジャンプ巻末の作者からの一言メッセージコーナーでの島袋のコメントは
「ミスチルの桜井さんが体調不良で活動休止と聞いてショック!」
だった。自分も全然別の理由で活動休止になるとは、このときは思ってもいなかっただろうなあ。
扶桑社Oくんとちょっと仕事の件で打ち合わせをしないとな、とぼんやり考えていた。らば、いきなりそのOくんから電話。不意をつかれた感じで少し驚く。向こうはなんでこっちが驚いたかわかるまい。写真撮影などの件。ベギちゃんとコミケで会うのだけど、と言ったら、あ、では私も会場に行きます、と言い、しかし午後から打ち合わせがあるので、午前中になりますね、と言うから、午前中にはちょっとまともに入場できないでしょう、と言っておく。扶桑社はチケットを会社単位でもらわないのだろうか。お近くなのに。後で、ベギちゃんからも言われたと見え、“11日は行けません”とメールがあった。
コミケでペーパーを配布するのだが、二つ折りのものを1000部以上作らねばならぬ。指で折り目をつけるのではなく、よく、製本所で四角い木片の、片一方がカマボコ型に丸くなっている奴(こういうものの形状を文章で説明するときのじれったさはたまらない)で押さえて折り目をつけているが、あれは何と言うものなのか、売っているものなのか、と思い、東急ハンズの文具売場に言ってみるが、見あたらず。社判などの取手が使えないか、と思って見てみたが、これも格好なのがなし。ものの名がわからないので、店員さんに訊くのもちょっとためらわれる。
昼はイカ明太とザーサイをご飯に混ぜ込んで炒め、明太チャーハン。ゆうべの鯛チリの残り汁を味噌汁に仕立て直して。豆腐はもう、味が酸っぱくなり初めていた。食べると体力が極端に消耗、少し横になるが、つい寝込んでしまい、なんと目が覚めたら4時。テンションがこのままではどうしようもない、と、麻黄附子細辛湯をのむ。
時間割でちくま書房Mくんと打ち合わせ。『お父さんたちの好色広告』のゲラを渡される。コミケが済んでからの作業で、今月末渡し。幻冬舎の『カルト王』ゲラも今月末渡し、その他企画書やなんたかやと今月末渡しのものがだいぶある。何か来るととりあえず“コミケの後に……”と言って逃げているので、そのしわよせで今月後半は火を噴くことになりそうである。今後の文庫企画の話。終わって新宿に出て、雑用と買い物。夕食の材料を買ってから、地下鉄大江戸線で東新宿に出て、あちこちの店を探索。コミケの打ち上げが幸永なのだが、残念ながら幸永は30人くらいしか入れず、あぶれる人が出る。そのために、3次会の場所を確保しておく必要がある。しかし、幸永というのは、改めて周辺を歩いてみると、陸の孤島なのである。最低で十分くらいは歩かないと、飲み屋というものが回りにない。わずかにタコヤキ居酒屋というのがすぐ道を隔てた角にあって、ここならいいかと当たってみて、店も大人数ということで興奮していたが、日曜は休み、ということでダメ。結局、ドンキホーテ近くで数軒、候補を見つけ、ここから絞り込むことにする。
暑い中、かなり歩き回って脚が棒になった。しかし、そういうときの方がむくみはとれているのである。これが不思議。帰宅して、すぐ夕食の準備。鶏の手羽肉を茹でて、さまして肉をほぐし、ピーナッツバター(甘くないの)を酒でゆるめて醤油で味をつけたものと和える。付け合わせはタアサイの炒め物。それとキュウリをしゃもじで押しつぶすようにして砕いて、ニンニク醤油に漬けたもの。これは二十年くらい前に、中田(親戚)の息子たちと行った中野の薄汚い中華屋の名物おつまみだった。それと、キャベツとカニ(280円の缶詰)の蒸し煮。青ユズで香りをつける。ご飯のかわりにソウメンを茹でる。K子が、このソウメンはこないだのざわさんから貰ったものかというので、いやまだ買い置きのがあるからそっちから使ってる、というと、早く新しいソウメンが食べたいという。ソウメンなんてのは古いものに味があって、貰ったら一年は寝かしておかないとうまくないのだ、とか、食通はコクゾウ虫がついたのを“虫湧き”と称して珍重するのだ、とか、いくら説明してもわからない。
LDで『花くらべ狸御殿』(昭和24年大映・木村恵吾監督)。男役で映画初主演の水の江滝子の魅力爆発。喜多川千鶴との、ちゃんとアップでのキスシーンもあって当時のファンは映画館で絶叫したろうなあ。悪役の京マチ子は露出たっぷりの衣装で妖艶な色気をふりまくが、何にせよお肉がたっぷりすぎ。それでも、監督の木村恵吾が後にこの京マチ子の濃艶さを120パーセントいかして『痴人の愛』を撮っているのは、この時から目をつけていたのであろう。スタッフがやたら豪華で、音楽が服部良一、特撮が円谷英二(ただし、ひどくチャチ)。ラストで悪大臣の藤井貢が斬られて、“安心しろ、峰打ちだ”“いや、死ぬ。私が死なないと映画が終わらない”などというギャグなど、パラマウントのボブ・ホープ映画を彷彿とさせ、あの口うるさい双葉十三郎が絶賛したというのもわかる才気があちこちにあふれている。で、最後は死んだ筈の悪大臣も、別に改心したわけでもない魔女の京マチ子も揃ってフィナーレというところもお正月映画らしいノンキさである。
寝る前にノドが乾いて、買っておいたアップルタイザーを飲む。アップルタイザー(Appletizer)だと思ったら、アプリッツァー(Appritzer)というパチもんのようなやつだった。味はまあ、同じ。