裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

日曜日

のみものの塔

 コミケ打ち上げの三次会で突発的に出たシャレ。ギリギリでシャレ、という感じであるが。朝5時、起床。ワインが少し残っているかな、という感じであるが、去年のホッピーの強烈な二日酔いに比べれば何のこともなし。コーヒーを入れて、昨日伊勢丹のアンデルセンで買ったオープンサンドを食べ、シャワー浴びる。と学会グッズ、コピー誌、チラシのたぐいを全部チェック。荷物持ちの芝崎くん、むらたくんの二人も到着。7時キッカリに予約しておいたワゴンタクシーでお台場ビックサイトへ。

 道はもうお盆休みに入っているところがあることもあり、スイスイ行くが、ビックサイト周辺はもう、大混雑。いつもはタクシー寄せにはUターンして入ってもらうのだが、今日はそこに大きく“Uターン禁止”と書かれた立てカンがある。うわ、大回りしないといかんか? と思うが、運転手さんがそこで交通整理していた人に“ここはUターン禁止なの?”と訊くと、“あ、いいですよ”と拍子抜けする答え。無事、到着した。

 書籍運びに関してはプロの芝崎くんがいるので、一般人にはちょっとできないキャリーの超絶的な使い方をして、こっちは両手に自分の荷物を持つだけだが、それにしても、入り口から東口までの距離が長い。ヨイショヨイショと歩いてたどりつく。何とか無事に、本も届いていた。K子は急いでと学会にグッズ類を運び、他ブースに運んだ荷物の回収あれこれと、現場スタッフと打ち合わせしている。こちらも箱を開けて、ペーパー類を中にはさみ込むなど、いろんな細かい作業に没頭。芝崎、むらた両人には栄養ドリンクを差し入れする。隣が本家立川流、談之助夫妻とキウイ(元)がスタッフ。志加吾は思うところあって、と今回は欠席だそうな。

 開田夫妻、ハーレクインロマンス本を委託販売する『カラオケの艦隊』のHさん、畸人研究のみなさん、その他いろいろな方々と挨拶。トイメンや隣のブースの方々からは、“いつも読んでます”と挨拶され、それぞれの刊行物をいただく。恐縮する。何か自分の個人ブースだと気が抜けず、余裕というものがない。時間がやけに早く過ぎていくような気がする。談之助さんが“初めて自家ブースを出すと、人の手伝いにいったのの倍はくたびれます”と言っていたが、確かである。岡田さんのところに陣中見舞いに行くが、大量の本の山を積み上げて、その上に座り込んでいる。牢名主みたいだ。しかし、4部の新刊、それぞれのリキの入り具合には驚く。柳瀬くんは早々と依頼の件をすましてくれていた。ありがたや。

 10時、恒例の拍手、何かフライングがあちこちであり。会場にドッと人がなだれこんでくるが、大手のお目当てに今回は無茶苦茶な列が出来、あまりこっちの方には流れてこない。立川流ブースは談之助さんの呼び込み、さすが落語家で絶妙。“あの大量破門事件の真相がわかるだけではありません。その渦中の当人のサインまでもらえます!”という声に、かなりの数のファンがやってくる。謹慎中の志加吾の写真を携帯で撮影する女の子や、“がんばれ! これは祝儀だ!”とキウイに金を押しつける人もいて、なかなかにぎわっている。若い青年が開田夫妻と一緒に顔を見せる。あれが金沢のSさんの息子さんだ、と聞いて仰天。子供がいないと、自分の年齢がどれくらいかということが実感できない。

 私の方、最初ポツポツだったが次第にやってくる人が増える。ただし、どうも断続的で、波が出来ない。唐沢と言えばいつもコミケではと学会ブースにいる、というイメージがあって、と学会で本を買ってもこっちにあまり流れてこないのと、東文研で初出店、カタログにも何を出すかということが書いてないので、チェックする人が少なかったということがあるだろう。とはいえ、一番高い値をつけていたコピー誌がぞろ、ぞろ、と出ていくのは意外だった。

 お客では『戦争論』の担当編集Iくん、カスミ書房のYさん、ナンビョーさんのサイトのえふてぃーえるさん、カーター卿さんなど。タニグチリウイチ氏はピンク系の帽子にピンク系のジャケットという服装だった。よくああいう色で合わせせられたものだと思う。なみきたかし、例によって傲然、“オレに何を買えという”とゲタばきで来る。“昨日は五味が来たからちゃんと手伝わせたよ、「なみきのところへ行くと働かされるからイヤだと言っていたそうだな、カラサワの日記に書いてあったぞ」と言っておいた、まあ、大体あんたのところの日記の描写は5割増しだが……”と言うが、私の日記には五味くんが“イヤだ”と言ったなどとは一言も書いてない。5割増しは自分の方ではないか、と苦笑。

 日記と言えば、“××××に関するカラサワさんの日記の記述が非常に興味深かった、実は……”と裏話を聞かせてくれた人あり、あー、と驚き、呆れる。“そのうちくわしいことをお教えしますので、長文のメールが行くと思います”とのことで楽しみである。善意の人の熱情が周囲を巻き込むと迷惑する典型例。東浩紀氏をはじめとするサブカルアカデミズム業界人批評の同人誌などもいただく。私のことなども触れているとのこと。岡田さんに渡してくださいとの分も一部、もらったが、ドタバタしていて岡田さんには渡しそこねた。確実に送っておきますので。午後には平塚夫妻も顔を出してくれて、カラーのポスターを作ったのを持ってきてくれる。

 とにかく暑い。午前中はまだ冷房も効いていたが、午後になると、もう人の熱気でそんなものはあってなきがごとしとなる。ズボンがぐっしょりと汗で濡れて、色が変わってしまった。ペットボトルの飲み物を、持っていった分、差し入れの分など含めて三本もカラにし、まったく尿意を催さない。全部汗と、呼び込みでしゃべっている呼吸にして水分は放出しきっている。米沢さんが買いにきてくれたが、顔中汗だくになって、“暑いよ〜”と悲鳴を上げていた。新刊3部セットで売りまくった結果、午後3時を回ったあたりで、なんとか採算ラインを超えて、黒が出る数字になった。やれやれと息をつく。

 そこらで撤収作業を開始。芝崎くんがまたまた超絶台車技巧を見せて、在庫を宅配ブースに運んでくれる。周囲の成績を見て回る。岡田さんのところも、なんとか黒字は出した模様。と学会は1200近くを売りさばいた。前が800だったわけで、成績としては決して悪くないが、1800の搬入だったので、残りは一応在庫管理係になっている眠田さんの事務所に全部送られることになる。“600はちょっと多いよなあ〜”と頭を抱えていた。さて、とりあえず撤収、では二次会でお会いしましょうと挨拶して、今年の夏コミも終わりぬ。タクシー待ちの列の途中で談之助さんの携帯に春風亭春輔さんから電話。彼は今号のと学会同人誌のロゴのデザイナーでもあるので、呼んでいた。K子が“何やってんの、もう帰るとこよッ!”と言い捨てる。しかも何と、春輔さんが電話かけてきたのは幕張から。会場をカン違いしていたのだそうである。いやはや。二次会の場所を教えておく。タクシーの中でK子と反省会のつもりが、K子金のことについてウルトラC的な技の報告。ちょっと仰天。

 帰宅。K子は仕事場に行き、私は雑用片付け。母には遅れたが日曜恒例の電話。恵贈された同人誌群は荷物にまとめて宅配にしたので、読むのは数日後。ただ、新刊の立川流と堪能倶楽部は手提げに入れてきたのでパラパラと読む。談之助の奥さんのマンガの携帯のエピソードが爆笑。いかにも噺家らしいイタズラである。堪能倶楽部はとにかく出来よし。と学会新刊も含め、今年の夏コミ同人誌はとにかく力作揃い。今回のと学会同人誌で最高傑作は眠田さんの筆になるひえださんの似顔だ、と気楽院さ んが言っていたが、私も同意見である。

 6時ちょっとすぎ、ホルモン焼肉幸永に到着。すでに本店の方は長蛇の列。立川流スタッフ、睦月さん、と学会の桐生さん、ひえださんなどと乾杯。後からメンバーがぞろぞろと入ってきて、一杯になりかけたので、われわれは第一陣として三次会の東海魚市場へ。その後ゾクゾクとメンバーつめかける(行方不明を報じられていた奥平くんが現れたときは全員から拍手が巻き起こった)。結局、20人の予約が28人にまでなったが、店がフレキシブルに対応してくれたので助かった。もっとも、料理はうーん……というもの。私はテンション上がっているときの例で、ほとんど固形物は口に入れず。幸永で豚足と、ホルモン数切れ口にしたのみ。開田さんや岡さんと、金沢での怪獣酒場開催の話、元キウイくんに現状を聞いたりして。春輔さんがキウイと何かひそひそ話をしていた。10時過ぎ、そろそろ開田、談之助という年長組が体力の限界でウツラウツラしはじめたので、〆メ。岡田さんがダイエットに成功して90キロを切ったというので、現在と学会で最大の体重の持ち主となった植木不等式さんに記念に(何の記念だ)手締めの音頭をとってもらう。植木さんのノリが何かすさまじかった。吠えるように三本〆メ。睦月さんと相乗りのタクシーで帰宅。ノドが枯れないよう、薬類のんで寝る。

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