裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

木曜日

うちのパパは座頭市

 パンツに何でも隠せるんだぞ(デカパンかい)。朝7時半起床。朝食、トウモロコシとサツマイモ、豆のスープ。二十世紀一ヶ。ワイドショーで山口県の26歳の女性がゲームセンター、スーパーマーケットと車で渡り歩きながら、包丁や金槌で子供を襲ったという事件の報道。“じいさんを殺そうと思ったが子供は抵抗しないのでそっちにした”という自供からみて、どうも本名などが出ることはなさそう。K子がいま男前に連載(?)している昔の事件は、少なくとも動機や理由がはっきりしていて、わかりやすくていいなあ。

 一行知識掲示板に、20日の記事の記述に関する訂正の書き込み。勝間田具治氏が“韓国の女性の顔”と評したのは、ひかるではなくて『ゲッターロボ』のみちるの方だった。これは完全な私の読み間違い。もっとも、みちる〜花月舞(変身前)〜ひかる、と、小松原オリジナルの女性キャラの顔はつながっているのだが。訂正もうひとつ、世界文化社のDさんからの指摘で、神田山陽の新作ネタのタイトルは『台所の片 隅』ではなくって、『レモン・凶暴な便利グッズの純愛』だそうな。長いよ。

 メールなどをずっとチェック。例のゴタゴタしていたイベントの件、やっと前向きに動き始めた感。そうなったらそうなったで、いろいろ対応にドタバタするのだが。『Memo・男の部屋』から、原稿の今月のお題、出る。このテーマだと、と、メモがわりにワープロでいくつか思いつくネタを書き出していたらアラ不思議、30分もかからずに、400字詰め4枚強の原稿が完成してしまった。こういうこともある。

 昼は駅前に出て江戸一の回転寿司で。エンガワ、トロサーモン、煮はま、ヅケ、鴨ロース。煮はまだのヅケだの、最近普通の寿司屋であまり食えないネタが回転寿司にちゃんと存在するのが面白い。銀行に寄り、古書センターでフェチ雑誌系をちょっとチェック。興奮するより感心してしまう。そろそろデパート古書市シーズンだが、裏でちょっとサグリを入れてるモノ以外、今年は金がないので全てパス。

 帰ってビデオ棚を少しひっかき回し、3時、時間割。光文社『FLASH!』ライターMくん。次の企画で、マンガと映画の関係について。1時間半ほど、ウンチクみたいなものを語る。半になったので切り上げ、東武ホテルへ。ロビーでテリー・天野氏と待ち合わせ。上京して、いま東村山氏にドリー氏と住まっているとか。編集のバイトなどもしているらしい。時間割に彼を連れてとって戻したら、まだMくんが貸したビデオなど整理していたので、紹介して名刺交換させる。こうした仕事はテリーさんお手の物だと思う。

 それからしばらく、テリー氏相手に、東京でモノカキで食っていくことに関して、いくつかレクチャー。実は私や岡田斗司夫など40代と、吉田豪や鶴岡など20代に挟まれて、30代で頭角表しているヤツがほとんどいないから、ここは逆に狙い目だよ、と激励。で、少なくともサブカル・オタク系は実証的専一でやること、とこれは忠告(いろいろ使い分ける)。実証に自信や知識のないヤツほど、状況がどうのとか時代がこうのとか言い出す。そういうのはすぐ古びて相手にされなくなる。

 7時に帰宅、男の部屋原稿をも一度ざっと洗って、編集部とK子にメール。イベント関連のメールももう一回チェックして、タクシーで大久保。グリーン食堂で世界文化社Dさん、談之助夫妻、K子、それからK子の故郷の友人だという“のーはん”さんと会食。のーはんさんは山口県宇部でK子の隣家の娘さんだったという。あれだけ田舎を捨て家族を捨て学校時代の友人たちを軽蔑しきっている彼女に、一緒にメシを食おうと思う友人がいたことに驚愕。結婚以来15年、そんな人に初めて会った。

 しかし、彼女をほったらかしてK子はDさんとフィンランド旅行の話で持ちきり。私と談之助で彼女の相手。とはいえ、彼女もわれわれの会話を聞いて“話の展開が早すぎて”と、ついていけない様子。親しい同士の日常会話というのは、意識しない限り案外に多くの符丁・省略・代名詞化・おなじみギャグ・前提のスッ飛ばしなどで成り立っている。と学会の会合などもそうだ。どんなに面白いだろう、と割り込んでみて、周囲が爆笑しているのが何故なのか、さっぱりわからずに愕然として帰る人は多い。一般人を相手にする時には、それモードに切り替えることが必要なのである。談之助さんと『青い珊瑚礁』ばなし。あれに出てきたイギリスの俳優、ホラ、ビートルズの『HELP!』に酋長役で出ていた、ホレ……と二人で名前がつまる。しばらく考えて、話題が別のことに移った自分に“あ、そうだ、レオ・マッカーン!”と思い出した。

 今日は珍しくグリーン食堂、大満員。奥の家族部屋みたいなところに通される。一般人もいるので、犬は遠慮し、豚足、野菜チヂミ、ジャガイモ鍋など。どれもうまくて感動ものだが、ここのおばさんの娘だか姪だかが手伝いに入っていて、この子が実にもってどうも頼りない。最初注文を聞くときあさっての方を向いていたので大丈夫か、と思ったのだが、案の定、注文もしていないキムチ豆腐炒めを持ってくる。頼んでない、と言って返すと、次に石焼きビビンバを持ってくる。二連チャンで間違える子も珍しい。K子がちょっとキレそうになっていた。酒はマッコリ、それからあちらの真露をやってみたがこれが甘い々々。凶暴なまでに甘い。日本人向けのグリーン焼酎というのに替える。談之助さんに言わせると、日本人が甘い酒はダメなので甘くないグリーン焼酎を作って売り出したら、韓国でもこっちの方が人気になってしまい、真露の会社は倒産してしまったとか。冷麺まですすって11時、解散。

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