裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

火曜日

坂東英二・ファッション

「借金でがんじがらめの時もあったで、そら」

※原稿書き

朝10時起床。
あと一時間早く起きたいのだが、血圧降下剤の
作用で致し方なし。
ぼーっとしながら郵便受けに郵便を見にいったら、
アンケートやゲラや新刊雑誌や、とにかくいろいろ
仕事関係のものがぎっしりで目がいっぺんに覚める。

牛乳飲んで朝食代わり。
某誌アンケート、さて選ぶとなると、最近のもので
見ておかねばならぬもので見ていないものもある。
DVDを集めねばならぬか。

12時、昼食如例。
野菜サラダ小ボール一杯、ご飯一膳、ホタテソテータルタルソース。
つけあわせにエリンギ、サヤエンドウ、コーンの炒めたもの。
キウリのツケモノ、果物(ミカン1ヶ、イチゴ3粒)。

ハイチに千羽鶴を送ろうという一方的な善意の呼びかけ運動が
ネットで糾弾の大嵐にみまわれているようだ。
確かにあの国の人々は迷信深いから、いきなり鶴(というのも
あれ、共通認識がないとわからないよね)の形に折った紙の
山が送られてきたら、笑顔になるどころか、何かの呪いではないか、
と恐れたりする可能性があるだろう。なにしろ近代世界で唯一、
魔術師に支配されていた国家である。
http://blog.goo.ne.jp/xindai/e/d99590715ba3a3cbb38b4e31124038c9

一方で千羽鶴もまた、呪物(まじない)の一種である。
千羽鶴の起源は案外新しく、昭和30年に原爆症で亡くなった
広島の佐々木禎子さんのエピソードからだそうだ
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/yougokaisetuheiwa.htm
が、千羽折れば願いがかなう、というのは戦時中の千人針など
からの連想によるものだろう。何にせよ、異文化の人たちに
容易に理解できるものではない。
この主催者に限らず、平和とか友愛とかと説く人に視野の狭い
人が多いのは困ったことである。

もっとも、この運動の主催者を叩くコメントの中に、
「ハイチのように貧しくて不安定な国の、飢えている国民に
文化的な援助など理解できる余裕はない」
という意味の蔑視発言をしていた人がいた。
実際はテント村でコンサートが開かれて、被災者たちが笑顔で
踊ったりしている。確かに生活物資の充足が喫緊の問題では
あるが、パンのみで人間は生きるにあらず、というのも
事実ではある。文化がなくては人間は生きていけない。
呪物もまた立派な、人間の生活に必須の文化なのである。

原稿書きカリカリ。
テレビでBGM代わりに参院予算審議委員会の模様を
流していたが、面白すぎてすぐ消す。
見入ってしまって仕事にならない。

仕事、6時くらいで中断。
仕事とはまったく関係ないが、ある思いつきでやった
アイデアが的を射て、自分ながら“面白過ぎ”とつぶやく。

買い物に出て、夜9時過ぎ夕食。
ネギ薄切りとニンニク微塵をガラス製の鍋に敷き詰め、ごま油を
たらり。その上に豚バラの薄切りを敷いて、日本酒をほんの少々。
蓋をして、蒸し煮にする。ネギから出た水分が豚肉にからんで
甘味が出て、ポン酢で食べると美味。
それとたぬき豆腐(揚げ玉と海苔を豆腐に載せ、だしをかける)
でマッコリ、それにホッピー。

DVDでメル・ブルックス『プロデューサーズ』。
ブルックス自身が監督したオリジナルバージョン。
9月に芝居を、それもナチスを描いた芝居をやろうとしている
身にとって、これはどうしても見ておかないとならない作品。
ゼロ・モステルとジーン・ワイルダーとメル・ブルックス、
三人のユダヤ人がヒットラーを主役にした芝居を作る連中(最低
の芝居として、だが)の映画を作る、というこのシャレのきつさ。
メイキングでのブルックスの証言によると、やはりユダヤ人協会
が怒り出したそうである。

正直言って脚本はさすがであるが、演出はそれほどうまくない。
ブルックスの演出は『ヤング・フランケンシュタイン』一本が
奇跡的な出来栄えで、あとはむしろ不器用である。
監督にもう少しこういうコメディのベテランが起用されて
いれば、ワイルダーの神経症など、もっともっと笑えたと思う。
とはいえ、モステル、ワイルダー、ケネス・マースなど演技陣の
怪演は見物。おっぱいの大きい(当然おつむは弱い)スウェーデン人の
秘書役、リー・メレディスは、経歴を調べたらこの後、
ニール・サイモンの『サンシャイン・ボーイズ』(これも喜劇の
舞台の話だ)に、“おっぱいの大きい看護婦役の女優”の役で
出ていた。以前、テアトル・エコーの『サンシャイン・ボーイズ』
の公演のときにこの役を演じた吉川亜紀子(バスト1メートル)
の胸のインパクトに“どんな名演もあの胸にはかなわぬ”と
書いたが、確かにこの作品でもメレディスの出演シーンは
彼女しか印象に残らぬ。

ゼロ・モステルを私が初めて見たのはテレビでやっていた
『ホット・ロック』で、その後大塚の名画座で『ローマで起った
奇妙な出来事』を見た。日本ではあまり評価されていないが、
アメリカではブロードウェイの『屋根の上のバイオリン弾き』の
主役として国民的俳優だった。日本で言えば森繁久彌だが、
そう言えば老女たちを色仕掛けでだまして芝居の公演費用を
巻き上げようとするモステルの役柄は森繁っぽい。60年代東宝映画
でこの作品が翻案されていたら(さしずめ、東条英機を主演にした
ミュージカル映画を作ろう、になるか)どうなるか、想像すると
楽しい。ワイルダーの役は当然高島忠夫、ケネス・マースに
植木等、と行きたいが当時の売れっ子ぶりで難しいとなれば
佐藤充、オカマの演出家にはこれも当然桜井センリなんかは
どうだろう。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa