裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

土曜日

紺屋貴雄

「中野貴雄監督、あっしゃ監督の映画が見たくて見たくて、必死で
働いて金を貯め……」(職人・久蔵談)

※立川談慶独演会

朝5時目が覚める。
きのうおとといと同じく寒いが、足が暖かくて、毛布から出していた。
ニンニクスープの効果あらたか。

フトンの中で小沢一郎関係のニュースみたりなんだり。
二度寝。起きたのが11時。
その時見た夢。
知り合いの女優を使って映画を撮っている。
この映画のプロデューサーが露骨な陰謀論者で、
「モンゴル人が日本を滅ぼそうとしている」
と常に言っており、
「あの女優たちはモンゴル人じゃないだろうな」
と言う。違いますよ、と言うと
「いや、わからん。奴らは元寇の役のときから日本に入り込んで
日本人の中に混じっているからな」
と言う。で、そう言っている本人の姿形が、弁髪にドジョウひげで
あり、私はそれを見ながら
「自分の方にモンゴル人の血が混じっていると気がついていないのか」
と、やや呆れる。

入浴、日記つけ。体調はまず、上々。
雑用多々。メール連絡など。
12時、昼食如例。中華風ドレッシングで野菜サラダ(ダイエットの
ため)、納豆、ニシンと昆布の煮染、白菜漬物。
テレビのニュースショーに出てきている民主党議員、さすがに
青菜に塩といった風情。とはいえ、コメンテーターの
法律専門家たちは、これで本丸の小沢氏逮捕まではいけない、と
ほぼ各局、意見が一致。
検察がこれからどれだけのものを出して来られるか。

ネットの書き込みで、“マスゴミがやっているのは情報操作。
信用してはいけない”と、民主支持派、アンチ民主の双方ともに
主張しているのに苦笑。検察も、松岡農水省など自民の時も
国策捜査、民主時代になっても国策捜査と野次られて気の毒である。
別な見方をすれば、双方からそのように言われるということは
要するに公正中立を保っているということになるが?

自室に戻り仕事。
5時、家を出て新宿へ。京王でまた鯨カツ弁当、それからおみやげ
ちょっと買って、丸ノ内線で赤坂見附、ちょいと歩いて永田町、
国立演芸場。お誘いいただいた立川談慶独演会“ダンケシェーンの会”。
今回は落語早慶戦ということで、早稲田出身の立川談笑がゲスト。
国立演芸場、ほぼ満席、なかなか大したもの。
受付で談慶のおかみさんに挨拶される。
おみやげを手渡す。

開口一番はこはる、『金明竹』。
当然ながらオーソドックスな大阪弁バージョン。
彼女は談笑の東北弁バージョンを聞いているのだろうか。
それから談慶が『幽女買い』。談志が復活させた話だが、
吉原の細かいしきたりや名称の基礎知識がない世代にはちょっと
つらい話。さすがにオチは談慶、少し変えていた。
それから談笑。
「自分の会でないといいですね、責任持たなくていいから」
とリラックスして、政治や世情のマクラを。
で、『薄型テレビ算』。さくらやをネタに入れるかと思ったが
それはやっていなかった。

中入りで楽屋挨拶。
談慶さんがさっきマクラで19年前、この国立演芸場の落語会で
談志の『らくだ』を聞いて痺れて、ワコールを退職して落語の道へ……
という話をしていたが、その時分の国立での談志の会なら私はほぼ
欠かさずに通っていたから、私も同じ噺を聞いている確率大。
あの頃の談志は確かにある意味円熟期であった。
芸がクサくなった時期でもあったけど。
「そう言えば、今度立川ワコールってのが入った」
と、ブラックの会か何かで話題になったときから私は聞いている
んだなあ、と改めてまた、自分の年齢を思う。
キウイが入ったときから見ているんだものなあ。

後半は大ネタで『紺屋高尾』。
談慶さんは力まずに、泣かせどころも極力軽くやり、
むしろ朗読のような構成で聞かせる部分も作っていた。
いい演出だと思う。

終って楽屋に挨拶に行こうとしたら、ポカスカジャンの
大久保ノブオさんに偶然出会う。案内する形で楽屋へ。
「楽屋口は知ってるけど、客席から入ったことがない」
と。私も最初に知ったのが楽屋口の方で、今でも入り口から
入ると落ち着かない。

あと、大晦日に続いて風間やんわりさんにも会う。
前座名人さんにも(この人とはまあ、こういう会ならどこでも
会うような気が)。たいてい顔ぶれは決まるもの。

打ち上げに誘われて、風間さんとつきあうことに。
例の『どど』。金髪のおじさんがシガリロをふかしていると
思ったらあの『アナーキー』の仲野茂さんだった。
……うーん、談慶の客層というのは(私含め)幅広いというか
何というか。というか、アナーキーのボーカルが落語好きというのも
意外なるかな。

話題いろいろ出て、退屈せず。
談慶さん、地方公演のときなど私の名前を出して効果あったと
御礼言われる。お役に立つならという感じ。
11時半ころ、店のカンバンでお開き。
さすがに寒い。
地下鉄乗るのもおっくうになったのでタクシーで帰宅。
店でほとんど食べなかったので、鯨カツ弁当とビールで。

あの『突撃! ヒューマン!!』のDVDが発売される
と聞いて驚いたが、地方でやっていたショーのビデオだとの
こと。なあんだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100114-00000011-ykf-ent
再放送は何度かしてた記憶があるから、まだ番組のビデオも
地方局などを探せば残っていると思うのだが……。

会場の子供たちをとにかくアジって興奮させる会場でのナレーションが
凄くて
「君たちの! 君たちの応援が足りないからヒューマンがピンチじゃ
ないか! さあ、もっとヒューマンサインを送るんだ! 回せ、回せ、
ヒューマンリングを回すンだッ、回せエッ!!!」
とか絶叫する、その見も蓋もなさに毎回爆笑しながら見ていたものだ。

フラッシャー処刑装置(ただの籠。これを伏せた中に人を入れ、ナイフで
突き刺す)のチャチさとか、途中でピンポンパン体操みたいにみんなで
やるヒューマン体操とかのショボさは失笑だった。
ブランカーいう飛行怪獣が登場する回で、新聞の予告欄では“会場狭しと
飛び回るブランカーとヒューマンの対決が見物”と書いてあった
のが、実際は丸見えのロープにぬいぐるみがぶら下げられて、
ただブラブラ揺れるだけで、
「なるほど、ブランカーという名前に偽りはない」
と私は変な感心をしたが、そのとき、例のナレーションが
「おおッ! 見ろ、飛んだ、飛んだぞ! 空を飛んだぞ!
ブランカーが、空を飛んだぞッ!」
とアジりまくっていた。あれ、会場の子供の目には本当に怪獣が
そこらを縦横に飛び回っていたように映っていたのかもしれぬ。

怪獣ブーム自体が一種の疑似イベントと考えれば、この作品はそれを
最も端的に表現していた作品だったかもしれないなあ。

*写真は打ち上げ風景

Copyright 2006 Shunichi Karasawa