裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

日曜日

怒りのブードゥー

受けは本日の日記内容で。

※T社原稿 食事会

朝9時起床。
入浴時体重を見ると順調に(わずかずつだが)減少継続。
体調の回復がこれとダイレクトにつながっているのを実感。

電話一本、タイムリミット迫りさてどうしようか、思案に詰まっていた件、
延期という報告。とりあえず喫緊の問題は回避で肩の荷を下ろす。
もう一度練り直して再起動させる算段を立てる。
とりあえず、各所に連絡。

原稿、T社。カリカリカリという感じ。
ネタ決定に苦労した原稿というのは無意識に予定字数を多く
イメージしてしまうので、書き出してみるとこっちが思っているより
早めに埋まってしまう。そうなると、後から削るのに苦労するので
用心しつつ書き進める。

昼食、如例。
野菜サラダ、オムライス、パンプキンスープ。
スープはいつぞやお歳暮かお中元に貰ったホテルニューオータニの
カンヅメに手を加えたもの。

訃報、止まらず。
SF作家・翻訳家 柴野拓美(ペンネーム・小隅黎)16日
死去・83歳。
山本弘氏によってロング・インタビュー『僕らを育てたSFの
すごい人』が出たのがせめてもの救い。
後書き的解説を書かせていただいたのだが、編集をした高嶋氏に
よると柴野さん、これを読んでとても喜んで下さっていたとのこと。

あえて功績については繰り返さない。上記のインタビュー本を
手にとっていただきたいが
http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=3380
その後書きの最後の文をいま、ここでもう一度繰り返させていただく。

「作品を作る人は大勢いる。どの時代どの時代にも、数え切れない
才能が輩出するだろう。だが、それらの才能が、存分に活動できる
“場”を作る才能の持ち主、これは滅多に出てくるものではない。
日本SF界はその黎明期に柴野拓美という、まれにみる場作りの才能
の人を得た。その、作家活動としてのペンネーム、“小隅黎“の”黎”の
字は、今考えてみて、まことに氏にふさわしい、一種の予言めいた
名前であったのだ」

柴野氏の訳したハヤカワ文庫のアンドレ・ノートン『大宇宙の墓場』は、
買ってしばらく放っておいたのだが、たまたま読んだ某アニメの
ノベライズの、あまりの文章の拙劣さに嫌気がさし、急いでこれを
読んで、質の高いSFの文章というのはこれだ、と安堵した記憶がある。
翻訳ばかりでない、創作の方の文章も、理系の人らしい論理的なところと
平明さがあり、地味だが文章力は他のプロパーの作家より上だと秘かに
感心していた。

最初にお会いしたのも、最後にお会いしたのも、SF大会の会場で
だった。柴野さんにふさわしい場所であったと信ずる。
深く、深く黙祷。

原稿、5時半アゲ。
ハイチの地震の報道に心痛む。
しかしハイチと言えばブードゥー教の本家というイメージがある。
ニュースを見るとやはり、今回の地震の被害者を集団墓地に
儀式もせず埋葬するのはブードゥーの教義に反する、とブードゥーの
指導者が大統領に苦情を申し立てた、とある。
被害者の集団埋葬は伝染病などの第二次被害が広まらないための
必要な措置なのだが、宗教上の理由でそれがなかなか進まないらしい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2010011702000072.html
ハイチときてブードゥーとくれば連想はゾンビ、となるが
不謹慎につきその連想は割愛。
ウィキペディアによれば、ハリウッド映画でゾンビものが作られた
のは、20世紀初頭にハイチを占領したアメリカがブードゥーの
イメージダウンをはかったため、とあるが本当か?
(19日のニュースだが、中国の中央日報によるとアメリカの
キリスト教保守派の大物パット・ロバートソン牧師が今回の地震は
ブードゥーを信じたことによる神の罰だ、と発言したそうである)

6時半、酒類を仕入れて母の室で客を待つ。
NCの葬儀で延期になっていた正月食事会の続き。
今日のお客は渡辺シヴヲさん、鳥越夕幾子ちゃん、菊田貴公ちゃん。
時期はずれているがまあ、正月の流れということで
数の子、黒豆、大根ナマス、それに煮物(生麩入り)のお節もどきから
始まって、恒例ロールキャベツ、塩豚焼き、頬肉牛丼などなど。

シヴさんのシニカルトーク、最近磨きがかかってきて面白し。
夕幾子ちゃんは昨日ディズニーランドに行ってきたそうで、
オミヤゲの蛍光ペン(体に書きつけても見えないが、ペンライトを
当てると浮かび上がる)を、やたらみんなの腕に描きこもうとする。
菊ちゃんは思った通り母と話がやたら合い、盛り上がっていた。
私はおとなしめに飲み続け。

なんやかんやで話題続き、NCの映像をみよう、と河崎実のトンデモ
ホラーのDVDを持ってきてかけてみたり。
11時半にシヴ、夕幾子組が帰ったあとも菊と少し盃を傾けつつ
いろんな話。12時半ころ、菊ちゃんが帰るときに
「いただきだちで失礼ですが」
と言ったのに母がいたく感心。いい言葉を知っているわねえ、と。
ここらへん、さすが詩吟家元の娘。

*デザートを前にしたシヴ、夕幾コンビ。本当に凸凹コンビで、
漫才師にしたいくらいだった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa