裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

水曜日

うなぎは寂しいと死んじゃうんだよ

蓋をあけるとうなぎがぽつんと寂しそうにしてる鰻重ってあるよね。

※企画書書き

朝9時半、眠いよーと言いながら起床。
新聞取りにいくが休刊日であった。
フルーツトマト、バナナで朝食。

蕭々たる雨。
選って歴史的皆既日蝕という日にこれ。
中には暴風雨という場所もあるやに聞く。
まさに天文ファンには涙雨であろう。

D社Mさんから、D社を退社してS社に移りますとの
メール。急だったのに驚く。そうか、そう言えばS社との打ち合わせ
のときMさんの名前がFさんの口から唐突に出たのはそれか。
私はそれを知らず、Mさんに“Fさん退社するそうですね”などと
雑談で声をひそめて話したことがある。
もしそのときすでにMさんに声がかかっていたなら
ずいぶん間抜けだったわけだ。

体調、気圧のせいか思わしくなく、ぼんやり。
この二日間、連続して、何の脈絡もなく、小・中学の同級生の
MMのことを思いだしている。昨日と今日の連想も全く
関連がない。ひょい、と思いだすのである。
何でなのかな、とちょっと不思議。

昼は納豆と山芋の酢の物、茄子と肉の味噌炒め。
ちょっとおかずが豪華すぎかなと思ったのでおかわりせずに。
講談社原題新書『日本再生の戦略』読む。
朝日の書評委員でご一緒していた天児慧さんの本。
豪快な天児さんの口調をイメージしながら読む。

昼ごろ、金田伊功氏昨日死去というニュースが飛び込んでくる。
57歳、心筋梗塞とか。
金田ライトと言われた光の魔術師が皆既日蝕のコロナに送られて逝く。
何か神韻を感じる。

http://www.youtube.com/watch?v=nG5DaDCeEN8

私にとり日本のアニメと言えばこの独特な“形状”をした光群で、
だからつまり日本のアニメと言えば金田伊功氏なわけで、
その金田氏のいない日本のアニメはもう日本のアニメじゃないわけで
(ここらへんは氏と同世代で、80年代の金田氏のブレイクを
リアルタイムで体験していないと理解できない物言いだろうが)。
まさに閃光みたいにアニメブームを起し、その中を光速で駆け抜け、
彗星のように輝きを残し去っていった、そんな感じ。
追悼の言葉さえまだしばらくは浮かばぬ。

……とはいえ、彼の死の原因は絶対にアニメブームの時の働き過ぎ
だろう。57歳の心筋梗塞は、若い頃体に無理をしすぎたツケだと思う。
同年代のアニメーター諸氏、今すぐ健康診断を!

午後から雨、あがる。
家に籠っているのも何なので、バスで新宿まで。
京王百貨店で夏用の帽子(サファリ型)を買う。
食料品売り場で買い物して帰宅。

メールやりとりの中でふと浮かんだ企画1本、あり。
ちょっと形にしてみようと資料本持ちだして、カリカリやっていたら
数時間で完成した。
なかなかいい企画だと自己満足。
さて、どこに持ち込もう。

10時、夜食。
スンドゥブチゲ、アミの塩辛で味付けして、コリアンダーも
入れて。ビデオで『12人の怒れる男』。
またか、と思われるだろうがこれは1997年にテレビ用に
リメイクしたもの。区別するためのタイトルは
『12人の怒れる男・評決の行方』。

テレビムービーとは言え、キャストは映画版でH・フォンダが
演じた8番をジャック・レモン、リー・J・コッブが演じた3番
をジョージ・C・スコット、ジョセフ・スウィニーが演じた老人の
9番をヒューム・クローニン、ジョージ・ボスコベックが
演じた移民の11番をエドワード・ジェームス・オルモスが演じると
いう豪華版。しかも監督が『エクソシスト』のW・フリードキン。
ジョージ・C・スコットは『エクソシスト3』で、第一作の『エクソシスト』
でコッブが演じたキンダーマン警部を継いで演じているが、
今回は第一作の監督のもと、コッブが演じた役を継いでいるのも
面白い。

フリードキンは驚くほど原作に忠実に撮っているが、時代は現代に
している。精神分析の話が出てくるのは現代風のアレンジかと
思ったら、原作にあって映画版でカットしたところだとか。
キャストのうち4人が黒人になっているが、やはり女性がいない
(原題が原題なので仕方ない)のが不自然。代わりに冒頭に出てくる
裁判長が女性になっている。

エド・ベグリーがオリジナルで演じた差別意識丸出しの男を
リメイクでは黒人でしかもムスリムという設定にしていたのは驚いた。
エドワード・ジェームズ・オルモスはこの演技で何かの賞をとった
ということだったが、あまり感心せず。あの顔で東欧系と称するのは
ちょっと無理があるのでは。あと、何かモソモソ食べているという
演技をしていたが上品な育ちという設定の11番には合わない。
あと、オリジナルで気弱な小男という設定だった2番を大柄
(1メートル95センチ)のオジー・デイビスが演じているが、
これはミスキャスト。2番の最大の論議への貢献は、容疑者の少年が
15センチ以上背の高い父親を刺したことになっているにも関わらず、
ナイフの傷跡が上から下に向かってついていたことに気付いたこと
だが、それに気付いたのは、自分が陪審員中一番の小柄だからで
あったはずだろう。

……私のリメイク嫌いをさっぴけばかなりな高得点ドラマで
あることはもちろん(もともと『12人の……』自体が最初は
テレビドラマで、映画版はそのリメイクなのだ)だが、
やはり点が辛くなってしまうのは、映画のフォンダやコッブに
比べ、このレモンやスコットは老け過ぎているからではないか。
みんな、9番の老人役が出来そうであった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa