2日
木曜日
フーミン症
夫の会社が倒産した細川ふみえの今後を考えると夜も眠れない。
※田の中勇氏インタビュー
朝、9時半起床。
息苦しさも何もなし。一ヶ月前に比べれば天国である。
しかし、仕事は苦しがりながらの方がやっていたような。
最近はつい、身体にかこつけて一日延ばしにしてしまう。
朝食、如例。外はあいにくの雨。
入浴、雑用すませ、ストレッチ、まだ体調十全でないか、
息が切れる。
札幌のでんたるさんからの飛行機チケット、無事届いて安堵。
昼は母の室で12時。納豆、エノキダケの味噌汁、
小茄子の漬物等、ベジタリアン式。
ニュースでカール・マルデン死去の報。
ハリウッド・スターには珍しく一人の奥さんと67年間
連れ添ったよき夫であったとか、映画科学芸術アカデミー
(アカデミー賞の母体)の会長を務めたとかで良識人の素顔が
知られており、映画の代表作も『パットン大戦車団』(1970)
であったりして、ここでも狂気の天才・パットンに対して
良識派の秀才(凡人)・ブラッドレー将軍を演じて好演だったり
するのだが、やはり俳優の本領としてはアクの強い悪役が持ち役
だったように思う。あの座ったダンゴ鼻がただものではない。
ポー原作の『謎のモルグ街』(1954)ではマッドサイエン
ティストを演じていたし、私にとって一番印象が強かったのは、
“007“シリーズのプロデューサーの片割れ(エンタテイン
メント派のアルバート・ブロッコリに対してシリアス指向)
であるハリー・サルツマンが単独プロデュースした、
『10億ドルの頭脳』(ケン・ラッセル監督、1967)の、
秘密情報部を引退したハリー・パーマー(マイケル・ケイン)に
再び仕事を依頼してくる謎の人物、レオ・ニュービゲン。
裏で工作員の給料を架空請求したりしている小悪党だが妙に
ふてぶてしく、指定した対面場所が(潜伏先がフィンランド
だけあって)サウナだったりしてホモっぽいところもあり、
非常に記憶に残る役だった。
http://www.youtube.com/watch?v=3sF_xR9VOgQ
↑『10億ドルの頭脳』
こういう、噛めば噛むほど味のある役者がハリウッドにも次第に
少なくなっていくなあ。年齢に不足はない(97歳)といえ、
寂しい。
黙祷。
1時家を出て、神宮前まで。Tくんと待ち合わせ、
青二プロダクション事務所で、田の中勇さんインタビュー。
イメージ通りの飄々とした方で、いろいろ伺うお話も面白い。
声優になる気は全くなかった、というか自覚すら20年前に
やっと芽生えた(現在76歳でいらっしゃるから56歳のとき!)
というのが驚き。本当はシャンソン歌手になりたかった、とのこと。
こちらから是非、伺いたかった飯塚昭三さんの伊右衛門、
田の中さんのお岩の『四谷怪談』に関しては、楽しい思い出
として明確に記憶されており(31歳のときのこととか)、
伺えて実に嬉しかった。
まさに噛めば噛むほど味のある俳優さんである。
いつまでもお元気で、と願わずにはいられない。
他にもいろいろと収穫あり。
ホッとして青二プロを辞す。
帰宅して、少しボーッとして時間を過ごす。
明日の準備などもしないといけないのだが。
メールで、5日の講演関係のことなど先方とやりとり。
買い物に出かけ、8時ころから夕食。
豆油肉(タウユウバア)を作る。鍋に水と酒を張り、豚のスペアリブ、
長ねぎ二本、干しシイタケそのまま数片、ニンニクひとかけ、
それと醤油適宜入れ、煮込む。肉から骨が簡単に外れるくらい
煮込んだら(60分くらい)、ウズラのゆで卵を好きなだけ入れて
さらに30分くらい煮込む。
実は大学時代から作っているこの料理、いつも旨く食べてはいるのだが
味付けがどうも濃過ぎたりして、満足できる出来になかなかならなかった。
檀流クッキングでも『食は広州にあり』でも、ご飯に乗せて食べる
ことを念頭に醤油の量とかを書いているので、私のように酒の菜に
するためには思いきり薄味にしないといけないのであった。
本日はそれを念頭においていたのでバッチリ。
ビデオでマイケル・アプテッド『アガサ/愛の失踪事件』(1979)
再見。確か名画座でなく、リアルタイムで観たはず。
『オリエント急行殺人事件』のバネッサ・レッドグレイブが
アガサ・クリスティを演じている、というのが足を映画館に運んだ
理由であった。『オリエント〜』のときは知的かつ愛に奔放な女性を
演じて、あの映画の女優陣の中で一番魅力的と感じたものだが
5年後の本作でも美しさと魅力は変わらず。従って、アメリカ人
新聞記者のダスティン・ホフマンが彼女に惚れるのは理解できても、
亭主のティモシー・ダルトンが彼女を袖にして秘書の小娘と再婚する
というのはどうもイメージがわかず。難しいところだ。
監督のアプテッド(後に『愛は霧の中に』『007/ワールド・イズ・
ノット・イナフ』などを撮る)は30代の初監督作品にもかかわらず
嬉しくなるほどのレトロ調で映画を完璧に統一していて、それだけに
ダスティン・ホフマンが唯一、レトロぽくなく違和感あり。
これは初見のときにも感じたことだった。
観客をミスリーディングさせるトリックも初見のとき感心したし、
地味だがミステリ映画の佳作といっていい一本だろう。
もっと『オリエント急行〜』の出演陣が出ていたような記憶が
あったがナシ。その代わり、ブラッケンベリー卿役でアラン・バデル、
ケンウォード警部役でティモシー・ウェストと、『ジャッカルの日』
の出演者が出ていた(バデルは内務大臣役、ウェストは警視総監役)。
以下、トリビア。
・映画の中でレッドグレイブを捨てるティモシー・ダルトンだが、
実生活ではこの2人は恋人同士だった時期がある。
・監督のアプテッドは『ワールド・イズ・ノット・イナフ(不十分)』
の後に『イナフ』(十分)という映画を撮っている。
※写真は田の中さんと。